剱岳夏山バリエーションルート縦走&クライミング山行  (報告/ちびサンボ)


■日 程 : 2012年8月8日(夜)発〜14日(火)

■山 域 : 剱岳

■参加者 :

ちびサンボ

K部
■行 動 :

8日(水) : 21:00三宮発→新大阪で乗り換え→扇沢5:45着

9日(木)晴れ : 関電トンネルトロリーバス始発(7:30)→黒部ダム着(7:45)→出発(8:30)→内蔵助谷出合(9:30)→内蔵助平(11:50)→ハシゴ谷乗越(13:50)→真砂沢ロッジ着(15:50)

10日(金)晴れ : 3:00起床→4:20出発→1・2峰間ルンゼ取り付き着(5:50)→下見取り付き開始(6:30)→1・2のコル着(7:50)、休憩約30分→2峰頂上着(8:25)→懸垂→3峰→懸垂→4峰頂上着(9:50)→懸垂2回→4・5のコル着(10:30)→5峰頂上(10:55)→懸垂・クライムダウン・トラバース→5・6のコル着(12:15)→6峰登り(12:25)→6峰頂上着(13:30)→クライムダウン気味に懸垂→7峰はトラバース→14時頃上を目指す→8峰と三ノ窓の頭のコル着(15:00)→三ノ窓の頭着(15:20)→八ツ峰の頭着(15:40)→池ノ谷乗越(16:20)→真砂沢ロッジ着(18:20)

11日(土)晴れ後雨後曇り : 3:00起床→4:30出発→Dフェース取り付き着(6:50)→スタート(7:50)→2ピッチ目(8:20)→3ピッチ目(9:30)→頂上着(11:00)→雨が降りだす→5・6のコル着(12:45)→真砂沢ロッジ着(14:20)

12日(日)晴れ : 2:00起床→3:30出発→Cフェース取り付き着(5:40)→スタート(7:40)→3ピッチ目(8:45)→待ち約1時間→頂上着(11:20)→Eフェースより懸垂(12:00)→7峰頂上(12:30)→懸垂→8峰頂上着(13:25)→八ツ峰の頭(13:50)→池ノ谷乗越(14:40)→真砂沢ロッジ着(16:30)

13日(月)曇り後雨後豪雨 : 3:00起床→5:00出発→二股(6:15)→仙人峠(8:20)→仙人池ヒュッテ(8:35)→仙人温泉(10:30)→尾根頂上(11:20)→仙人ダム(13:45)→阿曽原温泉小屋着(14:55)

14日(火)雨後晴れ : 3:20起床→5:20出発→大太鼓(8:15)→欅平着(10:50)→トロッコ電車乗車(13:10)→宇奈月温泉駅→富山電鉄・新魚津→JR線へ乗り換え→帰神




剱岳のバリエーションは毎年チャレンジしている。いつも剣沢から入山しているので今回は黒部から入山し、真砂沢からベースを上げて行き、八ツ峰の縦走〜北方稜線〜欅平までの縦走を計画した。しかし、中3日間が雨天60〜70%の天気予報だったので真砂沢でベースを張り、天気を見ながらやれる事をやろうという計画に変更した。結果的には北方稜線縦走以外は全部出来た。



8日、神戸から夜行バスに乗って扇沢へ。K部さんは先に到着しており荷物整理をしていた。軽量化に努めるようにしていたので秤で量ると私は25s、K部さんは29kgだった。関電トロリーバスに乗って黒部ダムへ。ダムの放水を見るのは初めてだったので記念撮影。

▲黒部ダムの放水
水を補給して8:30出発。数年前に下の廊下を歩いた事があるので出発地点は記憶に残っているが他は全く記憶に無い。所々道が崩れていて危険。天気がいいのはありがたいが重いザックを背負っての歩きにはこたえる。途中の沢で水分補給をしながら、準備した2Lの水を飲み干し15:50真砂沢ロッジに到着。オーナーの佐伯成司さんが私の顔を覚えてくれていて、着くなりビール1缶をご馳走してくれた。今回の最初の計画は、八ツ峰はザックを背負って半分づつ登ってベースを上げていき、時間があれば6峰のフェースを登るという予定だった。しかし、八ツ峰は軽荷だと1日で登れるから、初日は真砂ベースで八ツ峰をいっぺんに登り、次の日は熊の岩へベースを上げて6峰フェースを登る計画にしようと予定を変更した。成司さんに明日は八ツ峰を登るつもりだと話すと、1・2峰間ルンゼが悪いからやめた方がいい、6峰のフェースでも登った方が快適だと勧められた。行く気満々だったがそう言われると止めるしかない。真砂にベースを置いて6峰フェースを登ろうということになった。

▲ハシゴ谷乗越から見える剱岳


▲真砂沢で最初の一杯を御馳走になりました!


