夏山と雪上訓練の涸沢合宿  (報告/ココノール)


■日 程 : 2012年8月10日(金)〜13日(月)

■山 域 : 穂高連峰涸沢

■目 的 : 雪上訓練と夏山教室修了

■参加者 :

Tankuro
(リーダー)

ZONO


ランボー

ココノール
(サブリーダー)

isoroku


JIKA-TABI

Ryuchan
(サブリーダー)

maho


いろり

○玉


けい


kaori

mariko


AD


ジプシー
■行 動 :

8月11日 7:00小梨平で全員合流して出発 7:35ー7:45明神池 8:30ー8:55徳沢  9:55 横尾 10:15 横尾大橋 11:35本谷橋 12:55 ー13:15 2000m地点休憩 14:15涸沢  (テント場確保のためRyuchan、ココノールは早歩きで11:50涸沢着) 15:00テント設営完了 20:00就寝

8月12日 4:00 起床 6:00出発 6:20雪上歩行訓練 9:20滑落停止 11:30小休止 12:30アイゼントレ 14:20雪上訓練終了  16:00テント場で天気図作成 17:00〜19:00宴会

8月13日 4:00起床 7:00悪天により訓練延期決定 9:10 天気図作成 11:10 涸沢発 14:20ー14:37横尾  15:35ー 15:50 徳沢 17:15 河童橋 18:00上高地バスターミナル 19:00平湯温泉 




8月11日(土)

メラピークKOBEとしては初めてとなる夏の雪上訓練と今年入会した8名の夏山修了を目的としてこの合宿が行われることになった。事前の技術学習やトレーニングをへて15人が参加した。昼発は小梨平でテントを張って泊まり翌朝に夜発組を出迎えた。朝、小梨平で合流して荷物を振り分けたら一人20kgを超える重量となった。ビール500ml缶を48本荷揚げしたので若者は30kgを超えた人もいた。



▲人生で最重量を担いだ人もいたが楽しんでいた
涸沢まで特に急登も難所もないので大丈夫であろう。盆の混雑時なのでテント場の場所取りにRyuchanとココノールが向かうことになり、出発と同時にみんなと別れて先行した。Ryuchanは走るように歩く。先行する登山者を追い抜きながら、短時間の水分補給をしたのみで涸沢に着いた。わたしは肩の術後なので重量は20kgに抑えてもらったがRyuchanは26Kgだそうだ。まあ、この程度の体力があれば冬山のラッセルも何とかこなせるだろう。

涸沢のテント場は岩石の上にテントを設営するし、大きなテントは張れる場所が限られる。場所を決めて整地しながらみんなの到着を待った。みんなが着いて明日の訓練場所の選定のため○玉、Tankuro、Ryuchan、ZONOの4名が偵察に出かけた。新人は天気図を作成する。明日の天気は曇りで一時雨かもしれなという予想になった。新人全員が天気図を書けるようになっている。


8月12日(日)

翌未明にテントの外を見ると雲があるが屏風の頭の上空に月が見えた。夜が明けると雲もなくって快晴に近い状態になった。空は澄み穂高の山と雪渓がくっきり鮮明に姿を現した。はじめて涸沢やアルプス方面に来た人もいるので幸運であった。前穂高北尾根に突きあげる雪渓で訓練するため出かける。以下は雪上訓練を担当した○玉の報告である。

雪上訓練の報告(○玉)


▲涸沢雪渓で訓練手順の相談

11日 涸沢に到着しテント設営(BC)後、15時からL○玉、Tankuro、ZONO、Ryuchanの4名が涸沢カールで訓練場所の下見を行った。残雪が多いと聞いていたが、このところの気温上昇だろうかカールの涸沢入り口には池が出来ていた。5・6の雪渓入り口近くまで登って明日の訓練場所を確認し、16時にBCに帰着した。
      
12日 BCを6時に出発し、涸沢カールの下に集合する。次の2班に編成し、SLのココノールはフリーで動いてもらった。

A班:Tankuro、ZONO、mariko、maho、AD、ジプシー、ランボー
B班:○玉、Ryuchan、isoroku、JIKA-TABI、いろり、kaori

