アイガーミッテルレギ稜登頂&ブライトホルン登頂 (報告/ちびサンボ)


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■日 程 : 2015年8月7日(金)夜~19日(水)

■山 域 : スイス

■参加者 :


N嶋(大阪アルデ)

玉ちゃん(大阪アルデ)

ベタコ(山歩渓山岳会)

ちびサンボ
■行動日程

7日~8日:18:20三宮~関空行リムジンバス乗車→関空で4人集合→22:30トルコ航空にてイスタンブール(12時間フライト)→現地時間9:50発チューリッヒへ→11:00チューリッヒ着→12:40グリンデルワルトへ→16:00グリンデルワルト着→アイガーブリックホテル泊

9日:(休養)朝食後アパートへ移動→買い物・ハイキング等

10日:5:40起床→登山列車でアイスメーア駅→9:10登山開始→12:10ミッテルレギ小屋着→18:00夕食→21:00就寝

11日:(アタック)4:50朝食→5:40出発→12:10アイガー頂上→13:00頂上出発→20:30氷河→22:00メンヒヨッホ小屋着→23:00就寝

12日:(下山)9:00登山鉄道ユングフラウヨッホ駅→クライネシャイデック駅→グリンデルワルト駅→パラグラ    イダー体験等 13日:(予備)バスに乗りブスアルプ(1800m)から10:20スタート→13:00ファウルフォル(2680m)→バッハアルプゼー→14:00フィルスト(2170m)→ロープウェイで下山

14日:(移動)ツェルマットへ移動

15日:(アタック)10:30出発→ロープウェイに乗りシュヴァルツゼー11:45→12:50ヘルンリ小屋→積雪・悪天  のためアタック断念→下山

16日:(休養)

17日:(予備)7:30ロープウェイを乗り継ぎマッターホルン・グレッシャーパラダイスへ→9:30ブライトホルン登山開始→12:45ブライトホルン登頂→下山

18日~19日:11:37ツェルマット発→チューリッヒ→19:00チューリッヒ発→22:00イスタンブール→日本時  間18:00関空着→21:00帰神




初めての海外登山、初めて富士山より高い山に登る、英語力無し。不安だらけの山行の始まり。

7日

仕事は早退出来ないので、朝から全荷物を持って職場へ。運良く、友人が車で送ってくれると言うので甘えさせてもらう。仕事は結構忙しくて定時で終われるかドキドキ。何とか終わらせて三宮からのリムジンバスで関空へ。東京からのベタコさんも飛行機で関空へ来て4人集合する。ビールを飲んでフライト待ち。22:30定刻通りに出発する。

8日

日本と8時間時差のあるスイスまでイスタンブールで乗り換えするが、3時間の待ち時間。スイスフランはスイスでしか使えないので、カードで買い物して軽食を取る。イスタンブールから3時間のフライトでチューリッヒへ。チューリッヒでグリンデルワルトへ向かう電車のチケットを買うが、日本で申し込んでいた15000円する半額チケットを使い、2等車で42CHF(5500円)。この半額チケットはスイス内の電車・バス全てに使えるので今回の旅行でかなり活躍した。3時間ほど乗るのでビールとおつまみを買って乗り込む。大きい荷物が邪魔になり置き場所に困っていると、優しいご婦人が、座席の下や後ろに置けると教えてくれた。何とか身を落ち着かせて出発。グリンデルワルト駅は改札も無くオープンだ。

▲グリンデルワルト
出てすぐ右側にアイガー全容が見える。本日泊まるホテルだけ取っているので、明日から泊まるアパートを予約しに観光案内へ。ミッテルレギ小屋の予約はガイドオフィスに行かないと駄目らしい。駅前のガイドオフィスでミッテルレギ小屋の予約を取る。天候は午前晴れ、午後から崩れる天気がずっと続いていると。取りあえず予定通り11日頂上アタック予定で計画する。アパートは天候不良でミッテルレギ小屋に2泊した場合を考えて5泊6日で予約した。一人196CHF(約26000円)。最低限の予約は出来たので本日の宿泊地へ向かう。これが意外と遠くて汗だくになった。ロビーでホテルの方に頂いた水は最高に美味しかった。ホテルの料理や酒は高いので、荷物を置いたら駅前のスーパーに買い物へ。ホテルでバスの無料券をもらったので有難く使わせてもらう。スーパーの野菜や果物はたいてい量り売りで、商品の番号を秤に入力して載せれば値段のシールが出てくる仕組みだ。今晩だけ贅沢にホテルの食事を摂ろうという事でレストランへ。せっかくなので、チーズホンデュやポテト料理や肉料理などスイスらしい料理を注文する。全部美味しい!!アルコールは高いので控えめにして部屋で飲むことにした。明日はアパートへの移動と休養のみなのでゆっくり飲んで寝た。