10日3時起床、6峰フェースは混むかもしれないが、Dフェースは空いているだろうとゆっくり準備をする。1・2峰間ルンゼに着いた時、今後のために取り付きを確認しようということで雪渓を降りて観察した。ここは3年前に登った時と同じような雪渓の状態だった。何となく登れそうな感じもあったので、ロープ確保して先を偵察する事にした。少し上に上がって雪渓の状態を下から確認すると、一部安定している所を発見した。ここなら通れるだろうと雪渓のトラバースをすることになった。そこはまず雪渓の壁にアイゼンを蹴り込み、ピッケルを突き刺して雪渓に上がる。雪渓の右側から左側へ一人ずつ渡った。ここからは草付きを行けば雪渓を渡らなくても登っていけるので、このまま八ツ峰の縦走に計画を変更した。草付きは濡れており滑りやすいのでしばらくアイゼンを付けて登った。岩のところでアイゼンを外し、ルンゼを登っていった。ここは標高差400mを一気にかせぐ事になるのでゆっくりと登る。1・2のコルに着いた時は「こんなに狭い所だったかなぁ」という印象だ。1峰の往復は1時間掛かるので割愛して2峰に向かった。2峰頂上はすぐ上にあった。2峰から約25m懸垂し3峰を登る。さほど難しくない登りだが、高度感があるので緊張する。3峰からは約20m懸垂し4峰を登るが、4峰は長治郎側にトラバースしないといけないのに、そのまま稜線を登ってしまった。こんなに行きにくいはずは無い、間違ってるかな?と思いながら行くと先は切れ落ちており、懸垂の支点もないのでやはり間違いだと気づき引き返した。降りるとしっかりしたトラバースルートがあり、その先のコルから4峰の登りになっていた。4峰からは三ノ窓側へ約40mの懸垂。今回、シングルロープ60mで準備したのでピッチを切って2回に分けないといけない。2回目の懸垂支点にたどり着いたが、古いハーケン3個のあまりいい支点ではなかった。テンションを掛けないようにゆっくり懸垂して4・5のコルに着いた。5峰を登って頂上に着いたのが11時前。何とか上半も行けるだろうということで6峰に向かうことにした。5峰からの懸垂は支点がたくさんある。とりあえず長治郎側に1回懸垂、そこからのクライムダウンがちょっと難しい。念のためにロープ確保してクライムダウンした。そこから約15mの短い懸垂。ここの邪魔になる木は何となく記憶に残っている。降りて少しトラバース。そこから再び懸垂して5・6のコルに降りる。6峰からはクライムダウンで降りてくる人たちが数人いたが、非常に怖そうであった。6峰の三ノ窓側へのトラバースは何となく怖かった。K部さんにロープ確保してほしいとお願いして出してもらった。通ってみると何て事はなかった。6峰頂上へ着いたのが13時半。ここの降りはクライムダウンでもいけたはずだが、一応ロープ確保してクライムダウン気味に降った。7峰はトラバースすることが出来ると聞いていたので、時間短縮のためトラバースしようということになった。途中、シュラフ・シュラフカバー・ザックがルンゼの下へ向かって散乱している所があった。何となく死の恐怖を感じて早く通過したいと思って通過した。後から考えるとここで登るルートを見逃してしまいトラバースし過ぎる事になった。トラバースルートは延々と続くので行き過ぎてる気がしたが、登るルートが見つけられなかった。この辺のルンゼを登ればいいだろうかと思ったが、ちょっと難しそうで3級ルートでは無いという感じ。何とか3級ルートに近いところを探して登る。スラブからチムニー状の所を登り、再びスラブへ。古いハーケンだが確保支点があったのでロープ確保して登ることにした。登山靴で登れそうだが簡単ではないから間違ってると思ったが、稜線に上がらないといけない事は分かっていたし、戻って探す時間が無かったので取りあえず登ることにした。フォローで登ってきたK部さんに「こんなとこ3級ちゃう、4級以上や。ルートを完全に間違ってる」と怒られた。そんな事は百も承知だ。しかし、これを登れば8峰を過ぎたあたりに出るんじゃないかと思い、ルンゼを登ってコルに出た。こんなコルは記憶にないと思ったが、私の記憶もいい加減なので8峰と八ツ峰の頭のコルだと思う事にした。次のピークの登りは全く記憶に無い。何となく間違ってるだろうという思いがあったが、稜線に上がらないと分からない。念のためにロープ確保して次のピークをK部さんが登る。頂上に懸垂支点はたくさんあるが広くないと言う。おかしいと思ったが、取りあえずフォローで登ってみた。頂上に登って全体を見て分かった。「あれが八ツ峰の頭やで。これは三ノ窓の頭や!」もっと行き過ぎていた。

