涸沢岳西尾根  (報告/ちびサンボ)


■日 程 : 2012年12月27日(木)夜から30日(日)

■山 域 : 涸沢岳

■参加者 :

ちびサンボ

K部
■行動日程:

27日(木):大阪発16時の高速バスへ乗車し、22時半頃松本でK部さんと合流→新穂高温泉ロープウェイ駐車場で車中泊

28日(金)曇り時々雪:6時起床→新穂高温泉駐車場発(7:50)→白出沢出合(10:35)→2400m幕営地着(15:50)→夜間雷の後、風雪で1mほどの雪が積もる

29日(土)快晴:4時起床→5:45出発→稜線の上に抜ける(7:00)→白出沢のコル(10:10)→休憩後、10:40出発→涸沢岳頂上経由し2400mの幕営地着(14:00)→夜間暴風後雪

30日(日)雪後雨:5時起床、7時出発→新穂高温泉駐車場着(10:45)→帰神




今回の山行は行く前から悪天の予報だった事と、厳冬期のアルプスは初めてだからと周囲に心配を掛けていた。そのせいか、何となく奥穂高岳には登れないだろうなぁ〜と思いながら出発した。

28日5時に起床しようと言っていたのに目覚ましを掛け忘れ6時に起床した。本日はあまり天気が良くないし、幕営のみなので周囲もゆっくりしている。駐車場から林道に入ると延々と緩やかな道が続く。私は夏もこのルートを歩いた事が無いので、K部さんに涸沢岳への分岐を教えてもらう。ここで高度計は約1600mを差していた。ここから2400m付近の樹林帯幕営地までひたすら登る事になる。トレースはあるが、崩れやすくて歩きにくかった。トップを交代しながら、高所登山で体を慣らすかのようにゆっくり登った。最初はストックで登っていたが、段差のある所は登れなくてピッケルに換えた。2200m付近から岩が出てきて傾斜もきつくなった。クライムダウンして安定した所でアイゼンを着けて登る事にした。2400mの開けた所にはテントが二張りあった。風が避けられる所にテントを張って明日に備える。就寝後20時頃に雷が鳴る。これでは明日は無理だなぁ〜と半分諦めモードで眠る。夜中、風雪がテントを叩く音がしていて眠りが浅かった。

29日2時頃から風が止んだ。3時に目覚めるが大雪でラッセルになる事間違い無いので、隣のテントの力がありそうな2人組に先に登ってもらおうと思い4時まで眠る。朝食を食べて5:45出発。先行パーティーのワカンによるトレースはあるが、新雪に足が取られる。セカンドだからワカンは使用せずアイゼンで登ったが、ワカンの方が良かったのかもしれない。トップを交代しながら7時に南稜と合流する尾根に出る。ここですでに標竹が立てられてあったが、一応持参した標竹を立てる。ここからやや涸沢側にルートを取りながら、稜線上を蒲田富士まで登る。

▲稜線に出た所(月と笠ヶ岳)
所々岩と雪のミックスで緊張を強いられる。ここから写真でも良く見る素晴らしい稜線だが、両方が切れ落ちていて風が吹いてバランスを壊したら一貫の終わりだ。アイゼンを引っ掛けないように慎重に歩いた。ここからF沢のコルへ降りルンゼを登るのが本来のルートのようであるが、ここの状態が良くないと下山した人に聞いていた。先行パーティーが右の尾根にトラバースしてルンゼを登っていた。私達もそのトレースに従って登った。ここからは槍ヶ岳も見え、穂高の稜線に出たんだなぁ〜と実感する。ここから涸沢岳までは岩と雪の斜面の状態の良い所を探しながら稜線上を歩く。涸沢岳手前ぐらいから少し風が出てきた。しかし、雲一つない快晴で眺望は素晴らしい。先行パーティーの足は速く、どんどん距離を開けられ姿は見えなくなっていた。


▲奥穂高岳からジャンダルム


▲奥穂高岳から前穂高岳(富士山も見えました)
奥穂高岳の小屋に着いた所で、「今回の登山はここで終了。」とリーダーに宣言される。理由は、私が奥穂高岳まで行こうという気持ちが薄く、予定通りに歩けているにも拘らず涸沢岳の頂上付近で「どうするの?」と聞いた事に腹を立てた事。蒲田富士での私は怖々として歩きが極端に遅かった事。K部さん自身も体が重くスピードが上がらなかった事。この二人のスピードでは暗くなる前に下山出来ない可能性が高い事等が理由で止める事にした。奥穂高岳の冬季小屋で暖を取って休憩しようと思ったが、ドアの前に雪が積もって開けられない。仕方無いので、日の当たる場所で奥穂高岳を眺めながら少し休憩して帰る事にした。その休憩中に先行していた2人組が降りてきた。ロープを着けて下降している。その時、力のある2人はガイド山行だったんだと分かった。さすがに早いはずだ。そこから涸沢岳の頂上で写真を撮り往路を戻る。心配していた天気は全く崩れる様子も無く、ずっと青空が続いていた。奥穂高岳の頂上まで行けたかもしれないと少し思う。F沢のコルは先行パーティーが雪面を下降していたのでそのトレースを使った。蒲田富士の稜線はやはり怖い。ガニ股の足跡があるが自分の歩行と合わない。トレースをずらしてちょっと真っすぐ歩こうと思うと雪が崩れて斜面を転がっていく。「これは私の身代わりだろうか」と思うと怖くて足がすくんだ。

▲蒲田富士の稜線


▲雪庇


▲蒲田富士のナイフリッジ
気温が上がっているせいで雪の状態が朝より悪い。アイゼンが団子になって歩きにくく苦労したが、14時に幕営地へ到着した。そのまま下山する事も考えたが、せっかくだから山でのんびり過ごすのも有だと思って泊る事にした。夜間天候が崩れ、暴風後雪となった。「やっぱりそのまま下山しとけば良かったかも・・・」と少し思った。

30日5時起床、風雪の中テントを畳んでいると、どんどん登ってくる人が居るのでびっくりした。皆、年末年始を山で過ごそうと考えている人なんだろう。羨ましい限りだ。たくさんの人が入ってきたので雪の状態がますます悪くなっている。湿雪に足を取られ転びそうになりながら下山する。標高約2000m位で雪から雨に変わった。ビチョビチョになりうんざりした。

今回は最初から奥穂高岳へ登る前向きな気持ちが無かった気がする。天候が悪いから、危ないから、厳冬期のアルプスは初めてだからと皆に心配を掛けていたので、絶対に無理をしてはいけないのは当たり前だが、その気持ちが強すぎたせいかもしれない。本気で登るつもりならもう少し早出したし、スピードも上げた気がする。無風快晴で最高の天気なのに、常に「どこで引き返そうか」と考えていた。結果、微妙な時間になって諦める事になった。ただ、途中で気持ちを切り替えてスピードアップする程の力が無かったのも事実だ。装備としては、標竹を持って行ったがポイントには全部標竹があった。50mロープを持っていたが、登る事に関してはロープが必要と思う所は無かった。あくまでも非常用だ。蒲田富士では色んな意味で緊張して足がすくんだ。精神的にも体力的にももっと強くならないといけないと思った。2013年はもっと自分を磨いて果敢にトライしたいと思う。

メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

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