涸沢岳西尾根から奥穂高岳登頂  (報告/ちびサンボ)


■日 程 : 2014年1月2日(木)〜4日(土)

■山 域 : 涸沢岳〜奥穂高岳

■目 的 : 厳冬期、北アルプス概念把握

■参加者 :

ちびサンボ
(リーダー)

Ryucyan

ジプシー

ベタコ(山歩渓)
(サブリーダー)

M崎(山歩渓)
■行動日程

2日(木):(晴れ)JR西宮駅6:00発〜新穂高温泉駐車場12:10着〜新穂高温泉駐車場12:50発〜穂高平小屋14:10〜涸沢岳西尾根取り付き15:25〜標高1,800m辺り16:05(テント設営)

3日(金):(晴れ後曇り)標高1,800m辺りテント場5:00発〜森林限界(2,600m)8:35〜蒲田富士9:05〜涸沢岳頂上11:40〜穂高岳山荘12:00着〜冬季避難小屋入口掘り出し、休憩後12:50発〜奥穂高岳頂上14:05〜穂高岳山荘15:45着(ビバーク)

4日(土):(曇り時々晴れ)6:00起床〜穂高岳山荘9:40発〜F沢のコル11:10〜森林限界(2,600m)12:10〜1,800m辺りテント場13:30着〜テント撤収〜新穂高温泉駐車場16:25着




2日、いつもは前日夜発で出発するが、夜間の運転はしんどいのと、年始で皆仕事はお休みなので、余裕を持って日中に出発する事にした。大した渋滞は無かったが、積雪のため一車線になったり、チェーン規制でのろのろ運転になったりした。私達も平湯温泉の手前からチェーンを着けた。新穂高温泉駐車場には昼に着いたのでいっぱいだ。仕方ないので下の駐車場に止めた。東京から先に到着していたベタコさんと合流して出発。ここの林道はやたらと長く感じる。また、何故だか体調が思わしくなく体も重い。元気なメンバーがどんどん進むが全く着いて行けなかった。時間的には16:30をタイムリミットで幕営地を探し、そこまでは登れるところまで登ろうと決めていた。1,800m付近で手ごろな場所を見つけたので幕営する事にした。天気は3日の午後から崩れ、4日午前中は良くない予報。避難小屋ビバーク体制で3日アタックする事を決め就寝した。

3日、前日からの体調不良のせいか眠りが浅く熟睡出来なかった。3時起床予定が目覚ましが鳴らずに少し過ぎてしまった。装備を準備していたが、よく考えるとテント以外は全て持っていかないといけない。サブザックには入りきらないので結局大きなザックに入れ替えたりして手間取った。それでも何とか準備が整い予定通り5時出発した。しっかりとトレースはあったが、途中から岩稜も出てくるので最初からアイゼンをつけて登る。昨年はいたるところに幕営していたが今回は全くない。2,400m付近でも一張しか無かった。ここからの登りも昨年はラッセルだったが、トレースがあるので問題なく登れる。稜線に出たところでわかんをデポした。

▲鎌田富士
ここからのルートも昨年は岩稜沿いを歩いたが、涸沢側にしっかりとしたトレースがあり、フィックスロープが露出していたのでそれを使った。ここまではRyucyan、ジプシーが先に歩いていたが、ここからは経験者のちびサンボが先頭に立つ。トレースはあるが雪庇には充分注意しないといけない。ナイフリッジのところも昨年のように切り立ってはいないが油断は禁物。慎重にゆっくり歩いた。F沢のコルは、昨年とは違う尾根を忠実にたどるルートで登った。先行パーティーも見えていた。ジプシーとRyucyanは先を急ぐかのようにどんどん進む。その後をM崎さんがついて行く。ちびサンボとベタコさんはいつも汗を掻かないぐらいのペースでゆっくり歩くので3人について行けない。先に進んでもどうせ待つから寒くなるのになぁ〜と思うが声も届かないのでアドバイスも出来なかった。涸沢岳の稜線では天気が良く眺望は最高だった。槍ヶ岳からの稜線、ジャンダルムの稜線と山の連なりを見ているとワクワクする。涸沢岳から見る景色は昨年と全く一緒だった。

