屏風岩の冬季登攀は憧れ!今年はダメかと思っていたが、I佐さんと日程も合ったので行く事にした。天気予報はアタック日から崩れる感じ。でも、行かなきゃ分からないので予定通り出発した。
26日:21時前にJR大阪駅集合し、高速の松本ICを降りた道の駅で車中泊。翌日は明るくなってからのスタートなのでゆっくり就寝。
27日(晴れ):沢渡の駐車場からタクシーで釜トンネル前まで乗車。長野県警警備隊に計画書のチェックをしてもらい、注意事項を聞いて出発。トンネル内は真っ暗なのでヘッドランプを使用。トンネルを出てからは雲一つない空と真っ白な稜線と、半分凍ってる大正池の景色に心が躍る。
▲大正池と穂高連峰
上高地バスターミナルはシーズン時の喧騒とは打って変わって静かで寒い。止まると寒いのでトイレ休憩だけで早々にスタート。明神から徳澤へのルートは途中から梓川にルートが取られている。このあたりから雪が深くなりはじめ、非常に歩きにくい。徳澤園の方は回らずに川の上を歩き、途中から歩道へ戻る。こまめに短く休憩を取りながら16時に横尾避難小屋へ到着。小屋の中は先に11人パーティーが陣取っていたが、入口より少し中ほどに場所を取る。小屋の中も決して暖かくはなかった。小屋前の水は流しっぱなしだが、水を汲んで小屋の中に置くとすぐ凍ってしまった。屏風の取り付きにトレースはあるか見に行こうかと思っていたが、一度落ち着くともう外へは出られないので止めにした。
28日(晴れ):明るくなるころにスタートしようという事で4時半起床にした。トレースが無ければラッセルだけに終わるかもしれないが、行けるところまで行く予定で全装備担いで出発。
▲岩小屋跡から見る屏風岩
岩小屋跡までトレースはあったが、屏風岩方面へのトレースは全くない。誰も入っていないんだ…対岸へのルートを探すが、意外と水量があり渡渉困難。これはマズい。荷物を降ろして渡渉ルートを探す。夏なら石の上を歩けば渡れるが、石の上が凍ってるので渡れない。やや上流にルートを探し対岸へ渡る。そのまま空荷でトレースを着けにT4尾根取り付きまで登る。
▲屏風岩東壁
ルンゼはデブリになっており、今から雪が降ったら雪崩れるだろう。T4取り付きは完全に雪に埋まっており、2ピッチ目から登る感じだ。T4尾根ピークも雪がべったりついているので均して幕営しないといけないだろう。明日からの天候を考えると、T4尾根を登って幕営するのは大変そうだ。
▲取り付きは雪で埋もれてます
本日は横尾避難小屋で泊まり、明日、暗いうちからアタック装備だけ持って登れるところまで登ろうという事になった。対岸へ戻ると男性2人パーティーがやってきた。「兵庫の人だ」と声を掛けてきたのは大阪の二人組だった。不動岩でアイゼントレをしている時に声を掛けたら、年末は屏風の雲稜を登ると言っていた二人だ。予定通りに雲稜を登り、上まで抜けて慶応尾根を降りてくる予定らしい。天気が悪くなるから気を付けてと声を掛けて別れる。後から聞いた話だと、今朝4時に釜トンネルを出発して1日でT4尾根ピークへ行くらしい。すごく元気!羨ましい体力だ。私達は右岩壁の観察をしようと荷物を置いて涸沢方面を先へ進む。
▲T4尾根へ取り付く姿
I佐さんに右岩壁のルートを教えてもらい再び岩小屋跡へ戻る。横尾避難小屋に戻ると中途半端な時間なので、明日のアタック装備を準備して、早めの夕食を摂った。I佐さんは昨日あまり眠れなかったので相当に疲れていたようで、早々に横になった。私はさすがに眠れないのでストレッチしたり、外の景色を眺めたりした。18時頃屏風の壁を見るとT4ピークにヘッドランプの明かりが見えた。あんまり眠くないけど、明日に備え早めに寝袋の中に潜り込んだ。
29日(雪):3時半頃目が覚めた。I佐さんに声を掛けると2時半頃起きた時から雪が降っていると。「ええっ!」外へ出ると、深々と雪が降り積もり、トレースは完全に消えている。ショックでガックリきた。どうしょうもないので諦めて下山。
▲29日朝
明るくなってから下山しようとゆっくり準備した。気温は昨日より高いが雪は降り続く。残念だが仕方ない。平湯の温泉に入り、ほっこりして今回の山行を終了した。
屏風岩は夏に見ても大きくてカッコいい。雪をまとった姿はなお一層大きく見える。冬季にチャレンジするなら、夏に冬の事を考えて登り、ルートをよく覚えておくこと。また、寒くても登りきる体力と精神力が必要。そしてやはり、いい天候の時を選ばないと雪崩の危険性がある。これだけ整った条件はなかなか無いだろう。それぐらい厳しい。またチャンスはあるだろうか…