明星山フリースピリッツ (報告/ちびサンボ)



■日 程 : 2016年10月29日(土)~11月1日(火)

■山 域 : 明星山 P6南壁

■目 的 : フリーマルチピッチクライミング

■参加者 :(兵庫労山救助隊有志)

ちびサンボ

F上(甲山)
(リーダー)

N原(神戸)

O石(神戸)
■行動記録

10月29日(土)曇りのち雨 : N原車で、7:00ちびサンボ自宅→7:30 O石自宅→8:00西宮今津駅でF上さんと合 流し、阪神高速今津から出発→11:30北陸自動車道、尼御前で昼食→13:50糸魚川→ヒスイ峡キャンプ場でテント泊→22:00就寝

30日(日)曇りのち晴れ : 5:00起床→7:00展望台から取り付きへ→8:10撤退決定→むかご取り、小谷温泉、買い 物→16:30夕食→21:00就寝

31日(月)晴れ : 5:00起床→7:42 F上-ちびサンボパーティースタート→10:40中央バンド、休憩→12:40登攀終 了→13:00下降開始→13:30 N原-O石パーティーと合流し下山開始→14:45展望台到着→15:50キャンプ場    撤収→親不知交流センター(まるたん坊泊)

11月1日(火) 7:30朝食→出発→松任海浜温泉、昼食→徳光IC→西宮→18:00帰宅




明星山のフリースピリッツは3年ほど前から登ってみたいと思っていたルートだった。昨年も今回のメンバーで計画はあったが、具体的な事が決まらず行けなかった。今年は何が何でも登りたかったので、夏休み休暇を残し、予備日を設定してトライする事にした。ギリギリまで天候が不安定で代替え案も出ていたが、30日だけ晴れそうなのでその日に賭けて出発した。

29日:前半の天気が良ければ28日夜から出発したが、前半が悪いので土曜日朝からの出発にした。糸魚川のマックスバリューで2泊分の買い物をしてキャンプ場へ向かう。展望台から初めて明星山を見る。デカい!そして壁が真っ黒だ。

▲雨で黒光りしている明星岩
O石さんは白い岩壁というイメージしかないのに、こんな真っ黒なん初めて見たと言う。雨に濡れて黒光りしている。明日、本当に乾いて登れるんだろうかと不安になった。展望台では関東の救助隊メンバーと偶然一緒になった。彼らはO石さん達と同じ左フェースを登る予定らしい。左フェースチームは沢が増水して渡渉が出来るかどうかが問題だ。上から見た感じでは全く渡渉出来そうに無かった。キャンプ場は広くて炊事場も整っていて快適だった。炊事場は貸し切りだったので、炊事場にテーブルを置いて、薪を焚きながら夕食を摂った。雨は22時頃まで降っていた。

30日:期待と不安な気持ちで出発。1パーティー既に左岩壁へ向かっている。渡渉できるんかなぁ~。展望台から壁を見るが、岩は半分以上乾いて無くて、核心の3~5ピッチ目辺りがびっしょり濡れている。

▲まだ乾いていない岩壁
取りあえず、取り付きへ向かう。アプローチもドロドロで悪いし、沢沿いに降りてから砂地に足を突っ込んだら足首まで泥に浸かってしまった。最悪だ。南壁に渡る所は岩にフィックスロープが張られているが、いつ切れてもおかしくない古いロープと7㎜程度の細いロープだ。F上さんが先頭で渡る。先行には既に準備しているパーティーが居た。彼らはJADEを登りに来たらしい。O石さんとN原さんは左フェースなのでここからの取り付きではないが、どうにか渡渉出来ないか探りに来た。ダメなら一緒にフリースピリッツを登ろうと話していたが、沢を渡ってこない。「やっぱり登らない。上で待ってるから登ってきて。」と言われる。正直、私もこの岩の状態で登れる気がしない。F上さんのモチベーションも一気に下がったようだ。F上さんは、ここがダメなら違う岩場にでも行こうかと考えていたようだが「今日1日晴れて岩が乾いたら、明日は午前中曇りだから登れると思う。明日に賭けませんか。」と提案する。その為に予備日を設定したんだから、賭けてみるのもいいかと思った。そして、本日の撤退を決定した。JADEの1パーティーも1ピッチトライしていたが懸垂で降りてきた。やはり今日は無理だ。キャンプ場へ戻って、汚れた靴や靴下、ズボンを洗って干した。キャンプ場内を散策して、むかごを取った。小谷温泉の山田旅館がいい所だとF上さんが言うので行く事にする。

