剱岳バリエーション山行 (報告/ちびサンボ)



■日 程 : 2016年7月29日(金)夜発~8月3日(水)

■山 域 : 北アルプス 剱岳

■目 的 : アルパインクライミング

■参加者 :

ちびサンボ
(リーダー)

はっせー
■行動記録

29日(金):22:00大阪発高速バス

30日(土):(曇りのち一時雨・雷のち晴れ) 5:30富山駅着→7:30立山着→7:50ケーブル乗車→9:00室堂着→9:30室堂出発→12:20剱御前小屋→13:30剣沢野営場→16:10真砂沢ロッジ泊

31日(日):(曇り時々晴れ一時雨・雷のち晴れ)2:40起床→4:25出発→7:50八峰六峰Cフェース(剣稜会ルート)取り付き→11:15頂上→12:00下山開始→14:30登り返し→17:00下山開始→18:00、5・6のコル→20:00真砂沢ロッジ着

1日(月):(晴れのち大雨・雷)5:00起床→7:00出発→11:00熊の岩→14:00八峰七峰手前で撤退→14:45熊の岩で幕営

2日(火):(曇りのち大雨のち曇り)3:00起床→6:00出発→7:00六峰Dフェース(富山大ルート)取り付き→7:30撤退→9:00テント撤収し下山開始→10:45長次郎谷出合→14:00剣沢野営場で幕営

3日(水):(曇り)4:00起床→5:40出発→6:20剱御前小屋→8:25室堂→8:40トロリーバス乗車→9:50立山→電車を乗り継ぎ17:00帰神




今年は会員が忙しく合宿が出来ない。はっせー一人でもバリエーションの経験をしてもらうために二人での山行を計画した。 29日、大阪駅に集合。はっせーのザックは相変わらずデカい。装備分担は半々にしたから、きっと無駄なものが入っているか、パッキングの問題だろうと思う。

▲室堂出発
30日、富山駅についてビックリ、数日前に道が崩壊して立山まで電車で行けない。途中から代替えバスに乗り換えて立山へ。立山からケーブルとバスを乗り継ぎ室堂に到着。週末だから散策の観光客も多い。天気はあまり良くない。今日は真砂沢ロッジまでの予定だから何とかなるだろう。重い荷物に苦しみながら剱御前小屋へ。この頃から雨がポツポツ降り始める。雨具を身に着け出発。剣沢小屋からは下りだから時間はさほど掛からないだろうと思っていたが、雪渓の上部はボロボロで歩けない。一部雪渓の下をくぐるようにして岩場をトラバースする。そろそろ雪渓に降りられるだろうかと思うところからガスに覆われて何も見えない。おまけに本格的に雨が降ってきた。マズい。しばらく様子を見るが天候が回復しそうにないので「見えない雪渓を歩くのは危ないから、剣沢のテン場まで撤退しよう。」と提案するが、はっせーは戻る事を渋っている。この荷物を抱えて翌日熊の岩まで登る自信が無いと言う。しばらく雨の降る中、悩みながら待機する。少しするとガスが切れて雪渓が見えてきた。アイゼンの跡を追いかけて歩けば行けないことは無い。雪渓の状態が分からないのに見えないところを歩くのは不安だなぁ~と悩む。はっせーがしんどそうだし、進むしかないかと思い真砂沢ロッジへ向かう事にした。アイゼンの跡を追って歩くが、雨が降り続き、スプーンカットの雪渓に水が溜まっている。平蔵谷は雪渓がボロボロで登れそうにない。長次郎谷へ入るまでに高巻きルートが作られている。この時期にこんな状況は初めてだ。長次郎谷出合から真砂沢ロッジへ行くところも雪渓を歩けたはずだが、今回は全く歩けない。全身ずぶ濡れになり、緊張しながら何とか真砂沢ロッジに到着。オーナーの成司さんの顔を見てようやくホッとする。別の用で準備していた大きなテントの前室を使わせてもらい雨宿りした。今日ははっせーの野菜炒めとバンバンジーサラダとご飯。どれも2人前を用意しているので量が多い。おまけに野菜にモヤシが入っているので酸っぱい臭いがする。我慢して食べるが計4人前は多いので、残り半分は翌朝に回す事にした。

31日、八ツ峰の六峰Cフェースを登る予定。1本だけなので慌てることは無いが、午後から天気が崩れる予報なので早めに出発した。長次郎谷出合からは念の為にアイゼンを着ける。1・2峰間ルンゼのあたりから先行の5人パーティーが左の大岩を歩いている。我々はゆっくり雪渓を歩いていたが、この先は雪渓が切れて通れないと教えてもらう。岩の上から雪渓を見ると完全になくなり沢になっていた。

