明神岳南西稜から明神岳登頂 (報告/ちびサンボ)



■日 程 : 2015年12月28日(月)夜~2016年1月1日(金)

■目 的 : 厳冬期、穂高岳山系縦走

■参加者 :

ちびサンボ
(リーダー)

○石(神戸労山)
■行動日程

28日(月):22:10梅田発松本行き夜行バス乗車

29日(火):(晴れ)5:30松本バスターミナル着→8:35高山線のバスで中の湯→10:10釜トンネル出発→11:40上高地で休憩→岳沢登山路7番標識前→15:50約2000m地点で幕営→20:30就寝

30日(水):(晴れ)3:30起床→11:45V峰手前台地で休憩→12:30出発→13:10V峰ピークに到着→13:30荷物をデポして偵察→15:00V峰手前台地に戻り幕営→19:45就寝

31日(木):(曇りのち雪)3:30起床→6:45出発→9:30II峰ピーク→10:30明神岳主峰→11:00II峰登り返し→12:00II峰ピーク→12:35下山開始→14:25幕営地→20:30就寝

1月1日(金):(雪のち晴れ)3:30起床→6:45出発→10:00トラロープ地帯脱出、休憩→11:00岳沢登山路7番標識前、休憩→12:00河童橋→上高地で休憩、12:38出発→13:55釜トンネル出口→14:55松本行きバスに乗車→松本で一泊

2日(土):7:10松本から大阪行き高速バスに乗車→12:30大阪着→帰神




計画は明神岳南西稜から前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳西尾根を縦走する予定だった。年末年始は好天が続くことは少なく、自分達の日程も決まっているので、条件が良ければ出来る最大限の計画をした。

28日:計画時には夜行バスが取れなかったが、4日前に空きが出て取れたので、月曜日の仕事終わりに出発する事にした。夜行バスは3列シートでゆっくり眠れた。

29日:松本から中の湯行きのバス発車まで3時間ある。朝ごはんを食べ、パッキングし直して時間をつぶす。温泉町を回るバスだからか朝一にもかかわらず満席だった。釜トンネル前は少し賑わっている。県警と遭対が計画書の確認をしている。明神岳は誰も入ってないから、無理しないように気を付けてとアドバイスをもらう。ヘッドランプを準備して釜トンネルを抜ける。昨年より明らかに雪は少ない。大正池も凍っていない。上高地で少し休憩して岳沢登山路へ向かう。下を向いて歩いてたからか岳沢へ入るルートを間違い少し戻る。岳沢登山路7番標識前にはテントが二張りあったが、中に人は居なかった。我々は登れるところまで登って幕営する事にした。思った以上の急登にゲンナリする。16時頃をメドに登り、2000m付近の適当な所で幕営する事にした。今晩はきりたんぽ鍋。時々雪がチラつくが天気は良さそう。

30日:朝は昨日の残りの出汁を使って雑炊。明るくなる少し前を目指して行動する。最初は少しトレースがあったが直ぐになくなり、新雪のラッセルに足を取られる。また、写真で見た事のあるトラロープの急登では、ザックが重く体が振られそうになるし、岩と中途半端に出たブッシュにアイゼンが引っ掛かり非常に登りにくい。何かと時間が掛かり、昼前にV峰手前台地に到着。ゆっくり休憩してV峰へ向かうが、IV峰へのトラバースルートが分からない。それらしいルートを探して登るとピッケルが見えた。V峰頂上に着いてしまったのだ。そこからIV峰へ行く下降路を探すが見当たらない。トレースはないが、岩伝いに行けばIV峰へ行けそうなルートを見つける。ただ、ガレ場を降りないといけないので、重いザックは置いて偵察に向かう。何とかこのルートから行けそうだと判断するが、ここから次の幕営地はI・II峰間のコルしかない。そこまでは時間的に厳しいので、本日はこのV峰手前台地に幕営する事にした。

▲明神岳概念図
今後の行動について○石さんと相談する。天気は1日から風が強くなり、2日午後からは大荒れになりそう。今のスピードでは悪天になる前に下山出来ない可能性が高い。せめて前穂高岳までの往復をしたいと考えたが、次は奥明神沢のコルか前穂のピークで幕営する事になる。そうなると、全装備を担いで明神岳II峰の登り返しをしないといけない。かなりの困難が予測される。これらの事から、空荷で行ける所まで行って戻ってくる計画に変更した。今晩は鶏鍋で体を温めて眠る。

31日:早めに出発したかったが、朝から周囲はガスで覆われ何にも見えない。また非常に寒く指が痛くて辛い。少し明るくなるのを待って出発する。ルートはよく分からないが、何となくこんな感じだろうと想像しながら、雪庇とハイマツ・岩稜のきわを目指して登る。

▲明神岳III峰から主峰
III峰は岩を巻くとなっているがどこまで巻けばいいのか分からない。適当なところからルンゼを登りピークに出る。ピークから降りる岩場は急で怖いので、雪面のトラバースルートへ下降してII峰へ向かう。途中から雪がチラチラと降り始め、視界が悪くなってきた。II峰のピークには残置ロープがたくさんぶら下がっていた。下を覗いて見るが、登り返しが出来るのかどうかよく分からない。目の前に主峰は見えているが、○石さんは躊躇している。私が1ピッチ降りて様子を見て、登り返し出来そうなら○石さんも降りるという事になり、とりあえず50mロープをフィックスにして降ろした。降りながら見るとクラックが走っており、足掛かりはありそうなので登り返し出来そうだと伝える。○石さんも1ピッチ降りて見て、一緒にルートの確認をした。正面は少しハングして難しそうだが、左のルートにカムを使えば登り返し出来るんじゃないかと判断した。2ピッチ目を降りる時に逆から登ってくる人に出会う。我々はそのまま2ピッチ懸垂で降りて、主峰を登る。

