今回は最初から初日の天気が非常に悪い予報であった。縦走は3日ないと厳しい。どうするかは行ってみないと判断が難しいので現地で相談する事にした。私の中では縦走は無理でも時間を決めて西穂高岳から行けるところまで(出来れば天狗のコルあたりまで)行きたいと考えていた。I佐さんは何とかして縦走出来るんじゃないかと考えていた。しかし、3人とも24日に仕事があったのでやはり無理は出来ない。そこで、奥穂からの逆コースなら天気の悪い時でも2400m付近まで登ることは出来ると考えた。そのつもりで21日、6時半に起床した。夜中からずっと雪が降り続いている。この天候では2400m付近まで登るのも大変だし、翌日天候が回復しても鎌田富士を通過して奥穂・西穂を目指すのは厳しいだろうと思った。逆コースは諦め、本日は西穂山荘までにして、明日の天候で考える事にした。そうなると早く登っても仕方ない。寝不足なのでもう一度寝なおす。9時頃起床してロープウェイを使って西穂山荘まで登った。今日一日降り続くことが予測される天候だった。小屋でのんびり過ごす。夜間は風がきつく、とても寒かった。
22日4時起床。本日は天候が回復する予報なので、行けるところまで行く予定で準備して出発する。太陽の光は見えるがとにかく風がきつくて飛ばされそう。先頭のI佐さんは何度も「風がきついなぁ」「厳しいなぁ」と言いながら立ち止まる。バラクラバをしていると息苦しくなるので時々外すが、風が冷たすぎるので頬が切れそうになる。我慢して鼻まで覆ってアウターの帽子を被って保護する。何とか1時間ほどで西穂高岳独標へ到着。
▲西穂独標からの眺め
I佐さんの左頬を見ると真っ白になっている。「真っ白ですよ。凍傷になってますよ!」と伝えると「何か当たっとったんやろ」と。バラクラバも顎まで下げていたせいだろうが、こんな短時間で凍傷になるんだと驚いた。それほど、気温は低く風が冷たい証拠だ。この先も困難が予測される。どうするかと思っていたが、I佐さんは「行きましょか」と言って下降し始める。3パーティーほど先行していた。私は昨年も同じ時期に歩いているが、昨年より雪が多い。基本、稜線を歩くが時々飛騨側をトラバースするようにルートを取る。昨年、頂上直下はスラブの岩が露出して歩きにくく怖い思いをしたが、今回は上高地側の雪面にステップを刻んで登った。出発から約2時間半で西穂高岳頂上へ到着した。さあ、どうするか。先行に男性二人組のパーティーがいた。彼らも時間を決めて行けるところまで行こうと考えていたようだが、下降路が分からない。ここからは全くトレースが無い。昨日の降雪もあるだろうが、それ以前から誰も入っていない感じだ。
▲西穂下降後のトラバースルート
頂上で装備を装着し、ダブルアックスを準備する。夏にここを下降したことはあるが、ホールドやスタンスが見えていても急で非常に怖いところ。どう下降していいのか分からない。飛騨側により過ぎると雪庇だし、上高地側により過ぎると雪崩れそうな雪面。ドキドキしながらI佐さん先頭で下降した。
▲西穂から先はこんな下降が続きます
上高地側をトラバース気味に、基本的には稜線伝いに歩いた。飛騨側を下降するルートでちょっといやらしい感じのところがあった。何とかクライムダウンで行けそうだが、途中で先頭を交代した二人組のパーティーが懸垂で下降する準備をしていた。彼らはどうせ戻ってくるのでロープを残置するから使っていいと言ってくれたので、遠慮なく使わせてもらって下降した。彼らはその先もずっと稜線伝いに歩いていたが、間ノ岳手前のところを下降出来なかったので戻ってきた。
▲間ノ岳手前、この稜線の次は右斜面をトラバースしました
ここはルートの感じから稜線伝いじゃなく、上高地側をトラバースした方がいんじゃないかと思った。I佐さんに言ってみると「そうやなぁ。行けそうやなぁ」という事でトラバースしながら行った。何とか間ノ岳頂上にたどり着いた。ここで10時40分。11時で引き返そうと話していたのでいい時間だ。諦めて戻ることにした。
▲間ノ岳頂上から槍ヶ岳への稜線を望む
行きで懸垂したところはダブルアックスで何とか登り返すことが出来た。後は往路をそのまま戻った。下山途中からガスが増えてきた。今日も思ったほど天気は良くなかった。
▲西穂頂上にはたくさんの人がいます
23日、今日が一番天気はいいのかもしれない。しかし3連休で渋滞が予測されるので早々に下山した。
今回は私のわがままで、縦走が出来なくても行けるところまでを行きたいと主張した。夏にこのルートを往復しているのでルートは分かるが、雪が完全に被っている場合のルートファインディングが難しい。その経験をしたかったからだ。天候に恵まれ、いい条件で縦走できるのも成功の秘訣だと思う。またチャレンジしよう。