▲三ノ窓の頭から見る八ツ峰の頭、奥は剱岳本峰
間違いに気がつきロアーダウンでコルへ戻り、八ツ峰の頭へ登り直す。ここに間違いない。3年前ここでコーヒーを沸かして飲んだ記憶がある。15:40ようやく頂上に着いた。遅くなったので早々に懸垂で降るが、ここの支点が非常に悪い!ロープが少し融けかかっている。でもクライムダウンは難しいのでテンションを掛けないように懸垂で降る。ここは2回懸垂するか、1回懸垂して歩くルートもある。私達は1回懸垂で歩くルートを選んだが、歩いて最後の所が崩れていてお助け紐が欲しい。先に手足の長いK部さんに渡ってもらい、スリングを持って渡らせてもらった。池ノ谷乗越でアイゼンをつけて長次郎雪渓を降るが、降りる所が分からず少し右往左往しながら探した。結局、雪渓の始まりから降りなければいけなかった。雪渓の上部は最初がかなり悪くて怖い。そろりそろりと静かに歩いて降った。早く帰るつもりでエスケープしたのに、迷ってかえって遅くなってしまい、18:20に真砂沢へ着いた。



11日、今日から3日間ほど午前中のみしか天気はよくない予報。今日はとりあえずDフェースを登って、天気が良ければ八ツ峰の上半をキチンと登りなおすという予定にした。皆Cフェースに向かっており、Dフェースへ行くパーティーは居なかった。Dフェースの取り付きも雪渓がかなり上部まで残っていたので取り付くのに苦労した。なんとかルートを探してシュルンドの中に入り取り付いた。1ピッチ目(フォロー)、少しハングした所から左のフェースへ登る。20m程の短いルートだった。2ピッチ目(リード)、凹角からフェースとトポにはなっているが、凹角は支点が全くなく難しい。とてもV級ルートでは無いので、ほぼ直上するルートに支点が沢山あったのでそちらのルートを登った。テラスが終了点となっているが、その前に終了点を見つけてしまいそこでピッチを切った。3ピッチ目(フォロー)、凹状のフェースで草付きの所だが、いまいちルートが分かりにくい感じ。バンド手前でピッチを切る。4ピッチ目(リード)、バンドを左上してリッジに出るが、ここは高度感があり長次郎側にせり出すので結構快適。ただ、終了点があまり良くない。もう少し延ばして上に上がろうかと少し登ってみたが、ロープが屈曲して流れないかもしれないので止めた。5ピッチ目(フォロー)、高度感のあるリッジの登り。ホールドやスタンスもしっかりあるので難しくは無かったが、終了点がいまいち分からず適当な所で切っていた。6ピッチ目(リード)、トポでは最終ピッチのはずで、優しいリッジの登りとなっているが、支点があまりなくランナウトしながら登り、55mぐらいの所に終了点があったのでそこで切った。まだ上がある。7ピッチ目(フォロー)、簡単なリッジの登りで20m程で頂上へ着いた。ちょうど、頂上へ着く前ぐらいから雨がぽつぽつと降り出し、頂上へ着いて片づけ出す頃には雨具が必要なぐらいになった。今日はこのまま降って帰る事にした。明日からの天気も微妙だが、休養日として午後からゆっくり過ごした。



