マナスル登頂報告 その9 カトマンズへのキャラバン(1)



7)カトマンズへのキャラバン

登頂後も、ラルケ・コーラに沿って登り、ラルキャ・ラ(峠)を越えてドゥードゥ・コーラに沿って下り、アンナプルナ街道との合流点のダラパニからマルシャンディの河に沿って下って、マナスル山郡を1周して来ましたので、長い旅となりました。ラルキャ・ラでは予想外の猛吹雪で苦労しました。


▲【気持ちの良い広い河原を行く】

【5月25日】サマ → サムドゥ → ゲストハウス(テント泊)

 いよいよ、今日から帰りのキャラバンの始まりです。ラルケ・コーラに沿って5135mのラルキャ・ラ(峠)を越えるのですが、今日は「ゲストハウス」というすばらしい名前の付いた所まで行って、テント泊する予定です。
 8時にサマを出発します。広くて気持ちの良い河原に沿って進みます。10時に、支流と合流する地点で木の橋をを渡り、川の合流の真ん中の尾根を登り始めます。そして早くも10:20にサムドゥの村に着きます。この先は峠を越えた先のビムタンまで宿泊施設はありませんので、翌日の行程を考えると、ここで泊まる訳にはいきません。
  しかし、ここのレストラン・ロッジの「ヤクホテル」で12時過ぎまで、のんびりお茶を飲んで過ごしました。サムドゥを出てからは左岸をひたすら進み、次第に高度を上げていきます。進むにつれてガスが上がってきます。相変わらず午後は天気が崩れます。ゲストハウスに近付く頃には雪が降り始めます。

▲【中央の尾根を登ってサムドゥへ】             ▲【サムドゥから左岸を行く】          
 ゲストハウスが見えてがっかりしました。15時前にゲストハウスに到着しましたが、単なる石室です。中は天井から漏った水で土がジュクジュクで雨よけにもなりません。石積みの壁はススで真っ黒で風もスースー通りますので、中でテントを張る事にしました。
 テントは4〜5人用のエスパース1張りしか持って来ていないので、隊員だけが入ります。シェルパ達のテントは無く土の上にシートを敷いて寝ます。標高は4900mで、マナスルBC程あるので結構寒いのです。持ってきたインナーダウンを着ます。一晩雪が降り続きました。

▲【これがゲストハウスか?!】                ▲【ゲストハウス内部】          

▲【朝のゲストハウス】

【5月26日】ゲストハウス → 避難小屋 → ラルキャ・ラ → ビムタン(ロッジ泊)

 朝、小屋の外は一面の銀世界になっており、小雪が続いています。6時過ぎに小雪の中でゲストハウスを出発します。
 最初は谷道を進みます。行けども行けども目先が変わらない同じような谷道を通ります。次第に風も強くなって来ます。それまで、折りたたみ傘で登りましたが、尾根筋に出ると途端に、時々耐風姿勢を取らなければならない程の猛吹雪になります。
 私は、腰下はパンツ1枚なので吹雪で濡れた膝を中心に凍えそうになります。雨具を持って来ていなかったので、吹雪の中必死でダウンのインナー上下にパタゴニアのフーディニ・フルジップを着てしのぎました。暫く進むと10時前に予定していなかったゲストハウスに似た小屋が現れました。ゲストハウスより新しくてきれいでした。ここで態勢を立て直すために少し休憩します。
 この先、少しづつ風が弱まり、登り易くなったので黙々と登ります。広い峠状の所に着いても、ラルキャ・ラの目印は現れません。何度もアップダウンを繰り返して、タルチョがたなびき、付近に壊れかけた石室のあるラルキャ・ラに12時半頃にやっと着きました。

▲【谷筋を登り続ける】                ▲【ラルキャ・ラ】          
 この先の下りも積雪量は40〜50cm程あり、稜線なら良いのですがトラバースでは雪が崩れないかヒヤヒヤの所も出て来ます。ポンカー湖が見え始めると、ビムタンに近付いたのだろうと期待し始めます。高度が下がるにつれて積雪が少なくなり、湖付近に降りる頃ようやく雪ともオサラバできて、思ったより厳しい峠越えもようやく終わったなとホッとしました。

▲【ポンカー湖が見える】                ▲【ビムタンが遠くに見える】          

 後は延々の下りを我慢して17時前にビムタンに着きました。もうこれから先は、厳しい所が無いのでホッとしました。ビムタンでは気さくな住民が出迎えてくれました。宿泊場所は母屋の裏にあるロッジでしたが、相変わらず石積みで布で風をさえぎる工夫はしていますが殆ど効果なく、風がスースーします。インナーダウンジャケット上下は離せません。
 このビムタン(3710m)に着いて、暫くするとコックのパダムとビーバース君が、目が痛いと訴え始めます。どうやら雪目にやられたようです。BCの高度まで多くの経験を持つパダムでさえ、今日の吹雪の中でサングラスを外すミスを犯したようです。2人とも涙がボロボロで目が真っ赤に充血しています。私の持っている点眼目薬とシップと眼帯を提供しました。彼らがダウンしたら我々の食事が危うくなります。


▲【ビムタンの人々のお祝いを受ける】

【5月27日】ビムタン → スルキ→ ティリチェ(ロッジ泊)

 出発前に、ビムタンの人々はロキシーを振舞い、カタ(スカーフ)を首にかけてくれ、生花のレイを作って我々にマナスル登頂のお祝いをしてくれました。それに対して感謝の気持ちを表すためにチップを置きます。この村はラルキャ・ラを通過する人に対して歓迎の意を表すのが習慣のようですが、生花のレイまでして頂けたのは登頂できたからのようです。
 8時半にビムタンを出発してドゥードゥ・コーラ右岸沿いに下ります。氷河が融けた水はミルクのように白い激流になって流れています。エンドモレ     
ーンが対岸に見える所も通過します。アップダウンを繰り返しながら、高度が下がるにつれて草地帯から潅木帯に入って行きます。
 途中1軒家のヤクカルカに11時に着き、ここでゆっくりお茶休憩を取ります。ドゥードゥ・コーラ右岸は土砂崩壊が激しい所もあります。13時には一軒家のスルキに着き、昼食を取ります。ここではダルバートしかできません。食事が準備できるのに1時間もかかりました。ゆっくりダルバートを食べて14時半に出発します。
 ティリチェ(2260m)に17時過ぎに着きます。ホテル「ラルケ・パス」に泊まります。壁も塗り込まれていて、風は通りません。ウィスキー・ラム酒・ビールなどが手に入ります。衛星テレビが見られます。ようやく町に着いた気分です。

▲【ドゥードゥ・コーラ右岸を行く】               ▲【パラボラがあるティリチェの町】         


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