▲山田旅館
老舗の、しっとりとするいいお湯だった。途中で天気予報を確認すると、明日は1日晴れマークに好転している。やったー!登れる!!明日は遅くなるかもしれない、登攀終了後テントでなく宿に泊まろうという事になった。日本海を眺めながらドライブし、親不知の魚尽くし料理の宿を見つけた。

▲親不知の海岸
「うちは魚しかありませんよ。」と、最高じゃないか。予約してキャンプ場へ戻った。夜は採取したむかごを使ってアテを作り食べた。明日に備えて少し早めに就寝した。

31日:月曜日だし貸し切りかと思いきや、フリースピリッツには1パーティー出発していた。昨日のJADEの彼らも来ていた。一度帰りかけたが、今日の天気が良くなってるのを見て昨晩引き返してきたそうだ。皆同じ思いなんだ。

▲展望台より
昨日1日晴れていたので沢の水量は少し減っていたが、左フェースに取付けるほどには減っていない。N原-O石パーティーも一緒にフリースピリッツを登る事になった。

我々は基本、つるべで登ろうと決めた。新盤、日本の岩場(上)のトポを参考に登る。

1ピッチ目(F上):ドロドロの草付で良くない。ほとんど支点を取る所も無く、ランナウトしながら小垂壁手前35mぐらいでピッチを切る。

2ピッチ目(ちびサンボ):シューズの泥が取れず足が決まらない。カムをクラックに使って恐々登った。

3ピッチ目(F上):フレークの所はちょっと濡れているし、少し被っている。ここも足が決まらず滑りそうで怖かった。F上さんに言うと「そんな被ったとこなんかあった?」ニコニコ笑いながら答える。余裕だ。

4ピッチ目(ちびサンボ):少し右上しトラバース後右上だが、トラバースのスラブが濡れている。最悪だ。足を置きたいところは濡れているし、乾いたところには足が届かない。決死の覚悟でブッシュを掴んでトラバースした。先行パーティーのリードがまだ登っているが、同じ場所に支点を取らせてもらった。

▲4ピッチ目終了点
5ピッチ目(F上):先行パーティーの後を追いかけるようにしてF上さんが登る。チムニーへ渡る所で時間が掛かっているのでセルフを取って待つ事にした。トポではウメボシ岩手前でピッチを切っているが、先行パーティーも先まで伸ばしているので、F上さんも5・6ピッチをつなげて登った。

▲5ピッチ目、先行パーティー待ち
チムニーへ入る所は微妙なスタンスで怖かった。また、ダブルロープの1本がフリー状態になっていたので緊張した。ウメボシ岩を越えた右下へのトラバースは足が全く届かず足ブラ状態になる。残置のスリングを持っても下に足が届かない。「怖い、届かない、無理。」と連呼する。F上さんは大丈夫やと笑っているが、私は腕に力を入れ過ぎてパンプしそうだった。岩に必死にしがみ付きながら、ジワジワとトラバースしてスラブに足を置いた時には半泣きでフラフラだった。

6ピッチ目(ちびサンボ):F上さんがしんどかったらリードしよかと言ってくれたが、つるべで登ると決めていたので頑張る事にした。垂壁からカンテを越えるが、ガバっぽい岩は微妙に動くし、岩がしっとりとして滑りそうで緊張した。

7ピッチ目(F上):凹角の岩場は今にも崩れそうな感じだ。スタンスになる岩も動いていた。落石に注意しながら登った。

8ピッチ目(ちびサンボ):先行パーティーは崩れそうなハング帯の右側を登って行ったからそこを登るように勧められる。しかし、トポでは左に回り込んで見えないクラックを登るようになっている。もう一度、二人でトポを確認する。最新のトポだから変わってはいないはず。自分の正しいと思う、左に回り込むルートを選択した。クラックにカムを掛けて登ると中央バンド手前に出た。こっちを選択して正解だ!