今日の雪上訓練のプログラムは次の通りである。

(1) 平坦な雪上の歩行(1.登山靴だけで歩く、2.ピッケルを使用して)
(2) 耐風姿勢    (登高中、下降中)
(3) キックステップ I (40度以下の斜面で行う)(直登高、トラバース、直下降、斜登高、斜下降)
<トラバースと斜登高、斜下降はそれぞれ左・右を山側にする>
(4) 初期停止
(5) 滑落停止  (停止方法 I 軟雪斜面で)
           (停止方法 II 労山方式)
           (停止方法 III 岳連方式)
(6)グリセード
(7)アイゼン技術 I (40度以下の斜面で行う)
(直登高、トラバース、直下降、斜登高、斜下降)
<トラバースと斜登高、斜下降はそれぞれ左・右を山側にする>


さっそく課題1の「平坦な雪上の歩行」をカールの末端部分でTankuroのデモを見てから始める。平坦に近い緩い雪面で靴底をフラットに置いて歩く。夏の雪渓はスプーンカットがあるのでそれを利用すると良い。初めはピッケルを使用しないで行い、2周した後で今度はピッケルを使用して歩行した。

▲アイゼンなしの歩行

次に課題2の「耐風姿勢」である。今日はほとんど風はないが、冬山では強烈な風があり、吹き飛ばされないようにピッケルを打ち込んで文字通り風に耐えなければならない。基本の姿勢を練習してから歩行途中で呼子に合わせて耐風姿勢をとる。下降中にこの姿勢をとるのは難しいので今後の研究を要する。

課題3の「 キックステップ I 」は斜面を少し上がってから行った。初めにmarikoがデモを行う。直登高、トラバース、直下降、斜登高、斜下降を3周ほど行う。スプーンカットの斜面部分に爪先、踵、サイドエッジを蹴り込んでステップを作る。磨耗した軽登山靴の底では一回では出来ない。気温が上がり、雪が柔らかくなって来た。

▲アイゼンで傾斜の強い斜面を歩く

課題4の「初期停止」は課題5の「滑落停止」に入る前に滑落を停める技術である。現実問題として急斜面での滑落停止は難しい。転倒、スリップなどしたら直ちにピッケルのピックを刺して滑落し始める前に停めることが一番大切なことである。登高中、下降中に転倒、スリップした時の体勢で直ちにピックを打ち込む練習をした。
課題5の「滑落停止」は雪上訓練の花形?という定番。「停止方法 I 軟雪斜面で」は雪質が適応しないので実施出来なかった。「停止方法 II 労山方式)」と「停止方法 III 岳連方式」のそれぞれについて練習を行った。適度な雪質の斜面が得られなかったので滑落スピードもあまり出なかった。Ryuchanが考案したガラ袋を細工したオムツカバーは滑るどころか逆に表面の摩擦によって滑らなかったのは残念であった。この「滑落停止技術」は何回も反復練習をして転倒、滑落の際は瞬時にこの体勢が出来ることが求められる。滑落しても素早く初期停止の行動を取る、それで停まらなくてもすぐにこの滑落停止の体勢で停めるために最大限の努力をする。最後まで諦めないことが一番大事である。基本姿勢を何回も練習し、前転や後転などからの停止に入るバージョンアップも試みた。

▲岳連方式の滑落停止



▲労山方式の滑落停止

課題6の「グリセード」は雪質が悪かったが、みんな良く頑張っていた。最近はピッケルが短くなっているのでこの技術も難しくなった。ADはスキーの経験もないようだが、上手かった。JIKA-TABIはスキーが上手いと前評判を聞いていたが、滑落停止の練習で行った前転から起き上がってグリセード姿勢になり、山回りで見事に停止した。私はグリセードにはいささか自信を持っていたが、今回は全く出来なかった。登山靴の本底を張り替えたからとも思ったが、かなりショックで自信喪失した。課題6を終えてから30分程度の大休止をとった。

▲グリセード

課題7の「アイゼン技術 I 」はココノールがアイゼンによる基本歩行を指導した。直登高、トラバース、直下降、斜登高、斜下降を行う。練習を始めた頃にけいがカールの下部から登って来るのが見えた。合流後B班に入った。5・6雪渓下部の傾斜のややきついところでもアイゼンの登下降を行った。

14時過ぎに今日の訓練を終了した。遅れて来たけいにはココノールが「滑落停止」の技術指導をした。また、有志も滑落停止やグリセードの練習を行って15時頃に下山を始めた。 
    
