錫状岳クライミング報告  (報告/ちびサンボ)


■日 程 : 2012年7月28日(金)夜発〜30(日)

■山 域 : 錫状岳

■参加者 :

ちびサンボ

他、山歩渓より5名
■パーティー編成 :K部-N、K脇-O野、ちびサンボ-H

■行 動 :

28日(金) 20:00阪急西宮北口集合、1:30頃新穂高温泉トンネル出口駐車場、2:00就寝

29日(土)
 4:00起床、4:30出発、錫状沢出合で幕営(6:20)、出発(7:15)、1ルンゼ取り付き着(7:45)、K部P登攀開始(8:00)、ちびサンボP登攀開始(9:00)、2P目(9:45)、4P目(10:50)、5P目(12:15)、6P目(12:50)、頂上着(14:20)、下山開始(14:50)、錫状沢出合幕営地着(17:15)、就寝(21:00)

30日(日) 4:00起床、5:30出発、左方カンテ取り付き着(6:10)、K部P登攀開始(6:35)、ちびサンボP登攀開始(7:00)、3P目(7:45)、5P目(9:00)、6P目(9:50)、頂上着(12:05)、K部Pから懸垂開始(12:15)、錫状沢着(14:30)、幕営地着(15:10)、下山開始(15:30)、下山(16:35)、23:00西宮北口にて解散




錫杖岳は行ってみたいと思っていたがなかなか行く機会がなかった。最近ピンが全部抜かれて難しくなっていると聞いていた。初めてなのに大丈夫なのだろうかと、緊張と期待の混じった気持ちでの参加となった。

28日20時、阪急西宮北口駅集合、K脇さんの車に関西チーム4人が乗り出発した。たいした渋滞も無く順調に車を走らせていると、東京から出発したK部さんから「駐車場がいっぱいで停められないから違う場所に停める」と連絡があった。天気が良くいい時期だから仕方ないが、どうしたものかと考えながら我々は1時半頃駐車場着。何とか1台停められたので駐車しK部さんと合流。群馬から来るH君はまだ到着していないが、朝早いので女性チームはテントを張って2時に就寝した。

▲登山道から見た錫状岳
29日4時起床。周囲も早くから起きている。早々に準備し、4時半駐車場を出発。登山口に着いたところでK脇さんが新しいトポと計画書を車に忘れたと言うので少々待ち、全員そろって出発した。ここから錫状沢出合までは延々と登りが続く。重いザックでスピードは上がらず、後からスタートした軽荷で登る県連錬成山行チームにどんどんと抜かされていった。一ヵ所渡渉があり、重いザックではバランスを取るのが難しく、先に渡っていた県連チームのK君が手を差し延べてくれた。とても有難かった。約1時間で錫杖沢出合へ到着。テントはすでに4張りあり、とても張れそうにない。クリヤ谷の対岸へ渡ってゴロゴロ石のところを整備すると何とか2張り張れそうな感じ。テントマットだけでは痛くて横になれそうにもないが、ザックとシュラフを敷けば何とかなるだろうと断念する。装備が準備できたら出発。それぞれのパーティーがコールの届かないときの合図を決めるが、H君が笛を忘れたと言い出した。何だと!と怒っても仕方ないので、ロープを引いて合図することを決めて出発した。K部パーティー・ちびサンボパーティーは1ルンゼへ、K脇パーティーは左方カンテへ出発した。途中でNさんがヘッドランプを忘れたと言いだす。なんて事だ!約30分で1ルンゼの取り付き着。先行には2パーティー登っていたのでゆっくり準備する。そこで今度はH君もヘッドランプを忘れたと言いだした。あり得ない!!暗くなりそうなら上まで抜けないで懸垂で降りるしかない。

