県連登攀教育部錬成山行 小川山  (報告/ちびサンボ)


■日 程 : 2014年7月18日(金)夜~21日(月)祝

■山 域 : 奥秩父 小川山

■目 的 : クライミング錬成山行

■参加者 :

I佐(須磨)リーダー

isoroku(メラ)

K寺(須磨)

ジプシー(メラ)

T尾(武庫)

ちびサンボ(メラ)

ベタコ(山歩渓)
■行動日程

18日(金):
 JR大阪駅 旧郵便局前21時集合→I佐車で駒ヶ岳SA(1時半着)→仮眠

19日(土):(曇りのち雨) 5時起床→6時出発→8時半廻り目平キャンプ場着→ガマスラブルート(I佐-T尾、isoroku-ジプ シー)、スラブ状岩壁(ベタコ、K寺、ちびサンボ)

20日(日):(曇りのち雨) 6時起床→8時出発→屋根岩3峰南稜レモンルート(I佐-isoroku)、屋根岩2峰セレクションルート(ベタコ-T尾-ちびサンボ、K寺-ジプシー)

21日(月):(曇りのち晴れ) 5時起床→8時20分出発→全員でマラ岩東面ルートへ→11時終了→テント撤収し、帰神、帰京




毎年、県連登攀教育部では海の日の三連休に山行を組んでいる。昨年は錫杖岳の予定が雨天で小川山へ変更になった。 今年も雨で錫杖岳は厳しい感じ。転戦先に小豆島や雪彦山の意見もあったが、直前になり小川山へ行く事が決まった。錫杖岳は関西から6人で行く予定だったが、小川山になったので関東からベタコさんも参加する事になった。関西勢は21時、JR大阪駅に集合。駒ヶ岳SAで仮眠した。19日、夜間雨が降ったようで道路も車も濡れている。小川山は大丈夫なんだろうかと不安もありながら6時に出発。高速を降りたらあまり迷わず行けるのだが、今回は降りるところを間違って迷ってしまった。携帯のナビを使いながら8時半頃廻り目平キャンプ場へ到着した。関東からのベタコさんもほぼ同じような時間に到着した。三連休前だが車もテントもまだ少ない。広々とした場所を選んでテント三張り、タープ二張りして宴会場を作った。今回、小川山は初めてのジプシー、T尾はやはりガマスラブがいいだろう。isorokuも昨年雨で2ピッチ目までしか登ってないので、予定通りの2パーティーで行く事に。残りの3人はスラブ状岩壁へ向かった。スラブ状岩壁、5.8「かわいい女」ルートから登る。ここの下部は簡単なスラブだが1ピン目までが遠くて気持ち悪い。終了点が無いので、変にルートを伸ばして左の「高い壁」の終了点に作った。ベタコさんが「全然面白くない」というので、隣の5.7「ウルトラセブン」が空いたのでそこを登ることにした。ちびサンボ、K寺、ベタコの順で登った。5.9「小川山ショートストーリー」も1ピン目を取るところまでが核心。K寺、ちびサンボ、ベタコの順で登る。他の人の登りを見て、「かわいい女」の核心の登り方が分かったので登り直す。K寺、ちびサンボ、ベタコの順で登った。簡単なところばかり登っていても仕方ないので、11a「水曜日のシンデレラ」を登りに行った。ベタコさんは何回かトライしているが、まだRPしていないらしい。ベタコさんがヌンチャクを掛けに登ってくれる。順調に登っていたが、上部核心のところでテンションしてしまった。K寺君は初トライ。核心のところをベタコさんと違う登りで越えてフラッシング成功。おめでとう!

▲水曜日のシンデレラをフラッシングで登るK寺

ちびサンボはリードは怖いのでTRにしてもらった。昨年もTRトライしたが、核心以前の足を開くところが出せずに敗退した。今回は勇気を出して足は開けたが、そこから細かく体を上げていくのが非常に怖い。だが、K寺君の使ったホールドやスタンスを思い出しながら核心の下部は登れた。このあたりからパラパラ雨が降り出した。上部核心では細かいスタンスに乗り込んでから立ち上がれず滑ってテンション。この時点で雨が少し激しくなってきたので諦めてAOでトップアウトした。下山してキャンプ場へ戻った時には大雨になった。これでは晩御飯もままならない。少し小降りになるのを待って、離れて設置していたタープを合わせて宴会場を作った。皆でお風呂へ行き、スーパーでバーベキューの買い出しをした。タープの下でバーベキューをしていたが、食べている間に雨も上がり焚火が出来る状態になった。濡れた木を乾かしながら焚火を楽しみ、別で来ていた神戸労山のO石さん、N原さんも参加して賑やかな宴会になった。酔って眠たくなった者から順にテントの中へ入って就寝。