▲明神岳主峰
ピークで景色は無かったが写真だけ撮った。時間的にはもう少し先に行けそうだが、天気が良くないし、II峰の登り返しに時間が掛かるかもしれないのでそのまま戻る事にする。II峰の下部はちびサンボが登り返し、○石さんを引き上げる事にした。最初の出だしがスラブで足掛かりが無く、何度かテンションする。ダブルロープなので非常に良く伸びてなかなか体が上がらない。苦労しながらも何とか登り、○石さんを引き上げた。上部の岩壁では先ほどのパーティーがリードで登るのに苦労している。我々が残しているフィックスロープを使っていいですよと声を掛ける。彼らは涸沢岳西尾根から奥穂、前穂を縦走してきたそうだ。ちょうど我々と逆コースを登ってきた。リードで登っている男性は「これ、登り返すのも相当難しいよ」と我々に声を掛ける。「登れなかったら、引き上げて下さい」と一応、お願いをしておく。

▲II峰の登り返し
○石さんがフィックスロープを使って登りかえすが非常に難しい。バイルは利かないし、カムもなかなか決まらない。先ほどのパーティーのセカンドは荷物を背負って登るのは困難と判断して荷揚げした。荷揚げも岩にザックが引っ掛かり、スムーズには引き上げられていなかったので、○石さんが補助した。荷揚げの間に空いたヌンチャクを使わせてもらい、残置のトラロープを使い、我々のフィックスロープとマイクロトラクションを駆使して何とか登り返した。○石さんのど根性は凄い!ちびサンボは引き上げてもらったが、それでもそうとう力を使ったし難しかった。この登り返しの間にどんどん雪が降り出し、周囲は一気に真っ白になる。早々に片付けるが、行きのトレースは消えてしまい、時々ホワイトアウトになり、何だか危険な感じになってきた。行きは完全に岩場だった所も雪が覆い雰囲気が変わる。緊張したが、時間はあるのでゆっくり安全に戻る事を心掛け、何とか幕営地へ到着。今晩は大みそか。餃子スープ鍋の後、ラジオで紅白を少し聴き、年越しそばを食べて今年の締めくくりをする。雪はずーと降り続いているのがちょっと不安だが、明日は天気が良くなると信じて眠る。その前に、下山して直ぐに帰るのももったいないので、スマホで松本に宿を取り、温泉に入って帰る計画をした。

1月1日:雪はまだ降り続いている。テントも1/3ぐらい埋まってしまった。下山路が分かるのだろうかと心配になるが、雑煮と出汁巻きと昆布巻きを食べて正月気分を味わう。風は強くないし寒くはないが、一向に天気の良くなる気配が無い。天気が回復するまで待てないし、待ったところでトレースは無いので片づけて出発する。ここで初めてワカンを着けるが、しばらく歩くと傾斜が急になり岩が出てくるので、ワカンでの下降はちょっと怖い。アイゼンで降りる事にする。時々晴れ間が出て山容は見えるが、ほとんど真っ白で下降路は分からない。しばし立ち止まり読図する。岩伝いに降りようとしたが、岩が動いて怖い。ブッシュを狙って降りるルートを○石さんが行ってみる。何とか行けそうなのでそちらで降りると、登って来た時に見た黄色のテープを見つける。登る時にどっちにルートを取ろうかと迷った場所だと気が付く

▲下山時はすっかり雪景色
ようやく少しホッとした。ここで真っ白なライチョウに出会い、心が和む。ここから痩せ尾根を歩くことになる。行きは岩が見えていたが、綺麗に雪が被っているので非常に怖い。何とか懸垂の支点を見つけて3回ほど懸垂を繰り返してトラロープ帯を抜ける。もう少し下がって安定した所でようやく休憩。精神的にしんどかった。後はひたすら釜トンネルを目指す。中の湯から14:05のバスに乗る予定だったが、足は痛いし疲れている。次のバスでいいだろうと上高地で休憩したが、微妙に間に合いそうな時間になったので早歩きしたら間に合う時間に到着した。バス乗り場に行くと14:05ではなく、14:15予定だった。片づけをしながら待つが時間になってもバスが来ない。どう考えてもおかしい。もう一度バスの時刻表を確認すると、1月1日だけ14:15のバスが無かった。次のバスまで30分近くある。バス停はちょうど風が吹き抜け寒いので、釜トンネル前に戻り暖を取る。何とかバスに乗って松本へ帰り、前日に予約していた宿で温泉に入り、地元の料理を堪能し、今回の山行を終了した。

▲ライチョウ
○石さんと二人で山行するのは初めてだし、明神岳は無雪期すら登った事が無い。不安も大きいので毎日のように連絡を取り合い、ミーティングやトレーニングを重ねてきた。今まではバリエーションと言いながら、何パーティーも入るメジャーなルートしか登っていなかった。今回、同ルートを登る人は誰も居ず、トレースは無く、合っているのか間違っているのか正直分からない。時々ホワイトアウトになりルートに迷い、読図を一緒にして確認しあった。垂壁に近い岩稜の登り返し、痩せ尾根雪稜の懸垂、天候判断、行動判断、二人が最大限の知識と技術を出し合えた山行になったと思う。リーダーとして反省点は山ほどあります。私の考えの甘さで○石さんには大変辛い思いをさせたと思います。○石さんと最後に意見が一致したのは、決して楽しい山行では無かったが、良くも悪くも色々あって面白い山行だったという事です。また、面白い山行をしていきたいと思います。 !

メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

キリマンジャロ 日和佐フリークライミング

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