▲上部岩壁
9ピッチ目(F上):中央バンドのガレ場を抜けて一段上のテラスまで。この中央バンドでビバークする人もいるらしいが、ガレガレで安定していないし、落石も避けられない。ひどい場所だと思った。
10ピッチ目(ちびサンボ):右上ランペはどこからでも登れそうでルートファインディングが難しい。出来るだけ簡単と思える所を選んで登った。ロープ40mとなっているのに、ギリギリまでロープが出ているのでF上さんは行きすぎてるんじゃないかと心配したようだ。ちゃんと、JADEと重なるステンレスのハンガーボルトが付いた終了点を見つけたのだ。
11ピッチ目(F上):カンテ右の垂壁から右上となっているが、途中にステンレスのいい支点があるし、左方向にも支点があったので、そちらでピッチを切っていた。上部岩壁は何ルートか交錯するのでややこしい。

12ピッチ目(ちびサンボ):パノラマトラバースと呼ばれるバンドのトラバース。

▲景色は最高
壁から飛び出すため高度感があり緊張する。何より、ホールドもスタンスも動く岩が多く、落石しないようにトラバースする事に神経を使った。

13ピッチ目(F上):垂壁から凹角を登る。F上さんは口笛を吹きながら余裕で登っていくが、垂壁はホールドやスタンスが細かくて緊張した。

登攀終了して、ここからはコンテで左の大岩の基部へ向かう。腰を下ろせるところでロープを解き、靴を履き替え休憩した。N原-O石ペアは中央バンドからエスケープして左岩稜の終了点へ出ている。

▲マルチピッチ終了後、大岩のテラス
そこまで下降して、一緒に下山した。下山ルートは険しく、分かりにくい樹林帯だ。降りる所には古いフィックスロープが張ってあるが、トラバースするところは目印が無いので間違って岩壁の上に出る事もあるらしい。N原さんの的確なルートファインディングで何とか小滝川に出るが、降りた頃にはフラフラになった。水量が少ない時は飛び石で渡るらしいが、泳ぐことも難しいほどの水量だ。渡渉は出来ないので水道管の橋の上を歩いて渡った。

展望台から見ると、JADEを登っているパーティーはへの字ハングの右下辺りに居た。この時間から完登は厳しいだろう。帰りに見ると懸垂していた。なかなか厳しいルートだ。

▲明星山は大きかった
今宵の宿は魚尽くしでベニズワイガニも付いていた。糸魚川産の米も美味しい。満腹になって就寝した。

1日:北陸まで来ているので帰りに温泉に寄りながら帰ろうという事になった。ちょうど、北陸自動車道が事故で途中降ろされるので、その中間にある松任海浜温泉に入って休憩し帰った。

明星山フリースピリッツは本当に大きい岩壁だった。岩は思った以上に脆くて崩れそうな岩が積み重なっているだけだ。あらゆる岩が動くので油断ならない。人が動いたりロープが擦れるだけで小岩が転がってくる。正直快適では無かった。石灰岩はもともと得意ではないが、泥が付いたり、少しでも濡れていると止まる気がしなくて緊張した。F上さんとは宮崎の比叡山以来、5年ぶりにパートナーを組むことになった。F上さんは常にニコニコ、時には口笛を吹いて余裕だ。私の緊張を解こうとしてくれていたそうだが、技量の違いのせいは明らかだ。とにかくスピーディーで登るのも何でも早い。先行パーティー待ちもありながら、5時間で登れたのはF上さんのお蔭だ。大雨の影響で左フェースのパーティーは取り付く事も出来なくて残念だったが、予備日を設定した事でトライすることが出来て私は満足している。温泉や日本海岸線のドライブを楽しむことが出来て、いい休日でした。皆さま、ありがとございました。また、お願いします!

メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

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