剱岳登山報告   (ちびサンボ)



ちびサンボ


I葉さん

■日 程 : 7月20日(月)夜発〜25日(土)

■山 域 : 剱岳

■参加者 : ちびサンボ、I葉さん(ガイド)

■行動記録

7/20 22:00新大阪大型バス乗り場発 (キャンセル客が多くバスはガラガラの11人)

7/21 7:00室堂バスターミナル着 I葉さんと合流 11:30剱沢小屋着

7/22 5:30剱沢小屋発 源次郎尾根ルート 10:55剱岳頂上着 平蔵谷雪渓下る 14:30剱沢小屋着

7/23 4:00剱沢小屋発 八ツ峰下半から上半 13:20八ツ峰の頭 長次郎谷雪渓下る 16:20真砂沢ヒュッテ着

7/24 4:30真砂沢ヒュッテ発 Cフェース(剱稜会ルート)・Aフェース(魚津高ルート) 長次郎谷雪渓下る 16:30剱沢小屋着

7/25 5:00剱沢小屋発 別山岩場で岩登り 雷鳥荘の温泉に立ち寄る 12:00室堂バスターミナル着 12:30バス乗車(ガラガラの7人) 20:00大阪着




 去年、剱岳の北方稜線を歩いた時に見えていた岩稜帯を歩いてみたいと秘かに思っていた。春に連絡を取った時は早月尾根または白萩川沿いを登って北方稜線、八ツ峰の上半から頂上経由の予定にしていたが、7月になって「岩登り中心のコースがいい」と希望した。ガイドには「ヘトヘトになるから普通はいっぺんにはやらない。やりたいならしっかり体力をつけといて下さい。」と言われていた。

 不幸なことに天気予報はほとんど雨か曇り、雨の登山は嫌いじゃないけど岩登りは別、ちょっと残念な気持ちで向かったが、ガイドは「雨の後は天気が良くなるし山が綺麗」と言ってくれたので、1日でも晴れたらいいかな!と思って出発。そして、自称「晴れ女」の私は少し能天気な気分でいた。


 7/21、室堂到着時の天気は曇り時々小雨、カッパを着て歩きだしたがほとんど無くていいぐらいだったので、体温調節のために着たり脱いだりしていた。剱御前小舎で休憩、ガイドの顔でコーヒーとお茶を御馳走していただく。その間にすごい雨!!スコールのような雨がやむのを待って剱沢小屋へ出発。剱沢小屋は今年から移転したので以前より剱岳に近くなっていた。そしてここでも小屋に着いた途端に雨が本降りになった。うまく雨を避けながら11:30に剱沢小屋到着。到着のビールを飲んで荷物を整理して昼寝。剱沢小屋は二段ベットになっていて布団も新しくなり快適!グーグー休んで16時ころドアをノックする音が。「すみませんが、ちょっと具合の悪いお客さんが居るんでみてもらっていいですか」と。食堂でやや震えながらビニール袋を口に当ててる女性が付き添いの女性とその他の従業員に囲まれていた。「過換気みたいなんですけど」と周囲の声。どこからともなく酸素飽和度モニターが出てきた。「遭対協には連絡したからスタッフがこっちに来ます」全て段取りは整ってるから私なんかいらないじゃん。と思いながらも、女性なので一緒に付き添い部屋へ移動。横になったら楽になるよ!と声掛けし、お茶を飲ませて甲斐甲斐しく看護しちゃったりして。話を聞くと、保健衛生局の新人獣医さん。山小屋の衛生状況確認のために入山。装備は先輩から聞いてそろえているが山登りの経験はなし。この後、仙人池・阿曽原温泉小屋にも回らないといけないと・・・信じられない!!無理無理!天気も悪いし危ないし!!彼女は仕事を全う出来ない情けなさと、同行の先輩に迷惑をかけると泣いてばかり。まぁ、無理なものは無理なんで、先輩は会社に連絡して明日下山することに。都会の保健衛生局じゃ考えられない仕事だと思いました。そんなこんなで初日終了。