12日、今日も午後から天気が崩れる予報。Cフェースを登って大雨でなければ八ツ峰の上半を登る計画で出発。日曜日だからCフェースは混雑が予想されるので、いつもより1時間早く3:30に出発した。Cフェースの取り付きには13名6パーティーが待っていた。真砂からのチームでは1番だったが、熊の岩ベースのチームには勝てない。ゆっくり準備をして待つが雪渓の傍なので寒くてたまらなかった。2時間ほど待ってようやく順番がきた。

▲Cフェース取り付き2時間待ち

▲午後から雨予報の空
1ピッチ目(フォロー)、雪渓がせり出しているので本来の1ピッチ目よりかなり左側から登る。登ってる途中で「ドスン」と凄い音がした。雪渓が崩れる音だ!ビレーしている真横に雪渓があるので怖い。待ってる他の人達は皆逃げ出した。私も一瞬体を左に避けたがビレー中なので逃げられない。このまま崩れたらどうしようかと思ったが、上部が少し崩れただけで直ぐにおさまった。2ピッチ目(リード)、先行の人が苦労して進まないので頭上のホールドを教えてあげた。ここはちょっとトラバースする所が一瞬怖いが他は何て事は無い。終了点にはペツル2本あるが、そこから登ると屈曲するので、皆右へ支点を移動させながら順番に登っている。3パーティー7人が待っていた。3ピッチ目(フォロー)、先行の人達がやや右側から登ろうとして苦労している。ここは左へトラバース気味に登るのが正解。終了点は約40mの所にもあるが、そこからだと上部で屈曲するので50mまで伸ばすようにK部さんに言った。終了点が先行パーティーで詰まっていたので、少し手前で支点を取っていた。そこから約5m上の支点まで私が先に登り、次のリードをK部さんに譲った。ここは快適なピナクルのトラバース。ちょっと怖い感じがたまらない!4ピッチ目(フォロー)、K部さんにピナクルをずっと行くんだと指示したが、どうも下の段をトラバースしている。私も去年間違ったから良く分かる。「違うよ!ピナクルをずっと最後まで行くんやで!」と叫ぶが分からない様子。登って教えると前の人もこっちを行ってたと・・・せっかくリードを譲ったのに残念。後続の青年にはピナクルをそのまま登るんだよ!と教えるとビビっていた。5ピッチ目(リード)、約20mで頂上へ。渋滞でかなり時間が掛かったが、それはそれなりにいい経験になった。天気も持ちそうだし、体力も残ってるのでそのまま上半縦走をする事にした。

▲Cフェース頂上
6峰の下降は経験からクライムダウンで問題ないと判断したのでクライムダウンした。7峰へは細かいピークも全て登ってやろうと思って、稜線沿いをずっと歩いた。7峰頂上から下を見てトラバースルートが良く分かった。ザックやシュラフの散乱している所の手前を登れば良かったんだ。あれに動揺して見逃してしまったんだと気がついた。下降はクライムダウン出来そうだがコルまで懸垂した。8峰の登りはどこからでも登れそうなのでかえって悩んだ。3級ルートを探しながら登った。頂上に着いて、ここが8峰やったっけ!?とびっくりした。8峰の山様を7峰と勘違いしていたので、昨日のトラバース時に山様を見ても行き過ぎに気がつかなかったんだと分かった。ここの懸垂は三ノ窓側に落ちないようにしないといけない。いったん下がる感じなので2回に分けて懸垂した。コルは崩れてて足場が悪い。ここから長次郎雪渓にエスケープする事も出来。八ツ峰の頭の登りも、ちょっと崩れているので落石に注意が必要。

▲長次郎谷雪渓上部(何度歩いてもこの傾斜の下降は怖い)
13:50八ツ峰の頭2回目の登頂を果たした。下降は前回と違い懸垂を2回する事にして、次の支点まで懸垂したが、かなり悪くて落石の嵐になりそうだ。傾斜は緩いので、ゴボウで安定した所までゆっくり降りようと慎重に下降した。降りた所でロープ回収中にK部さんが鼻血を出した。疲れているんだろう。水分補給して涼しい池ノ谷乗越の雪渓で少し涼んだ。なかなか止まらないのでティッシュを詰めて下降した。下降中に1・2峰間ルンゼを見ると雪渓が崩れている。「えっ、私達が2日前に通った雪渓だ!」怖い。今朝は暗くて雪渓の状態を見てないが、昨日の帰りまでは大丈夫だった。昨晩の雨と、本日の好天で崩れたのかもしれない。たまたま私達は無事だったが怖いと思った。