▲1ルンゼ取り付き
8時K部さん登攀開始、Nさんが登ったら直ぐに私もスタートした。1ピッチ目(45m、5.9)は全く支点が無く、ナッツは持ってきてないのでカムの入りそうな所を探して慎重に登った。上部のスラブは手も足も無く、ロープが重くて後ろに引っ張られそうになるし泣きそうだ。ここで落ちたらあかんと思って必死でしがみつくように登った。気が付いたらカム2セット分を殆ど使っていた。支点はしっかりしたペツルがあった。基本、H君とはつるべで登ろうと決めていたので、2ピッチ目(40m、5.8)はH君リード。スラブを難なく登っていくが、フォローの私にはホールドが少し遠くてしんどい所があった。3ピッチ目(40m、IV)リード、ルンゼからスラブを左上、残置ハーケンがあってちょっとアルパインちっく。4ピッチ目(40m、5.9)フォロー、ここが以前の6ピッチ目の核心。左フェイスにハンガー2枚ついているので比較的簡単に登れるが、左から右に移る所が私には一手遠くて怖かった。以前は右側のルートをA1で直上していたらしい。

▲1ルンゼ4ピッチ目(以前の6ピッチ目)


▲1ルンゼ5ピッチ目スラブの登りだし
5ピッチ目(30m、5.8)リード、スラブからチムニー登り。K部さんは右の難しそうなスラブの方を登っていたが、私は素直に左側から登った。古いリングボルトやハーケンが残っていた。6ピッチ目(30m、5.9)フォロー、脆くて濡れてるチムニーから草付きの横断バンドへ。チムニーでは足をいっぱいいっぱいに広げて、右へ乗り移る感じで登った。横断バンドから最終ピッチのルンゼ下部(20m)まで行かないとロープが流れず苦労する。7ピッチ目(20m)フォロー、順番では私だが、H君が最終ピッチをリードしたいと希望したので譲った。自分的にも濡れていて気持ち悪いからちょうど良かった。先行のK部さんがスリングを残置してくれていたので安心して登れた。草付きを歩いて登って頂上へ到着。先行パーティーのK部さん達が先に下降路を探しに行ってくれた。その間に身支度を整える。下降路は草付きでちょっと油断すると滑りそうになる。岩も脆くて崩れそう。方角は分かるが明らかなルート無いので合っているのか間違っているのかも分からない、緊張するトラバースだった。ここを降れば沢に出るってところが悪かったので、ロープを出して下降した。ここからは沢通しに降りられそうだったのでホッとしたが、思ったほど良い道では無かった。何とか無事にクリヤ谷に出た時は沢で水浴びをして汗を流した。夜は皆で豚汁とご飯。夜ごはんも終わる頃に雨が降りだした。大粒の雨だったので直ぐに片づけてテントへ逃げ込んだ。雨は夜中降り続き、雨がテントを叩く音と沢の音に包まれながら眠った。

30日4時起床、雨は止んでいた。登れそうなので朝食を摂って、各パーティーに分かれて登りに行く事に。いつ決めたのか知らないが、K脇さんパーティーは1ルンゼを止めて笠ヶ岳に登りに行くらしい。我々2パーティーは5:30出発し左方カンテへ向かう。先行に2パーティーほどいたが、黄道光を登るらしく1ピッチ目が重なるだけだった。ここもH君とはつるべで登る事にした。1ピッチ目(30m、III)フォロー、3ルートほどあるが先行パーティーの登った真ん中のルートを登る。2ピッチ目(30、IV)リード、フェースからクラックの登りだが、少々被っていて登りにくい。やや左に巻いて終了点へ。3ピッチ目(20m、V+)フォロー、先行のK部さんが何やら登りにくそうにしている。トポでフェースを右上となっていたので右方向へ登っていたが、右へ行き過ぎたみたいでえらく難しそうな立ったフェースを登っている。難しくて登れないので、戻って左側から回り込んで登り直す。実はこれも少し違っていて、フェイスを直上するのが本当のルートのようだが、後からトポを見直して気がついた。とにかく支点が無いのでルートを探すのに苦労する。H君リードで登るが1ピン目のカムにロープが掛かって無い。途中で気がついたが、今言うと焦ると思ったので、2ピン目のカムを決めてから教えてあげた。滑らなくて本当に良かった。4ピッチ目(40m、IV)リード、昨日の雨でチムニーの中は濡れており、ザックとギアが引っ掛かり、奥に手の届かない私は恐る恐る体を引き上げるしか無く、非常に緊張する登りだった。5ピッチ目(40m、V)フォロー、フェースからカンテを左寄りに登る。ここのフェースはちゃんと見ればスタンスもホールドもあるし、程良いクラックにカムも利くので快適だった。