9日

朝早く目覚めるとパラパラと雨が降っていた。今日は体慣らしのためハイキングでもと思っていたが無理そうだ。ベタコさんは走ってくると言って出かけてしまった。ホテルの朝食はチーズ、生ハム、卵、パン、ヨーグルト、コーヒーなどバイキング形式の食事だ。出発時間を決めてのんびり過ごす。私は腕時計の時間をサマータイムに合わせてなかったので1時間見間違えていたようだ。準備が早く終わったので、ホテル周辺の散歩に出かけた。どこから見てもアイガーは良く見える。

▲アイガー北面全容
大きいからだろうか。10時過ぎに今日から宿泊するアパートへ移動した。ここはベッドルーム2部屋とリビング、ダイニング、バスルームの1フロアを借りる形式になっていてとても広い。ただ、シングルベッド二つとダブルベッド一つなので、私と玉ちゃんがダブルベッドにして、頭・足は逆になるようにして寝た。テント以外でこんな寝方をしたのは初めてだが、ベッドでも有効だった。食器や調理器具、調味料もそこそこ揃っている。ベランダからはアイガー全容がよく見える最高の立地。ただ今日は天気が悪くてよく見えない。仕方ないのでゴロゴロする。今日からの食事や非常用のガスなどの買い物に出かける事にした。昼食は日本から持って来ていた食材とビールで軽く済ませる。午後からもウロウロしたが日が長いので時間が経たない。皆で散歩に出かける事にした。玉ちゃんとN嶋さんは適当なところで引き返し、私とベタコさんはベタコさんが今朝ジョギングした所まで歩いた。ブランデックという、電車で二駅、1時間ほどの登りで汗だくになった。朝はアイガーの北壁が目の前に大きく見えたらしいが、今はガスって何にも見えない。仕方ないのでそのまま軽く走りながらアパートへ戻った。夕食はベタコシェフのペンネ、生ハム、サラダ、トンカツもあった。ビールやワインで美味しくいただく。

10日

今日はミッテルレギ小屋までの予定。行動時間は短いが昼から天気が崩れると聞いているので早めに出発する事にして、朝食はジフィーズで済ませた。グリンデルワルト駅からユングフラウ鉄道に乗り、クライネシャイデックで乗り換え、アイスメーア駅へ向かう。アイガー北壁の窓、アイガーヴァント駅で5分間途中下車できるようになっている。アイスメーア駅でも5分の休憩。我々はここで降りて装備を身に着け準備する。トンネルの中を進むとカリフィルン氷河の出口に出る。

▲カリフィルン氷河
そこでアイゼンを装着し、ロープをつないで氷河へ降りる。生まれて初めて見る氷河に緊張する。N嶋‐玉ちゃんパーティーから出発。2か所ほどハンガーの支点があった。氷河にはトレースが着いているのでその跡を歩く。途中、大きなクレバスがあり、私の足の長さではギリギリであったが、ピッケルを刺して飛んで何とか抜けた。最初の核心の岩稜への取り付きに着いたが、びちゃびちゃに濡れていて非常に怖い。大丈夫かなぁ~と不安になる。また、岩に取り付く手前の氷河も割れていて今にも崩れそうだ。これ登れんかったら敗退よなぁ~。先行の4人パーティーも取り付きでウロウロしていたが帰って行った。登れなくて諦めたのか何だったのか…何とかルートを見つけてN嶋‐玉ちゃんパーティーからスタート。

▲岩稜への取り付き
よく見るとハンガーやハーケンがあるが、このクラックにカムを入れられたらもっと安心して登れるのに。カムを持ってこなかった事をちょっと後悔してドキドキする。N嶋さんが登り始めて玉ちゃんとコールの確認をするが、聞こえないのか、かみ合わない。風でコールが聞こえにくいのか緊張のせいか…少しピリピリした空気が流れる。何とか4人とも無事に登りホッとした。ここからは3級程度の岩稜だが、何にも支点は無いので合っているのか間違っているのか分からない。時々ある小さなケルンを目印に、何となく歩きやすそうな所を選んで進む。技術的には難しくないが、岩は脆いし、下を覗くとこの高度と雄大さに緊張する。