▲1・2峰間ルンゼ(2日前歩いた時は崩れていなかった雪渓)


13日、本日は曇りで夕方から雨予報だが、時々ぽつぽつと雨が降る。皆剱沢の方へ帰って行くが、私達は阿曽原へ出発した。沢の横を通るので最初は涼しい。時々悪い所がある。濡れているので滑らないように慎重に歩く。目印の近藤岩が二股の分岐。ここから急登の始まり。沢から分かれて登りに行くが、道が崩壊してる所が多々あり苦労する。雨がちょっと激しくなる。見晴らし台の所で雨具を着ける。雨が降ったり止んだりの変な天気だ。仙人池ヒュッテの前で少し休憩。仙人池も雨で何にも見えないが一応記念撮影。そして再び阿曽原を目指すが、かなり道が崩れていて危険。その上雪渓が沢山残っているので緊張する。これは本当に一般道なのだろうかと考えさせられる。仙人温泉の前でちょっと休憩。まだ半分。ここから雲切新道は長い降り、道も悪いのでこれも緊張の連続。仙人ダムが見えた時にはホッとした。阿曽原には約10時間で到着。小屋の人に「真砂から早いなぁ、上出来や!」と褒められた。ここのカレーが大好きだから食べたかったのだけど、10月の混雑時しかやって無いとの事。残念でした。テントを張って露天風呂へ。裸になった途端に蚋にやられた。夜半から雷と大雨で本格的に天気が崩れた。

▲阿曽原温泉



14日、雨はずっと降り続いている。天気は回復するはずだから少し小ぶりになるのを待ちたかったが、2〜3時間は止みそうにない感じなのでゆっくり片づけをする。出発して最初の沢が増水している。重いザックを背負って石の上を飛びながら行くのは難しかったので、そのまま沢に足を突っ込んで渡渉した。ここからは延々と登りが続く。水平な道へ出てやっとホッとした。ここで水平歩道を歩くにあたりK部さんに注意をした。左側がずっと壁なので、ストックは右手1本にするか2本とも片付ける事、左の壁にザックが当たって弾き出される事があるので安易に振り向かない事、頭上の岩や木の枝に注意する事等を伝えた。K部さんは足元だけを見て歩く癖があるので、私が先行し頭上注意の声掛けをした。水平歩道も針金が取れてたり、足元が崩れてたりといい状態ではなかった。大太鼓からの奥鐘山は大きい!今の私にはとても登れそうにない壁だと思った。先にある長いトンネルの外は雪渓が覆いかぶさっていた。雨の影響もあってトンネル内は足首より上まで水が溜まっている。真っ暗でヘッドランプの明かりだけだし、だんだん寒くなるし恐怖感が出てきて息苦しくなってきた。私は閉所恐怖症なのかもしれない。外の明かりが見えた時にはホッとした。そこからまた延々と水平歩道。欅平の駅も見えてくるしアナウンスも聞こえ出すが、見えてからがまだまだ遠い。鉄塔の4本目から降ると覚えていた。ようやく降りに入ると足の指は悲鳴を上げていた。滑りそうだし、足が痛いのでゆっくり下山し欅平に到着した。取りあえずトロッコ電車の予約をして露天風呂へ。ああ、終わったんだ〜。上がってから、目の前の店の岩魚の塩焼きが美味しそうだったので、トロッコ電車の乗車時間を遅らせる事にした。1時間程ビールと岩魚と山菜とザル蕎麦を堪能してトロッコ電車に乗り込んだ。富山電鉄で新魚津まで行き、JR線に乗り換え、ここでK部さんと分かれて帰神した。



2009年に八つ峰の縦走をした事がある。その時はガイド登山だったから着いて行くだけだし、クライミングも始めたばかりで何も分からない状態だった。その時の記憶を頼りに登ったが、案外覚えてない事が多くて困った。剱岳山域はK部さんより私の方が経験豊富だし、この山域が大好きなのでほとんどの所をトップで歩かせてもらった。いつも思う事だが、壁も登山道もルートファインディングは本当に難しい。天候に振り回されて計画が二転三転したが、北方稜線以外は全てこなす事が出来て良かったと思う。八ツ峰は是非積雪期にチャレンジしたい。

メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

錫状岳クライミング報告 夏山と雪上訓練の涸沢合宿

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