剱岳山行  (報告/ちびサンボ)


■日 程 : 2014年8月9日(土)~15日(金)

■山 域 : 剱岳

■参加者 :

ベタコ(山歩渓)
(リーダー)

N嶋(大阪アルデ)

K林(大阪アルデ)

ちびサンボ(メラ)
■行動日程

9日(土):(雨) 6時神戸出発→電鉄富山上市駅にて集合→タクシーで馬場島

10日(日):(曇りのち雨~台風) 馬場島で台風通過待ち停滞

11日(月):(雨) 3時起床→6時出発→12時早月小屋幕営

12日(火):(曇りのち雨) 3時半起床→10時半剱岳頂上→12:45熊の岩幕営

13日(水):(晴れのち曇り) 3時過ぎ起床→5時出発→Dフェース富山大ルート、Aフェース魚津高ルート登攀→15時半熊の岩→20時半長次郎雪渓下降→22時真砂沢ロッジ着、泊

14日(木):(曇り時々雨) 5時真砂沢ロッジ出発→7:45熊の岩ベースへ→9:45、Cフェース取り付き→1ピッチ登攀後渋滞にて停滞→12:30懸垂にて下降→熊の岩へ戻る

15日(金):(曇りのち大雨) 3時起床→5時出発→8時剣沢小屋→11時室堂バスターミナル着→帰神・帰京




毎年夏山は剱岳山域を計画している。昨年骨折のためチャレンジできなかった剱尾根を二股から登る事を最大の目的とし、大阪アルデのメンバーとの合同トレーニング、そして山歩渓山岳会の合宿に参加させてもらう形で計画した。しかし、今年の夏は昨年と違い天気が不安定。台風11号の影響で思うような山行が出来なかった。

9日、前日から天気の悪い事が予測されていたので馬場島で停滞は覚悟の上、台風の影響で関西から脱出できない事を避けたかったので予定通りの出発とした。やはり雨が降ったりやんだり、翌10日は台風が通過するため馬場島で二日間停滞する事にした。10日は21時頃から強風、0時前から大雨になった。予報通りの展開なので朝には止むだろうと思っていた。

▲台風前の夕焼け(馬場島)
11日、3時起床予定にしていたが土砂降りの雨のため少しゆっくり起きる。それでも天気が回復すると信じて出発準備。6時頃少し小降りになったので出発。夜間ずっと沢の濁流音を聞いていたので二股から登るのは無理だろうと思っていたので、早月尾根から三の窓を目指すことにした。雨は小降りになるところか本降りの雨で、荷物が濡れて非常に重い。思った以上に時間がかかりヘトヘトになった。小屋の人に聞いたら昼からも天気は良くならないと。この状況で本峰を越えて三の窓へ行くのは無理と判断して、ここで幕営することにした。

12日3時半起床、13日はアルデのメンバーと八ツ峰6峰を登る予定なので、三の窓でなく熊の岩を目標に行動した。雨は降ってなかったが何となくすっきりしない天気。途中、怪しげな雨雲が空を覆い、大粒の雨が降り出す。「うっそー!!」って感じだ。途中から風も強くなり冷たい雨に変わった。「みぞれ?!」と思うくらいに冷たい。これは止まると体が冷える。ベタコさんが今すぐダウンと持っているものを全部着込めと指示するので、辛かったがずぶ濡れになりながら着込んだ。少し歩くと風が避けられるところがあったので大休止した。ここからは岩稜、この荷物を背負ってこのコンディションで歩くのは怖いなぁ~と思ったが、雨は止む様子もないのでどうしようもない。慎重に歩き続けた。苦労しながらも何とか頂上へ。着くとそこそこ景色は見えるが、雨は降ったりやんだりを繰り返す。ゆっくりしても状況が良くなる様子はなかったので先へ進む。岩は脆く濡れているのでフリクションがきかない。荷物が重くバランスを取りながら下降するのに苦労した。池ノ谷乗越まで稜線を歩いて長次郎谷右俣から熊の岩を目指すつもりだったが、長次郎谷左股を下から登ってきた人がいた。見ると熊の岩までシュルンドもなく雪渓がつながっている。これならわざわざこの危険な岩稜を縦走する必要もないだろうと判断してここから下降する事にした。熊の岩到着後、時間はあるので6峰フェースを登ろうかと話していたが、小雨が続くし、何となく疲れたのでのんびり過ごす事にした。16時頃、アルデの仲間が長次郎雪渓の途中まで登ってきているがかなり時間がかかりそう。今日は神経を使ったが準備していたほどの体力は使わなかったので、ヘルプのために長次郎雪渓を下降した。荷物を分担して持ち、熊の岩へ登り返し、明日の時間を決めて就寝した。

13日、本日は目の前のフェース登り、しかも、Dフェースはさほど混まないのでゆっくりスタートした。ちびサンボ-ベタコは以前登ってるので、N嶋-K林に先行を譲り、オンサイトトライを楽しんでもらう。しかし、1ピッチ目はちょっと登りにくいので苦労している。ハングを左に出ないといけないが右の凹角から回り込んでいた。