▲近いようで遠いミッテルレギ小屋
何とか昼頃にミッテルレギ小屋に到着。我々だけしかいない。しかも、小屋主は昼寝するから受付は後だと。時間があるので、ロープが必要になりそうな所まで下見しようと出かける。何となくトレースのある方を歩くが非常に足元が悪い。素直に稜線上を歩いた方が安定していた。何となく岩の感じも分かったので戻る事にした。小屋でする事も無いのでジェンガゲームをしたり、お茶を飲んだりして時間をつぶす。ヘリが飛んできたので見ると、何やら撮影用のカメラを持った男性2人が降りてきた。ヘリは狭い所で上手にホバリングしている。ヘリは何かを積んで戻るが、どうやらトイレタンクのようだ。撮影人はネットで山小屋の様子を流すそうだ。(後日ネットを確認すると、一瞬姿が映っていた。)そうこうしているうちにどんどんガイドパーティーが登ってくる。我々は午後から天候が崩れると言う予報を信じて朝早くに出発したが、ガイドパーティーは昼から出発して登ってきたのだ。小屋は貸し切りかと思っていたが、夕食時にはいっぱいになった。ドイツ系、フランス系の中に東洋人は我々4人だけだった。食事は大きなボールにざっくりと回ってくる。後の人の為に人数を考えて自分の配分を考える我々と違って、西洋人は自由だ。残った食材も全部平らげてしまうフランス人女性の食欲に負けまいと欲張ったら食べきれなかった。失礼しました。最後のデザートはメレンゲで作ったおやつ。甘くて食べられたもんじゃないが、皆美味しそうに食べる。私の目の前のドイツ系男性も一口食べただけで変な顔して残していた。私も2個のうち1個の半分しか食べられなかった。ガイドの人達はみなワイワイ盛り上がって片づけを手伝ったりしていたが、我々は21時に就寝。何となく興奮しているのか眠れない。静かになったのは22時過ぎだった。

11日

朝食はガイドメンバーが先だと聞いていた。彼らの行動は早い。4:10に誰かのアラームで一斉に起きだし、4:30朝食。5時頃には順に出発して行った。我々の朝食は4:50からだ。ガイド以外は我々を含めて3パーティーだった。少し明るくなり始めてからスタートしようと、5:40にヘッドランプを着けて出発。N嶋‐玉ちゃんパーティーはロープを着けずに出発したが、我々はどうせすぐ着けるからと最初から着ける事にした。何てことない稜線だが何か緊張する。ガイドパーティーはとっくに先の稜線を登っていて姿は見えない。遠くにヘッドランプの明かりが見えるだけだった。先日下見した辺りから回り込み先が見えないので、N嶋‐玉ちゃんパーティーもロープを着ける。行ってみるとロープなしでも行ける登りだった。そこからはずっとコンテで歩く。岩は逆層だったり、動いたりと不安定だ。慎重に、岩を落とさないように歩いた。ビデオで研究したようなルートが順に出てくる。最初のフィックスロープのある下りはクライムダウンできるが、逆層で濡れていたのでロープを着けたままで下降した。ここからまたフィックスロープのついた登りだ。ジャンダルムの手前は何度かこんな登りと下りが繰り返される。

▲200mのジャンダルム
約3時間でジャンダルムの基部に着く。50mいっぱいロープを伸ばすと声が届かないし、標高も上がってしんどいので、30mぐらいでピッチを切ってつるべで登った。フィックスロープは非常に太いのでしっかり握って登り続けると腕がパンプしそうだ。リード以外では出来るだけフィックスを持たないで登るようにした。傾斜が緩くなった所でフィックスが無くなりハンガーボルトだけが見える。急にフィックスが無くなると何となく不安だ。もう少ししたら雪稜に出るはずだが岩稜が続く。まだ、ジャンダルムを越えていないのだろうか?と不安になる。しかし、ずっと岩稜が続く。

▲本来は雪稜のはずが岩稜でした
雪が少なくて雪稜が無くなっているようだ。ピークを二つほど越えたら頂上と思われるところから雪が出てきたが、雪の横の岩場を歩けたのでアイゼンは着けずにそのまま頂上まで歩いた。「やったー!!」と思わず声が出る。雪は少なかったが順調に登ってきた。先行パーティーは居なくて我々貸し切りの頂上だ。安堵感と開放感で少しのんびりした。