20日6時起床。野菜入りのうどんとベーコンエッグで朝食。今日も昼過ぎまでは天気が持つ予報。マルチを登るために2パーティーに分かれた。I佐-isorokuは屋根岩3峰南稜レモンルート。他5名は屋根岩2峰セレクションルートへ向かった。セレクションのパーティー編成は、ベタコ-T尾-ちびサンボ、K寺-ジプシーとした。そうすれば昨年中級修了生の二人も簡単なルートをリード出来るからだ。リードは空荷でフォローが荷物を持つようにした。1ピッチ目のクラックは短いが見た目より難しい。

▲セレクションルート1ピッチ目
ベタコ-T尾-ちびサンボの順に登る。T尾はセカンドで何とか登りきったが、サードのちびサンボはクラックが苦手な上に荷物が重い。こんな状況で粘っても仕方ないのであっさり諦めAOで登った。2ピッチ目はスラブオンリー。ここはT尾のリードポイントなので結び替えをして、T尾-ちびサンボ-ベタコの順に登る。下部が少し怖いが、岩は乾いてるのでフリクションがよく利く。そして、宮崎県の雌鉾岳大スラブのいい練習になると思う。

▲2ピッチ目をリードするジプシー
3ピッチ目も簡単なので同じオーダーで登る。しかし、T尾がえらい苦労している。何でやろうと思って見ると、チョックストーンを使って階段状に登る簡単なルートを登らず、チムニーの奥にカムを掛けて登っていた。よく落ちずに登ったなあ~と感心した。4ピッチ目は出だしのクラックが背の低い人間には足が届かず難しい。パラパラと雨が降り出し天気が怪しくなってきた。再び結び替えをして、ベタコ-T尾-ちびサンボの順で登る。クラック上部は左からスラブを登るのが正解だが、T尾はクラックからそのまま上部スラブへ抜けるという、また難しいルート取りをしていた。リードだったら支点が取れないので絶対に登れないルートだが、あんな立ったスラブを上手い事登るなぁ~と感心する。T尾が登ってる途中から雨が少し降り出した。これではスラブ壁が完全に濡れてしまう。ちびサンボが登る時には足がかりにする木は完全に濡れて使えず、ここもクラックはAOして登った。クラックを抜けたスラブも完全に濡れている。何とか細かいホールドやスタンスを使おうとしたが、細かいホールドが欠けて滑った。その時、左手を擦りむき流血。ヤケクソになりながら、AOと支点に立ちこみ登り切った。次のピッチは省略して頂上へ抜ける事も出来る。頂上手前まで登り、手を水で洗ってみるとたいした傷ではないので、バンドエイド保護し、荷物はデポしてクライムダウン。

▲5ピッチ目のトラバースルート  ここを通らず頂上へ抜ける人も多い
5ピッチ目はアンダーホールドのトラバース。雨で濡れているとすごく怖い。でも、リードのベタコさんは行くという。私は止めようかと思ったが、何となく行ってしまった。しかし、やはり後悔。岩は濡れてるし、アンダーホールドは水が滴り気持悪かった。6ピッチ目、左のクラックがメインイベント。ここは写真班のちびサンボがセカンドで登る。荷物が無くてもクラックはやはり難しい。基本練習が必要だと痛感した。

▲最終ピッチのクラック 右のルートの方がやさしい
13時には後続のK寺-ジプシーも頂上着。集合写真を撮って懸垂で下降。取付きへ戻る頃には本格的に雨が降ってきた。しばらく降るとまた雨が小降りになったので、風呂と買い出しへ出かけた。今日はちらし寿司、鶏肉のクワ焼き、サラダ、前日の残りの肉など盛り沢山。そして、デザートのスイカ。登ってる時間より飲んでる時間の方が長かったかも。


21日5時起床、焼きそばと具だくさん味噌汁。昼用にちらし寿司のおにぎりとゆで卵を準備してマラ岩東面ルートへ。目的のレギュラーにはすでに取り付いている人がいるし、イレギュラーもヌンチャクが掛かっている。取りあえず簡単なルートでアップ。5.8「川上小唄」、K寺、ちびサンボは初めて。スマップの番組で木村拓哉が登った事で有名になったらしい。ここのピークから見る景色が最高!