▲Dフェース1ピッチ目
ちびサンボリード。ハング下でN嶋さんと同じルートを取ろうかと思ったが、それも難しそう。本来のルートは左だと分かるが被りのフェースだから滑りそうで怖い。ヒイヒイ言いながら何とか着いたが、前回の場所と違う。見ると右上にも古い支点があった。前が間違っていたんだと分かった。2ピッチ目、K林さんリードでいきなり難しそうなフェースへ向かおうとする。III級ルートだからそんなに難しく登る必要はないはず。私の記憶では右のフェースが階段状で簡単だったのでそちらをお勧めした。ベタコさんリード。トポ通り凹角からフェースを目指して登ったが、どう見てもこのルートは最近登ってないだろうと思うくらいに草は生えているし岩がボロボロ。おまけに濡れているからセカンドでも緊張した。3ピッチ目が核心とされるルート。ここは正直難しいのか簡単なのか分からない。とにかく触る岩全て動いて怖い。ベタコさんリードで登る。セカンドで登ると先行のN嶋パーティーも取り付きにいる。どうしたのか聞くと、先のルートが分からないから前回リード経験のある私に聞こうと思って待っていたと。トポではバンドを左上しリッジに出ると。そうだ!このバンドの左上が逆層で気持ち悪かった記憶がある。ここはベタコさんにリードしてもらおうと思ってたのに、立ち位置的にちびサンボがトップで登らないといけなくなった。仕方ないので4ピッチ目ちびサンボリード。ここはリッジに出てから下の方をトラバースして支点が無く怖い思いをした記憶がある。出来る限り上の方を目指してロープいっぱい登った。

▲Dフェース4ピッチ目終了点
5ピッチ目ベタコさんリード。ここから後2ピッチだがロープギリギリまで伸ばさないと2ピッチでは登れない。また、いい支点は無かった記憶がある。10m程登ったところにいい支点があったようだが無視してロープいっぱいに登ってもらった。6ピッチ目ちびサンボリード。易しいリッジだからか支点があんまりなく、カムも微妙なサイズ。何とかロープいっぱいでDフェースの頭へ。後続のN嶋パーティーも問題なく登って終了。時間も早いのでAフェースを登る事にした。N嶋パーティーは中大ルートを登りたいと。ベタコさんは魚津高ルートを登った事が無い。ちびサンボもガイドに登山靴で登らせてもらっただけなので覚えてない。なので、私たちは魚津高ルートにした。1ピッチ目ベタコさんリード。左の凹角にスリングがぶら下がってる。これかなぁ~。いや、これは難しすぎるやろうと悩む。右側に取り付きを見つけて登るが、ハング下が濡れていて気持ち悪い。ぎゃあ、ぎゃあ言いながら登る。2ピッチ目ちびサンボリード。カンテから右のクラックへ出たところで、中大ルートを登っているはずのN嶋パーティーが真横にいる。??私はこれ以上左には行けないので間違ってないはず。という事はあちらが間違っているのだ。諦めてN嶋パーティーも同じ魚津高ルートを登る事になった。3ピッチ目ベタコさんリード。上部はハイマツを抜けたり脆い岩場を抜けてAフェースの頭へ。

▲Aフェース頭(K林)
4人全員が着いた時には雲行きが怪しくなってきた。早々に片付けて下山。ここからは懸垂1回で5・6のコルへ。本日はこれにて終了とした。

14日、訳あって昨晩は真砂沢ロッジで過ごした。5時出発。熊の岩へ戻り、少し休憩してからCフェースぐらい登ろうとなった。ちょうど取り付きには誰もいなくなったので順に登る。1ピッチ目終了点から少し登ったところで先行のK林パーティーが止まってる。先行が一歩も進まないからだ。まあこのルートは人気だし、初心者も多いから仕方ない。気長に待つ事にしたが、本当に一歩も進まない。普通、1パーティー進んで、次が進んでと待ちながらでも1ピッチずつは進むのに。何でやと思いながら過ごす事1時間半。もう止めた!この調子では夕方になってしまうので懸垂で下降した。先行していたK林さんに聞くと、6人パーティーが何組かいて、プルージックで登ったりしていたようだ。リード出来るのが一人しか居なかったのだろう。降りて正解だった。

15日、長次郎雪渓を下る時は少し天気が良かった。ひょっとして午前中は登れたんだろうかと思ったが、7時頃から雨が降り始めた。そこからは強風と雨との戦い。全身ずぶ濡れ。私の頭の中で「低体温症・疲労凍死」の文字がぐるぐる回る。休みたいけど休むと寒くて耐えられない。でも休みたい。そんな自分と戦いながら室堂を目指す。後1時間この状況が続いたら倒れていたかもしれない。室堂へ着いたら荷物の中は全部ずぶ濡れ。暴風雨ではカッパもザックカバーも全く役に立たなかった。ああ辛かった。立山で温泉に入り、ビールを飲んでようやくほっとした。

▲Dフェースの頭
今回は剱岳にボッカ&テント泊をしに行ったようなものだ。何度も、「何でこんなしんどい事してるんやろう」と自問自答した。本当に辛かった。でも、終わってみればこれもいい経験になったように思う。いつか二股から剱尾根を目指したい。剱岳はまさしく岩と雪の殿堂。厳しく、恰好いい山だと思った。ますます好きになった!


メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

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