▲左方カンテ快適な5ピッチ目
6ピッチ目(40m、V)フォロー、ここも順番でいうと私のリードだが、H君がリードしたいと希望したので交代した。K部さんは初見でオンサイトしたと言っていたが、今回は登れないと悩んでいる。散々悩んでムーブが解決できずAOで登った。H君も自分でムーブを考えたが結局解決出来ずにAOした。フォローの私も全く分からずAOで登った。左のフェースを登ってカンテに出るが、このフェースが案外脆いし、ところどころ濡れていてフォローでも怖かった。カンテは勇気を出して登れば何とかクリア出来た。

▲左方カンテ6ピッチ目(AOしました)
7ピッチ目(45m、IV)リード、細かいフェースから草付きへ。ここで私は見てないのだがK部さんが滑って落ちたらしい。聞いただけで緊張するが、左のフェースではなく右のフェースなら登れそうなので右から登った。先行フォローのNさんも何回か滑ってテンションしていたが、細かいホールドを捉えると何とか登れた。頂上に着いたのが12時頃。K部さんが11時の無線連絡を忘れていたと慌てている。私も時間の事はすっかり忘れて登っていた。早く下山しないといけないと慌てて準備する。

▲頂上にて
頂上から懸垂で降りるが、先行のK部さんのロープが木との摩擦で滑りにくそうだった。ちょっとロープを触るとスルスルと流れた。私達は最後だから2回に分けて懸垂しようかと考えたが、何とか流れていたし、2回に分けると時間が掛かると思ってそのまま1回で降りる事にした。先にH君が降りたがロープが引けないと叫んでいる。どこにも引っ掛かってる感じは無く、ちょっと触るとスルスルと流れた。少し不安はあったが、何とか流れるだろうと踏んで懸垂した。ロープを回収し始めて30mぐらい引いた所で「あかん、引っ掛かった」と。マズイと思ったがどうしようもない。先行のK部さんは懸垂を終えてロープの回収に掛かっている。これまたマズイ。K部さん達のロープを掴んで現状を伝えるが、声が届かず伝わらない。このままでは最悪ここに取り残されてしまう!と焦った。H君が「1本で届くと思うから登り返します」と言う。もし届かなかったら・・・と悩むが、ロープの残量と上部のルートから考えると何とかなるだろうと判断して、K部さん達のロープを離しビレーをする事にした。何とかロープは足りて降りる事は出来たが、ここでまたまた判断ミス。1本で降りられると判断して、1本ロープを落としてきた。残念ながら後5m程届かなかった。また、途中の木で支点を取り直し懸垂で降りてきた。ここから先は二人とも初めてで、何ピッチで降りられるのか分からない。支点はどうなってるのかも分からない。ちょうど、後続に経験あるクライマーが登ってきたので聞いてみた。真っすぐ降りたら注文の多い料理店側の沢に出るよ、と教えてもらった。50mダブルで3ピッチ、上から計4ピッチで降りてきた。

▲左方カンテ頂上から4ピッチの懸垂で錫状沢へ
支点は全部ペツルがあったが、途中、足元が不安定で狭くて怖い場所もあった。色んなトラブルがあり、ようやくテント場へ着いた時にはホッとした。テントはK脇さんパーティが撤収してくれていたので、早々に片づけて下山した。帰りに露天風呂に寄ったが、熱くて中に浸かれなかった。掛け湯だけだったが汗を流してさっぱりした。考えると朝から何にも食べてない。帰りのPAでウインナー1本をかじって空腹をしのいだ。0時半頃自宅に着いた。
初めての錫状岳は結果的に苦い思い出になりました。ピンが無く、ルートファインディングの難しさも感じました。トレーニングと経験を積んでいかなければいけないと思いました。


メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

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