▲アイガー頂上
ここからは本来雪渓の降りだが、ずっと岩稜の降りだ。直ぐに懸垂地点があるはずだが、岩が脆いしよく分からないのでコンテで下降する。途中で後続からチェコ人の二人パーティーがやってきた。我々が最後だと思っていたのにどこからやって来たのか。前夜はヘリポートでビバークしたというが、そんなところ無かったけどなぁ~?よく分からない。懸垂したり、雪渓でアイゼンを着けたり外したり、直登なのか巻くのかよく分からないルートに思いのほか時間が掛かる。単なる雪渓のトラバースだと思っていた所は氷河のトラバースなので非常に硬い。よく見るとアイススクリューの跡があった。ガイドが皆、アイススクリューを持っていたのはここで使うんだと初めて知った。我々は持っていないので慎重にスタカットでトラバースした。順調に行けば駅まで行けるかもなんて思っていたのは甘く、稜線を登ったり下りたりを繰り返してもアレッチ氷河の取り付きにはたどり着かない。延々と続く稜線だが景色を楽しんでリラックスしようと思い「綺麗やなぁ~」とか声を掛けたが、ベタコさんにはよく聞こえないらしい。2回ほど「何?」と聞き返されたので伝える事は諦めて「何でもない、独り言です」と言ったら、「こんなとこで独り言なんか言わんといて!」と、もの凄く怒られた。「チェッ、本当は励ましてたのに」と思いガッカリした。途中でベタコさんはもうこれ以上歩けないからここでビバークすると言い出す。ええっ。そんな。一人だけ置いて先へは進めないし、こんな岩稜の稜線上ではビバークする場所もない。雷も時々鳴っている。先行の仲間はドンドン進むので、離れると何かあっても対処できないからと気持ちが焦る。前に声を掛けると「ゆっくりでもいいよ」と言ってくれてホッとする。何とか氷河まで行けば暗くなっても小屋まで歩けるだろう。少し休憩して気持ちを落ち着かせる。ベタコさんがコンテでは歩けないから全部私にリードで登って欲しいと言う。コンテに慣れてないので、片手に何かを持っていると足が前に出ないそうだ。私もコンテでこんな稜線上を歩くのは初めてだ。でも、この岩稜は日本の剱岳・八ツ峰の稜線をアイゼンで歩いているのと感覚が似ている。ロープなしでもいいくらいだが、言う通りに私がリードして歩くことにした。コンテより時間が掛かるかもしれないがここまで来たら対して変わらないだろう。アルパインはスピードが命だ。支点を作ったりムンターでビレーするのは時間が掛かるので、怖くないところは全て省略してリードで登った。コンテより順調に進んだ気がする。暗くなる前にようやく氷河へ降りる最後の雪渓に着いた。日が長いので助かった。

▲20時、ようやく氷河手前の稜線
少し休憩し、ウエアを調節してヘッデンを準備した。メンヒヨッホ小屋までは明瞭な踏み跡が続いているが、思った以上に長い。この最後の氷河を登れば小屋に着くか!と思うが、お腹は空いているし、体が重い。15時間も歩いているのだから仕方ない。ロープに繋がっているベタコさんもなかなか足が前に出ない。一番元気で語学力のある玉ちゃんが先に行って、小屋に泊まれるか聞いてくると。N嶋さんは最後尾を着いて行くからとゆっくり歩く。玉ちゃんありがとう。氷河を登り切った小屋の手前でベタコさんもロープはもういらないと言って外して置いてった。オイオイ、今まで引っ張ってきた私にロープを持たして先に行くんかい!!とムッとして、ドッと疲れた。最後尾のN嶋さんが登ってきて、体調を確認してからゆっくり小屋へ向かう。小屋の宿泊客はほとんど就寝しているが、先に着いたチェコ人二人組と我々は食堂が1時まで大丈夫だと言うのでゆっくりした。玉ちゃんとベタコさんはビールを飲むと言う。玉ちゃんは分かるが、弱音を吐いて気苦労を掛けたパートナーを最後に捨てて、元気になったからと調子のええ事を言う人に腹が立った。何となく飲んで乾杯する気になれず、精神的に疲れていたので暖かい飲み物が欲しかった。持って来ていたジフィーズの味噌汁とテルモスの白湯を飲んだ。1時間ほどゆっくりして就寝した。やはりあんまり眠れなかった。


→ 後編へつづく


メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

御在所クライミング 北岳から塩見岳縦走の山行報告

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