▲長次郎谷1・2峰間ルンゼ上部
そのまま源次郎側の岩は歩けないので八ツ峰側へ徒渉する。

▲長次郎谷雪渓1・2峰間ルンゼ上部の切れ目
雪渓がどこまで安定しているか分からないし、5・6のコルまで岩伝いに歩けるのでそのまま岩の上を歩く。

▲八ツ峰六峰までのガレ道
ガレて歩きにくいが、何とか取り付きに着く。雪渓は取り付き目の前にまだ残っている。ここは簡単なルートだし、私も最初の時にオールリードで登ったのではっせーにもオールリードで登るか確認する。やりますと言うのでルートのアドバイスをしながら登ってもらう。1ピッチ目の終了点は下から見えていたのでアドバイスした。2ピッチ目は40mとなっているが、20m付近で終了点を見つけたというので切る。間違ってるだろうなぁ~と思っていたら、やはり、全然違うところで切っていた。正解の終了点までちびサンボがリードする。

▲長次郎谷上部雪渓
3ピッチ目は特に迷う事も無く登れた。4ピッチ目、ここは核心のルート。間違いやすいのでルートを説明したが、やはり間違う。最後のナイフリッジの所をトラバースして下の終了点に取っていた。正解のルートを教えると、そっちをもう一度登り直したいと言う。「ええっ、次に来た時に登ったらええやん。」と言うが、目は正規のルートに戻っている。ロープが屈曲するのに邪魔くさいなぁ~と思いながらビレーし、最後の終了点まで登ってもらう。ここは晴れていたら絶景なのにガスってあまり見えない。

▲八ツ峰六峰Cフェースピーク
残念だ。天気が悪く、頂上からは全体像が見えない。何となくある踏み跡を頼りに歩くと、Cフェース取り付き側に降りる懸垂支点があった。「こんな所にこんな支点あったかなぁ~」と悩む。見慣れた下降路をはっせーが先に降りるが崩れて危ないと言う。おかしい。ここはノーロープで歩けるルートなのに、道が崩れてルートが変わってるんだろうか?もう一度、出発地点に戻って歩き直す。途中で違うルートに明瞭な踏み跡がある。周囲はガスっているのでいまいち位置関係が分からない。そこでしっかりした懸垂支点を見つける。こんなの記憶にないが、ルートは変わってるのかもしれないと思いながら懸垂をする。

▲六峰からの懸垂
ちょうど1ピッチで次の懸垂支点があった。こんなにいい支点が次々と出るなんて、やはりルートが変わってる??でも何かおかしいなぁ~と悩みながらもう1ピッチ懸垂する。あと1ピッチで降りられそうだと思うところで下を覗く。何となく景色が違う。ガスが少し切れて5峰と5・6のコルが見えた時にビックリした。完全に間違っている。ここは三の窓側に100mぐらい下がった地点に降りてしまう。雪渓があればそこを登り返せばいいが、とても登り返せない。はっせーも半分ぐらい懸垂してきているので途中からブッシュの方を覗きに行く。この時の自分の判断が甘かった。直ぐに登り返せばよかったのに、行けるならトラバースした方が早いかもしれないと思ってしまった。トラバースルートは岩伝いの、単なるハイマツの上だ。ここは不安定だが、先は何となくルートが繋がってそうで行けそうと言う。確保しながらはっせーの動きを見ていたが、とても簡単そうではない。おまけに雨が降り出し雷も鳴りだした。トラバースルートを見ると支点は全くないし、壁は立ってるし、どう見ても安全に歩ける感じじゃない。上に登るルートは無いか確認したが無いと言う。「やっぱり止めよ。危ないからあかん。」と撤退を指示する。このトラバースルートを抜けたところで、まだまだトラバースしないと戻れないはずだ。しっかりした支点がある訳じゃない。天気も良くないので素直に登り返した方が安全だ。そう判断したのでハイマツ帯を戻り懸垂支点へ。岩が濡れているので非常に怖いが、ロープ確保して何とか2ピッチ登り返す。歩きの道に戻ったところで、もう一度最初の場所へ戻る。少しガスが切れていたので上から覗くと、ここで下降ルートは合っていた。はっせーは先ほどからひどく疲れてるように見える。ふらふらしているし、今まで以上に動きが鈍い。歩けるか確認すると、大丈夫だと言う。「頑張って明るいうちに岩場を降りたら何とかなるから!」と励ます。ちびサンボが先に下降して分かった。はっせーがルートが崩れて危ないと言っていた所を左(長次郎側)へトラバース気味に行くと降りるルートがあった。「この岩覚えてる!」その先も見覚えのある懸垂支点を見つけて一安心。5・6のコルに着いたのが18時。真砂沢ロッジに戻るなら明るいうちに沢を渡って長次郎谷の下部雪渓まで行きたい。はっせーは歩けると言うので真砂沢ロッジへ戻る事にした。まだ、ヘッドランプの明かりは必要ない。走るようにして長次郎谷を降り、徒渉し、長次郎谷下部の雪渓へ入る所でようやくホッとする。後は暗くなっても歩ける。それでも早く帰りたかったので急ぎ、何とか20時に真砂沢ロッジに到着。よく頑張りました。今晩もはっせーの用意した晩御飯。餃子スープとサラダとご飯。はっせーはもともとあまり食べないのに、どれもまた2人前ずつ準備してるので4人前。おまけにサラダはモヤシ入りのパックですでに腐っている。食べる気がしない。今日は精神的に疲れた。次の日は熊の岩までの荷揚げと上部雪渓の偵察にしようと決めてゆっくり休む。夜中に外に出ると満天の星だった。