▲涸沢岳頂上:ジプシー・ちびサンボ・Ryucyan

▲奥穂高岳の稜線
穂高岳山荘に着いたのは12時。昨年は避難小屋の入口が見つけられずここで敗退したが、今回も分からない。ガイドパーティーがいたので入口を聞いた。よく見ると木標がありスコップが傍にあった。少し掘ってみると穴があいたのでそこが入口と分かった。皆で入口を空け、中の様子を確認。これなら快適なビバークが出来ると判断し、奥穂高岳のアタックをする事に決めた。厳冬期の奥穂高岳は登った事が無かった。ジプシーがGWに登った事あるからルートは分かりますと言う。それなら先頭で登ってもらおうという事になった。「ゆっくり登ってよ!」と指示していたが、やはりどんどん進んでいく。単独行者が懸垂で降りてきたので降り切るのを待っていた。すると、先行している3人とまた差が開く。稜線では風がきつく全く声が届かない。時々振り返る3人にジェスチャーでバツ印をして距離を空けないように指示するが全く気がつかない。だんだん腹が立ってきたので放って帰ってやろうかと思った。そんな大人げない事も出来ないので、後続のベタコさんとの距離を保ちながらゆっくり頂上を目指した。

▲奥穂高岳頂上
夏に何度も登ったところだからか、腹が立っていたからか分からないが、感動はさほどなかった。ただ、頂上から見る西穂高岳への稜線はとても魅力的だ!風がきついので写真撮影だけして直ぐ下山する。下山時はちびサンボが先頭に立ち、皆の距離を保つようにした。途中、Ryucyanのアイゼンが緩んだため足止めし、ハシゴの上部でフィックスロープを使ったので少々寒い思いをしたが、特に問題なく小屋まで下山した。小屋の中は風が無いし、トイレがあるので快適!床にツエルトとマットを敷いて暖をとる。暖気は上にいくから2階の方が暖かいというジプシーの説を起用し2階に居ると、屋根の雪が融けて雨漏り状態になってきた。しばらく粘ったが、これは1階の方がいいと判断し下へ逃げる。何とかしのげそう。温かい飲み物を飲み、酒を飲んで温まるがM崎さんだけ寒がっている。奥穂の下山で低体温状態になったのと、煙草で末梢が閉まってるせいだろう。ずっと火を点けていて欲しいと言うがガスに限りがあるのでツエルト被って我慢してもらった。酒や食材も限りがあるので19時半頃には尽きてしまう。起きていても寒いので早々に寝る事にした。避難小屋は広いから火を消したら寒いかと思ったが、皆で集まって寝ると全く寒くなかった。翌日の午前中は天気が悪い予報なので、目が覚めたら起きようと目覚ましも掛けずにのんびり寝た。

▲奥穂高岳頂上からジャンダルムへの稜線
4日、いつも通り6時前には目が覚める。夜中に風で雪の落ちる音がしていたので入口が塞がってるんじゃないかと思ったが、中引き戸だったので外には出られた。ご飯を食べて7時半頃外の様子を見ると視界は10m程度で風がきつい。昼頃には天気が回復する予定なのでのんびり構えるしかない。何をするでもなくごろごろして過ごす。それでも少しでも早く下山したかったのでちょくちょく外の様子を見に出る。9時過ぎに晴れ間が見えた。山の天気は変化が激しいのでチャンスを逃してはいけない。10時前出発を目標に各自準備を始め、9時40分に出発する事が出来た。ちびサンボ先頭で出発するが、涸沢岳への登りは体が重くしんどかった。風雪でトレースの消えているところも多々あったが、稜線寄りの岩稜沿いを歩くようにルート取りをした。途中、ベタコさんの大きな声が聞こえた。何かあったと思ってドキッとした。M崎さんがアイゼンを引っ掛けて転んだらしい。恐ろしい事だ。ここから落ちたら普通は怪我では済まない。思わず過去の事故報告を思い出した。そこから皆でもう一度気を引き締めて慎重に歩いた。蒲田富士はトレースがしっかりついているが、来た時とトレースがずれている。昨晩の風雪で雪の状態が変わってるのかもしれない。万が一の事を考えて、少し距離を空けて歩くようにした。デポしていたわかんを回収して下山しようとすると、ジプシーがアイゼンを取ってわかんで下山すると言う。前に雪稜をわかんで下山して快適だったからと言う。ちびサンボの経験ではここはアイゼンの方がいいと思ったが、ジプシーは自分でやってみないと納得しない性格だ。危険ではないので好きにさせてやろうと思って最後尾でわかん下山してもらった。他の皆はアイゼンで下山する。ちびサンボは先頭なので気がつかなかったが、最後尾で「わー、わー」と何度か滑って転ぶ声がしていたようだ。2400mのところで休憩。ジプシーがわかんを外し、アイゼンも着けないで下山すると言う。ここからはアイゼンなしでもいいが、多少岩稜もあるしアイゼンを着けてる方が楽なので他の皆はアイゼンを着けたまま下山した。途中、ジプシーがなかなか下りてこなくなった。ひょっとしたらアイゼンを着けてるのかな?と思ったが、岩稜もないところまで降ってるので逆にアイゼンなしでいいはずだ。待っているが全然降りてこない。だんだん心配になり、ひょっとしたら、と思えてきたので荷物を置いて登り返す事にした。少し登り始めてジプシーの姿が見えた。やっぱり滑るからアイゼンを着けたらしい。何かと手の掛かるやつだ。皆それなりに疲れていたが、その後は特に問題も無く順調に下山し今回の山行を終了した。