▲マラ岩
妹岩下の簡単なルートへ移動。5.8「センター試験」、支点通り真っ直ぐ登るのが正解?しかし、若干難しいので下部は左を少し使った。10b「卒業試験」は右や左へジグザグに登り、若干細かいホールドとスメアが難しい。K寺君はRP、isorokuはフラッシング、ちびサンボはTRでトライ。細かいけど、案外嫌いじゃないルート。次には登れそうな気がした。最後、ヌンチャク回収に登らないといけないので、RPトライした。2回目なので核心は怖いけど何とか登れた。これで行けるやろうと安心してたら、ガバホールドトラバースのところで力尽きてテンション。ガッカリだ。最後まで油断せず慎重に登らないといけないと痛感した。天気はどんどん良くなるが、三連休最終日なので帰らないといけない。残念だけど岩場にサヨナラして撤収した。

今回も昨年と全く同じパターン。錫杖岳に登るのならこの三連休は諦めて、翌週に企画するしかないと思う。ただ、小川山でもマルチクライミングは楽しめるし、自分の実力を思い知るいい機会になるし、刺激になる。そして何より快適で楽しい。来年から海の日は小川山でいいんじゃないかな。皆さん、それぞれに収穫があり良かったと思う。お疲れ様でした。また、お願いします。

▲集合写真


<isorokuの報告>

18日(金) 駒ヶ岳SAにて、他のメンバーは東屋にテントを張って寝たようだが、isorokuとジプシーは営業終了した建物の庇の下で寝た。夜半に雨が降っていたが問題無くよく寝ることが出来て、冬もここで寝られそうに思えた。

19日(土)小川山入門ルートのガマルート5.8をI佐-T尾、isoroku-ジプシー、のツルベで登った。私は昨年このルートを2ピッチ目まで登って降雨のため懸垂下降しており、その時の印象でもこのルートは1ピッチ目が核心と思っていた。手を使えるホールドなしに足のフリクションだけで登るのは怖い。今回も、このピッチの中間くらいまでは、滑り落ちそうでヒヤヒヤだったが、ある程度登って来ると滑らないことが判ってきてスラブ登りの感覚が掴めてきた。2ピッチ目はT尾がトップでスムーズに登っていた。ガマルートを下りてくると、「水曜日のシンデレラ」をちびサンボがTPで取り付いていた。11aらしくホールド、スタンス共に甘くて難しそうだが、うまくムーブを組み立てながらずり上がっていった。ここを乗り越したら登れる、と力を入れて見ていた所でテンションしてしまった、残念だ。K寺はここをフラッシュしたと聞いて感心する。ここで雨が降ってきたので本日は片付けとする。

20日(日) 私は他のメンバーが行くセレクションルートは昨年登っているので、I佐-isorokuでレモンルートを登ることにする。このルートは3ピッチ目が核心になると聞いていた。I佐さんからリードはどうするか聞かれて、偶数ピッチでリードして難しいところをI佐さんにお願いした。取り付きでは若者3人組が準備をしていたが、3人なので遅くなるからと言って先行を譲ってもらえた。お礼を言って、I佐さんリードで登り始める。ビレイをしている私に若者たちのリーダーから「あの人はアルパインのベテランのように感じるのですが?」と聞かれて、私は頷いた。2ピッチ目は、トポではトラバースして木でピッチが終了しているようになっていて、I佐さんは30m程のピッチだろうと言う。岩を巻く高度感のあるトラバースをisorokuがリードで始めると、20m程ですぐに木が出てきて、さらに上にも木が生えている。これは上の木でピッチを切るものだと思い込みロープを引いて登っていると、I佐さんが何か叫んでいるようだ。あと5m程上がればスリングとヌンチャクが掛かった木まで到達できたが、ロープが足りないと言っていると思い、手前の木でピッチを切る。フォローで上がって来たI佐さんが初めの木のところまで来て「違う、ここが終了点や」と叫ぶ。しまった!間違った、「待っていて下さい、そこまで降ります」と言ったが、小雨が降り出しており、「いや、雨やから止めとこう」。私の所まで上がってきたI佐さんは木に巻かれたスリングを見て、「これは懸垂の支点やで。ここから懸垂で降りよう」となってしまった。雨が降ったり止んだりしていて、正常に登ってないから、5.7の簡単な最終ピッチでも頂上まで登る価値は無いとの判断だった。