1日5時起床。非常にいい天気だ。7時に真砂沢ロッジを出発。

▲真砂沢ロッジより
長次郎谷出合で富山県警のヘリが低いところをホバリングしている。我々の姿を睨むようにして上がっていく。カメラを構えていたので雪渓の状態を撮影しているんだろう。昼前に熊の岩に到着し、休憩。はっせーは折角だから三の窓まで登っておきたいと希望する。翌日のチンネの事を考えるとその方が早いが、午後になると天気は崩れるし、雪渓の状態もよく分からないのに全荷物を背負っていくのはしんどいなぁ~と思いながら、まあ、行ける所まで行こうと覚悟して登る。7峰手前辺りで雪渓が切れている。そして今にも雨が降りそうな天気になってきた。ここで幕営出来たらと思ったが、テントを張るようなスペースはない。熊の岩まで戻ろうと決める。あっという間にガスって何にも見えなくなった。熊の岩ではテント設営後に雨が降り出した。昨日までのパターンなら18時頃には雨が上がって晴れ間が見えるはず。しかし、雨は降り止まず、だんだんひどくなってくる。外で食べたかったが諦めてテントの中で夕食にする。全く止む気配が無いので諦めて寝るが、雨は夜中の12時過ぎまで降っている。これではチンネは無理だ、午前中だけならDフェースぐらいだけど、晴れないと無理だ、明日以降も天気は良くないし、下山しようか、など考えながらあまり眠れなかった。

▲貸し切りの熊の岩
2日、曇っていて晴れ間は見えない。明らかに昨日より天気が悪い。今後天候が良くなる感じはないから諦めてさっさと下山して違うところへ行くのも一つの方法だと提案するが、富山大ルートは登りたいと言う。熊の岩から見てもどんよりと暗いDフェース。こんなの楽しくないし危ないと思うが、はっせーは取付きを見て判断したいという事なので行く事にした。取付きは元々暗く湿った感じだが、今日は一段と悪い。はっせーは濡れていないところを見つけながら登れそうだというが、私は拒否した。大雨の後の濡れた岩場で、数時間後にはまた雨が降る状況で、スピーディーに安定して登る自信が無かった。もし万が一何かあっても、二人っきりのこの岩場では対応が難しいという不安が強かった。そして何より、景色は全く見えないし快適でない。何にも楽しい事はないのだ。今回の天候は後2日粘っても良くならない。諦めて下山しようと決めた。昨日の大雨で徒渉は大丈夫だろうかと不安はあるが、待っていても天候は回復しない。徒渉ルートはやはり増水している。渡れない事も無いが、重荷なので慎重になる。念の為に岩を何個か放り込んで足場を確保し徒渉した。無事に長次郎谷出合まで下る。ここからは恐怖の剣沢雪渓に入る。

▲剣沢雪渓
歩きながら、来るときに歩いたルートがシュルンドの横だった事に気が付く。かなりの高巻きが続くのに、我々は早い段階から雪渓を歩いていた。

▲源次郎尾根と平蔵谷雪渓
やはり、ガスって見えないのにアイゼンの跡を追って歩くのは危険な事だったのだ。剣沢小屋に着くころから雨が降りそうな天気になる。剣沢の雪渓情報を見ていると県警の人から声を掛けられたので、歩いてきた雪渓の状況を説明した。県警の人も今年の雪渓の状況に気をもんでいる。ご苦労様です。剣沢でテントを張る間に雨が降り出す。今日も外で食べる事は出来ない。19時頃には雨が上がった。残った酒は荷物になるので飲み干して就寝する。

▲剣沢にて
3日、相変わらず天気は悪い。剱御前小屋からの下りになってはっせーが元気になった。予定のケーブルより早く乗れそうなので降りる事にした。立山で温泉に入って、スッキリして帰る。すったもんだあったが、何とか無事に帰神できて良かった。

次回はもっと良い条件で、景色を楽しみながら登りましょう。

メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

宝剣岳で雪上トレーニング (近日追加予定)

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