宝剣岳で雪上トレーニング (報告/ココノール)



■日 程 : 2016年4月22日(金)午後~24日(日)

■場 所 : 中央アルプス・宝剣岳

■目 的 : ヒマラヤ登山のトレーニング

■参加者 :

ココノール
(リーダー)

M本(明石山の会)

G藤(北摂山の会)

N村(明石山の会)

K尻(垂水労山)
■行動記録

22日 14時:尼崎駅発~19時:駒ヶ岳SA(仮眠)

23日 6時:SA発~7時15分:バス発~8時50分:千畳敷駅発~10時:宝剣小屋付近で幕営~トレーニング~19時30分就寝

24日 4時:起床~6時20分発で木曽駒ヶ岳往復~7時50分:トレーニング~9時30分:宝剣岳往復~13時:千畳敷駅着





▲アンザイレン
夏のヒマラヤ登山をめざすトレーニングは今回の宝剣岳で8割ほど終了である。これまで六甲山や大山で行なってきたレスキューなどのトレーニングの仕上げである。菅の台始発のバスとロープウェイを乗り継いで千畳敷に着き、ここで計画書を提出し外に出る。天気は良く千畳敷カールや宝剣などは一望できる。アイゼンを装着して冬のルートを歩き出す。二十人余りの登山者が上に向けて歩いている。すぐに暑くなり衣服を調整する。夏道付近にトレースがありそこを歩いている人もいる。夏道は尾根と急斜面に近いので積雪期は通らないのが原則である。雪崩の危険だけではない。この時期の雪面は冬よりも強く締まっている。気温が上昇して落石が発生すると夏の雪渓のように転がる速度が増す。現に下山時には大きな岩が二つ転がっていた。雪上の落石は音をほとんどたてずに迫ってくるのが怖い。

上に着いてテントを設営して中に入り行動食をとる。その後はロープを結んで歩くアンザイレンを行なう。氷河のクレバスに転落したことを想定して落ちる役は走り出しパートナーにテンションをかける。テンションがかかると同時に滑落停止の要領でピッケルを使って引きずり込まれるのを止める。これを歩き回りながら何度か繰り返した。


次に転落したパートナーを引き上げる三分の一システムである。スノーバーで支点を作りセルフビレイをとったうえでマイクロトラクション、アッセンダー、プーリーで三分の一を設定する。斜度60度以上の雪壁にぶら下がったパートナーを引き上げる。

▲転落者を止めて引き上げ
そうすると転落者がぶら下がっている壁と引き上げる者がいる上の雪面との境目にあるエッジ部分にロープが食い込む。そのため引き上げられなくなる。氷なら食い込まないが雪だと食い込む。(反面では食い込むと転落者が落ちた時に摩擦で止まりやすいのだが引き揚げ時は障害になる)。そこでエッジ部分のロープの下にピッケルのシャフトを差し込んで置くとあまり食い込まずに引き上げられるようになる。その違いを体験してみる。また、引き上げるときにアッセンダーとマイクロトラクションの歯に雪が咬んでロープがすべるようになる。これは危険だ。この対策としてはアッセンダーが移動する範囲にツエルトなどを敷くことで解決することにした。


▲転落者は向こうの斜面にいて見えないがロープが雪に食い込んで引き上げられない

▲引き揚げ時にロープが雪面
と壁のエッジに食い込む
これらの作業を一人で行うのは困難であることがやってみるとわかる。本番では二人だけで行動することはまずないので、転落するパートナーを止めたら近くにいる仲間を呼び役割分担を決めて作業することになる。転落したときの状況にもよるが引き上げに長時間かかると転落者が死亡する事例が少なくないので落ち着いて確実に、失敗しないように引き上げることを意思統一する。雪崩埋没者の救助に準じた意識が必要であろう。

道具としてマイクロトラクションは便利である。これがあるのとないのとでは大違いだ。そしてアッセンダーはユマールなどのばね式のものを使用する。タイブロックの使用は厳禁である。タイブロックは重力により自重で歯がロープに食い込む。それゆえ垂壁ならあまり問題ないが雪上に横たわるとあまり食い込まずロープが滑ることがあり危険である。


これで初日のトレーニングは終わりテントに引き上げて食事の準備をする。夕食は鍋であったが水を作るのに時間がかかり、その間に反省会をしたのだがビールを飲むのが食事する直前になってしまった。ビールで腹がふくれて鍋の材料を食べると主食のアルファ米があまり食べられなくなってしまった。ヒマラヤのよもやま話をしてから寝た。夜中に雪が降り2~3cm積もった。気温は高く寒いことはない。


▲宝剣岳頂上
テントを撤収して全装備を担いで木曽駒ヶ岳を往復する。ささやかなアイゼン・ボッカトレーニングである。木曽駒ヶ岳からもどってきてフィックス・ロープ通過のトレーニングを小屋横で行う。中間支点でのアッセンダーのかけかえである。その後宝剣岳に向かう。ほぼ夏道沿いに行き杭にビレイ支点をとって私がロープをフィックスして登っていく。頂上では反対方向から来た登山者でにぎわう。ガイドによるパーティが目立った。1パーティのみ壁を登ってきた。頂上からの展望はよい。今年の雪の少なさにあらためて驚く。縦走路の積雪は部分的である。下りるころには鎖場で混雑する。待ち時間はあったが順調に小屋まで下りた。


メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

初級クライミング雪彦山 剱岳バリエーション山行

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