▲2峰頂上から見るとよく分かる 3峰南稜レモンルート
トポではここから50mの懸垂になっていて60mロープ1本では足りないが、上から見ると途中で木が見える。I佐さんが実際に降りてみると、中間部で木があって2回の懸垂で取り付きにたどり着けた。ルートを良く見ていなかったために間違えたのは当然だが、始めにI佐さんからピッチ選択を聞かれた時点で、進んで難しいピッチを登る勇気が必要だったのでは無いのかと、何もかもI佐さんに頼り切っていたためにルートを良く見られていなかったのが、最大の誤りだったと反省します。セレクションの取り付きで他のメンバーの様子を見た後、キャンプ場に戻ってきて昼食にする。ここで近くにテントを張っていたN原さん、O石さんと合流する。午後から左岸スラブを登ろうと言う話になって、現地にて登る準備をしている最中に雨が本降りになって中止する。

21日(月)始めに「センター試験」、次に「川上小唄」でアップをする。戻ってきて「卒業試験」を見るとちびサンボがTPで登っている。「センター試験」を登る時に「卒業試験」を下から見ていてイメージできなかったルートがようやく理解できた。難しそうだがテンションすることなくちびサンボが登り切った。自分の番となり、左カンテ側から取り付いて右側に移り、飛び出した岩の上部に立って、左足を真上の凹みに差し込んでハングを乗り越すと、手をその上のカチまで飛ばす所が核心だった。

▲卒業試験ルートをフラッシングで登るisoroku
何とかフラッシュできたが、これで10bなら先はしんどいなあ、と言うのが今回の小川山での感想でした。

しかし、小川山は楽しい。できれば長期滞在してフリーとボルダリング三昧としたいですね。その時は、できればベタコシェフがいれば最高です。いつも本当においしい料理をよばれました。




<ジプシーの報告>

錬成山行は錫杖岳の前衛壁の予定が梅雨が明けずに小川山となった。小川山は行ったことはなかったが、フリークライミングのメッカということで、私の行くようなところではないように感じ気が進まなかった。できればもう少し天気予報のいい地域のアルパインルートに変更してほしかったというのが正直なところだった。しかし、実際行ってみるとマルチピッチのルートもたくさんあり、それなりに錫杖岳の代わりの山行になったかもしれない。何よりも廻り目平でのキャンプ生活は快適で、いつもの山行とは違う楽しい時間を過ごすことができた。メンバーの皆さんとの連夜の宴会、焚火は夏休みに相応しい思い出になった。今回登らせてもらったのは、主にスラブルートとクラックルートで、いずれもなかなかに手ごわかった。

▲屋根岩2峰頂上
まだまだフリークライミングの実力が足りないことを再認識した。これからもフリーのルートを登ってクライミングの力を向上させる必要があると思う。次来るときはぜひ烏帽子岩左稜線を登ってみたい。今回フォローで登ったマルチピッチをリードしてみたいとも思う。メンバーのみなさんありがとうございました。これからもよろしくお願いします。



<錬成山行を終えて・・T尾/武庫労山>

2013年の中級登山学校を修了し、今回「錬成山行」に参加させていただきました。当初は錫杖岳の予定でしたが悪天候の予報で小川山へ転戦。ボルダーの聖地と言われる小川山は、一度行ってみたい岩場だったので錫杖岳は残念だったけれど、小川山転戦も嬉しいものでした。木々に囲まれたテントサイトはとてもステキで、キャンプファイヤーまでできてしまう理想の場所にテンションも上がり・・・。到着後、テントを設営し、まず初心者である私はガマスラブに連れていって頂きました。目の前に広がるのっぺりしたスラブ。 I佐さんとペアを組ませていただき2ピッチ目をリード。ピン間隔が広かったのでドキドキしましたが、なんとか登りきることができました。翌日はベタコさん、ちびサンボさんのお2人とセレクションへ。しょっぱなからクラック。クラックはやはり課題だなーと実感。

▲セレクションルート 最後のクラックを登るT尾
フォローがザックを背負うことになっていたのですが、下っ端の私が背負わなければならないところ、ちびサンボさんは最初から最後まで笑顔でザックを背負っての登攀。途中雨も降り、微妙なスラブもすべて負荷をかけた状態で、それでも私が背負うからと・・・。そんなちびサンボさんの背中がとても大きく見えました。このルートで2,3ピッチ目をリードしたのですが、ルートファインディング技術も未熟すぎであることも実感。今後ひとつずつ課題を克服し、次回は1本でも多くのルートをリードできるように頑張っていきたいと思います。貴重な夏の三連休を「中級錬成」として山行を組んで頂きました皆様、本当にありがとうございました。またこれからもよろしくお願いいたします。


メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

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