▲皆既日食
 7/22、最初の予定では八ツ峰を先にする予定でしたが前日の悪天を考えて源次郎尾根に変更。雨が少し残っているので5:30のゆっくりスタート。源次郎尾根取り付き到着、雨も上がり登攀開始するが最初の岩場が前日の大雨のせいで増水し川になっていました。ガイドが先に登って確保してくれましたが岩が滑ってなかなか登れず、ゆっくりしてるとビショビショになるし悲惨な登りでした。ガイドも「ここが川になってるの初めて見た」と。そこから露払い・藪こぎの登りでしたが、とにかく足もとが緩んで崩れるので少し怖かったです。I峰に着いたのは9:00頃、明日登る八ツ峰の稜線を眺めて休憩。続いてII峰、噂の懸垂下降地点では少し足がすくみました。10:55頂上到着。先客は2名のみ。そういえば源次郎尾根も貸し切り状態。本来ならボチボチ登る人もいるらしいのですが、今回は天気が悪く大雪山の事故の後だけに山小屋も8割キャンセルが出たそうです。頂上でコーヒーを沸かしてのんびり休憩。天気が何となく怪しいなぁ〜早く下山しないといけないかなぁ〜と空を見上げてびっくり「皆既日食!!」そうだ、今日は7/22世間は皆既日食のために海外から見に来てる人も居るとか・・・私は山の事しか考えてなかったからすっかり忘れてたので何の準備もしてこなかった。しまった・・・とにかく、写真・写真と、数枚撮った中で何とか撮れたのはこれ1枚でした。


▲八ツ峰 I・II峰間取り付きの雪渓
 ゆっくり、まったりした後下山。前剱から下山予定でしたが時間に余裕があるので私の雪渓歩行練習という名目と、雪渓の状態を確認したいガイドの意向で平蔵谷雪渓を下ることに・・・そして約50分程かけて下降し14時半に剱沢小屋着。夜は再び雨が降りましたが、明日は何とか天気が持ちそうとの事で八ツ峰に向けて早めに就寝。しかし、雨・風が強く気になったのと、緊張であまり眠れませんでした。


7/23、4時過ぎに剱沢小屋出発。荷物は出来るだけ軽い方がいいとの事で長次郎雪渓出合で荷物をデポしてI峰・II峰間ルンゼへ出発し、5時半頃に到着。ガイドが取り付き場所を探すが雪渓が結構残っているので私が登れそうないい場所が見つからず、うろうろしながら6時10分頃にようやく登攀開始。I・IIのコルに向かって登るが雪解け水で濡れた岩場に悪戦苦闘。「ゆっくりしてるとずぶ濡れになるよ」と言われ、恐る恐る登って7時半頃コルに到着。昼から天気が崩れる予報、時間短縮でI峰は省略しようという事に。最初っからこんなに時間がかかって大丈夫かなぁ〜と心配&この調子で8つのピークを登れるんだろうかと不安&わくわくな気持ちの入り混じった心境でした。しかし足は勝手に動くもので、ガイドに着いて行き言われるままに懸垂下降を繰り返してトントンとIV峰へ到着したのが8時半頃。主峰への峰の稜線、絶景を眺めながらゆっくり休憩。

                       
IV・V峰間は上部まで雪渓が残っていたので、足場を探しながらかなり下方への懸垂下降になりました。
V峰の頂上では槍ヶ岳も見えて素晴らしい景色が見られましたが、VI峰の頂上へ登ったあたりからガスが出たり晴れたりで、肝心の八ツ峰ノ頭に到着したときはガスってほとんど見えませんでした・・・

▲VIII峰から長次郎谷雪渓を望む
VIII峰に着いたのが12時半頃、そこから見たチンネの頭やクラオパトラニードルは次の目標かなぁ〜なんて思いながら反対側の長次郎谷雪渓の上部を見て憂鬱な気分に・・・何が苦手って、雪渓の急斜面が大の苦手。両端の切れ落ちた馬の背のような所を歩くより、傾斜のきつい雪渓下りがものすごく怖いんです。ああ嫌だ・・・池ノ谷乗越に着いたのが14時頃。頂上経由して前剱から下山してもいいが、時間がかかるし、雪渓下りの練習をした方がいいとの事で長次郎谷雪渓を下ることに。もちろんガイドがロープ確保してくれていますが、ガスってよく見えないから奈落の底に落ちていくような感覚にとらわれ半泣きになりました。ステップを切っても足もとから崩れるし、時々滑るし、一度滑り落ちそうになってピッケルを刺しましたが、後ろ向きになったりジグザグに下降したりして何とか15時45分頃に長次郎谷出合へ。そして16時20分、真砂沢ヒュッテに到着しホッとしました。
      