13日 3時頃から雨が降り出し、結局11時から涸沢を撤退することになった。

雨が降らなければ今日の雪上訓練のプログラムは次の通りであった。
 
(1)12日に訓練したことを復習する
(2)キックステップ II (40度を越える斜面で行う)
(直登高、トラバース、直下降、斜登高、斜下降)
(3)アイゼン技術 II (40度を越える斜面で行う)
(直登高、トラバース、直下降、斜登高、斜下降)
(4)前穂高北尾根のV・VIのコルからVI峰へ登る

13日は12日に練習したキックステップやアイゼン技術を5・6雪渓の下部の傾斜のきつい部分で行う予定をしていたのだが、実施出来なくて残念である。雪上訓練は1日だけに終わったが、基本的な雪上技術については新人を含めて経験することが出来たことは有意義であったと考えます。また、最後に5・6コルから6峰に登って涸沢周辺の景色を楽しみ、概念を把握してもらいたかったのであるが、これも今回は出来なかった。次回に期するとしよう。(記:○玉)


8月13日(月)

未明から断続的に小雨が降った。朝食の頃には断続的ながら本降りになってきた。リーダーが雪上訓練への出発時間を延期した。9時10分の気象通報を聴いて天気図を作成する。結果は、日本列島は気圧の谷にあり、停滞前線が華中から能登半島付近まで伸びている。前線の動きは遅いようなので今日明日は天気が悪いことが予想された。これでは、今日の訓練はおろか明日からの縦走も事実上できないだろう。リーダーは即日下山の指示を出した。テントを撤収して11時に下山開始と決まった。今日一日雪上訓練をすればかなり充実しただろうと思うと誠に残念である。しかし昨日はみっちり訓練できたことをよしとしよう。

雨中の下りはいやなものだ。雨具を身につけて、メガネに水滴がついて、視界は狭くなるし、滑りやすい。おまけに入山する人と頻繁にすれ違う。それを待ってやり過ごすのに時間をとられるのにうんざりする。登ってくる人を観察していると圧倒的に若い人が多い。1970年代は山には若い人があふれていた。山が中高年に占領されるようになったのは1990年代だろうか? 今また若い人が山に帰ってきたことがうれしい。いっとき、登山が3Kスポーツ(きつい、汚い、危険)と言われて若者から敬遠されていたのだが、今の状態を一時の流行に終わらせたくないものだ。

この下りでJIKA-TABIが足首を捻挫した。本谷橋の上部の岩の上だった。バランスを崩したJIKA-TABIをランボーがつかんで止めた。つかまなければ急斜面に転落した可能性もあったようである。JIKA-TABIはテーピングして空身でストックを使用して上高地まで歩いた。かれの荷物は分担した。

上高地の河童橋で記念撮影をしてから18時の最終バスに乗り込んだ。平湯で風呂に入り帰途に着いた。わたしが自宅に帰ったのは午前2時30分だった。


今回の涸沢合宿について(Tankuro)

昨年11月に県連冬山教室に参加したのだが雪が少なく、新雪であり、おまけに雨のため、いい結果が得られなかった。今年の春に、立山、剣の山行のとき、雪上訓練(滑落停止)をしたのだが、雪が腐り思うような、訓練できなかった等々があり、その帰りに「○玉さんに夏の雪渓で雪上訓練をしたら」と言ったら「言いだしっぺの、お前が、リーダーでやれ」と私に、お鉢が回ってきた。○玉さんの命令で断れないので引き受ける羽目になってしまった。

雪山では、登山靴で雪の上を歩くことや、ワカン,スノーシュー、アイゼンを付け、歩くことができなければならない。又、これらを、しっかりと身に着けなければ転倒し滑落し、大事な命を無くすことにもなる。

今回の合宿は、転倒しないように歩くこと、特にアイゼン歩行(直登高、トラバース、直下降、斜登高、斜下降)に多くの時間を取り又、滑落停止訓練をし、それなりの成果(60%〜.70%)は、あったと思う。残念なことに2日目は、停滞電線で雨のため中止になり下山したため、40度を超える斜面での歩行訓練、滑落停止訓練ができなかったことが少し気にかかる。


メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

剱岳夏山バリエーションルート縦走&クライミング山行 赤木沢

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