 7/24、前日の疲れもあるだろうからゆっくり岩登りをする計画。4時半出発、またまた長次郎谷雪渓を登り、腹ごしらえと身支度をしてCフェースに取り付きはじめたのは8時頃だったと思います。天気はガスったり晴れたりの中途半端な天気でしたが、9時50分頃Cフェース頂上到着。少し休憩してAフェースの取り付き地点へ。しんどかったらAフェースを止めて下山してもいいとの事でしたが、ここは女の意地で「やります」と即答。しかし、やっぱり止めときゃよかったと後悔するのはこの後。体力はギリギリだったのか足も腕もなかなか思うようには上がらず、「ええい、何でや、くそっ」等とボヤキながら登攀するがもうちょっとが届かず、右腕を思いっきり伸ばしたときに「痛ててっ、腋がつった!」こんな事は初めてで、腕に力が入らず「腋がつったから登れません」とガイドに言うが、「ゆっくりでいいよ」と優しい?!言葉。仕方ない、私がやるって言ったんだからやってやろうじゃないかと思いなおしてゆっくり登攀。1時間半程かけてクタクタになりながらようやく頂上に到着。しかし、登ってみると達成感!!自然は綺麗だし、雄大だし、私はよく頑張ったし、言う事なし!という感じで大満足でした。下山時は登ったところを何度も何度も振り返りながら、「終わったんだなぁ〜」という淋しさを抱えて長次郎谷雪渓を下り、16時半頃剱沢小屋へ戻りました。


▲チンネとクレオパトラニードル

▲Cフェース頂上より
 実はこの登攀中、私とガイドが気にしていた事が一つ。長次郎谷雪渓を登り始めた時から私たちの後ろを登ってくる一人の青年がいました。
                           
テントを担いでいるから熊の岩にテントを張るのかと思っていましたが何となく様子が変。私たちが岩の取り付きの方へ行くとついてきたので、ガイドが「どこ行くの?」と尋ねると、「頂上に登って前剱の方へ下山出来たらと思って」と言うが、足元は4本爪アイゼンでピッケルも持っていない。「それじゃあ無理。ピッケルかちゃんとしたアイゼンじゃないと頂上手前は登れない。諦めて下山したほうがいい」とガイドが注意。「分かりました。でも、下りるのも滑って怖いなぁ〜。ちょっと休んでから帰ります」と言ったので、私たちは登攀開始。ところがCフェースの頂上で彼の姿を発見!熊の岩でウロウロしていました。ガイドは私というお客が居なかったら自分のピッケルを貸すか一緒に連れて行ってあげたかったみたいですが、どうすることも出来ずにいました。その後、Aフェースを登っている時再び彼が頂上手前の岩場でウロウロしているのを発見。こっちもドキドキハラハラの最中ですが、あっちも気になる。でも気にしていたら登れないから無視して登攀。Aフェースの頂上で再び確認したら彼は頂上を諦めて下山しているところでした。「勇気ある撤退。良かった」とガイドと私は胸をなで下ろしました。
                             

7/25、体は重いけど名残惜しいので初日の予定にしていた別山の岩場で岩登り。しかし、やはり悲惨な状態。力を入れると前日に痛めた右の腋がつるし足の踏ん張りも利かないし、「無理です。登れません」と訴える。ガイドから「根性は!?」と返答があったので、「根性も力もありません!」半泣きで返答しました。頂上まで行くのは断念して2ピッチ登ったところで下山しました。下山後は温泉でまったりして12時半のバスに乗車。帰りのバスもガラガラの7人。自由に座って下さいとのことで足を伸ばしてらくらくで帰り、予定通り20時に大阪に着きました。


 今回は梅雨明けを想定しての日程でしたが梅雨は明けず、雨も降ったりやんだりの天気で雪渓も沢山残っていました。この不安定な天気と登山道の状態から、源次郎尾根も八ツ峰も私たちが今シーズン初だろうということでしたが、お陰様でどこも貸し切り状態の快適な登山でした。本格的な岩登り登山は初めてでしたが、ガイド登山のおかげで安全で楽しい登山になりました。「セカンドの特権は自分の技術向上だから、ちゃんと岩に向き合って自分で登ること」と、時間をかけて登らせてくれました。私にとってはかなりのハードスケジュールでしたが、小屋泊まりで荷物を軽くしたから登れたんだと思います。実際に登るときは雨に降られなかったのもラッキーでした。

 今回、この山行を行う前に大阪パンプや保塁岩で練習に付き合って下さった○玉さんをはじめ、塩ちゃんさん、Tankuroさん、皆空さん、country gentlemanさん、そして初心者には危険だとアドバイスをして下さったmarikoさん、ありがとうございました。無事、怪我もなく登攀を楽しむことが出来ました。
 今後の課題は雪渓の急斜面に慣れること、クライミング技術の向上など他にもたくさんあります。
そして目標は・・・どこに向かっていくのか私にもまだ分からないですね。

メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

鳳来フリークライミング 赤木沢・薬師岳

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