今回のルートは昨年様々な要因で敗退したが、私自身はリベンジなんか別にいいのであまり行きたくないと思っていた。なぜならあのナイフリッジはとても怖かったし、何より、数年前の事故の記憶はまだまだ身近に感じるのでとても緊張する。しかし、会の後輩がどうしても行きたいと言うので計画した。計画し始めると、何とか奥穂高岳登頂を成功させたいという思いと、安全に登りたいという思いが強くなったので、日程は4日設定し、色んなパターンをシュミレーションした。山行中はスマートフォンで気象情報を収集し、確実に登れる設定を考えた。そのおかげで皆が登頂し、無事に下山出来たことは本当に良かったと思う。ただ、私個人としては年末からのハードスケジュールに加え、体調不良で非常にしんどい山行でした。また、バリバリ元気なメンバーと同じスピードで登るのは非常にキツイ。詰め込み過ぎた山行はもう止めよう。今年の目標はカレンダーに空白部分を作る事にしよう。


<感想 Ryucyan>

厳冬期の北アルプス、涸沢岳〜奥穂高岳ということで緊張はしていました。また蒲田富士のナイフリッジを歩けることも楽しみにしていました。当日までにブログや図書で自分なりに研究はしていました。特に天気は数日前より入念に確認しました。初日(2日)は渋滞等で到着が遅くなり1,800m辺りまでしか登れなかったので、あっ、やっぱり5日の予備日を使うのだろうなと思っていました。結局、全体的に天気が良かったのと、年末に降った雪で岩稜に雪がよく付いており歩きやすく、蒲田富士を含めてトレースがしっかりとあったので4日の夕方に下山することが出来ました。無事安全に帰って来られたことはリーダーをはじめメンバーに感謝いたします。真冬に奥穂高岳ピークに立てたことで達成感はありました。少し贅沢を言えば蒲田富士のナイフリッジのスリリングが期待はずれでした。山行中の反省点です。1つは奥穂からの下山中にアイゼンが外れたことです。傾斜の無いところで気付きましたが、ややこしい場所でと思えば大変です。キックステップを多用していたので緩んだようです。行動前にしっかりと調整すべきでした。もう一つはジプシーと私で先先に行ってメンバーとの距離をあけてしまったことです。所々、振り返って止まっていたのですが、再び歩き出すとまた離れる感じでした。リーダーに気を使わせました。個人の意識が重要ですが、行動配列もしっかり検討しなければならないと改めて思いました。


<感想 ジプシー>

事前に調べれば調べるほど蒲田富士から向こうの危険個所が心配になり、年末の摩耶トリプルで疲労した膝の心配も相まって、いつになく緊張感を持って臨む山行になった。結果としては概ね天候に恵まれたこと、穂高岳山荘の冬季小屋を見つけ使用することができたことなどから、奥穂に登頂し且つ予備日を使わずに下山できるという成功を収めることができた。私の場合は難所と言われるF沢のコルや白出のコルから奥穂へのルートよりも蒲田富士からのナイフリッジが一番緊張し、人それぞれ感じ方が違うものだと思った。心配していた足の疲労はアミノバイタル・プロというサプリメントを服用したこともあり、最後まで持ちこたえることができた。年末の有馬往復ボッカがよかったのかもしれない。反省点はRyucyanと同じく、勇み足になり後続との距離が出てしまったことと、下りで一人だけわかんを着用して無駄に体力を使ったこと。どちらも初めての厳冬期3000m登山で浮足立っていたのか、もっと落ち着いて行動する必要を感じた。


<感想 山歩渓山岳会 ベタコ>

大みそかのフリーから中2日というハードスケジュールで今回は厳冬期の雪山。トレーニング不足と連日の疲れで全く歩けなかった。今回の山域は今年で3回目。前年のメラ、ちびサンボさんの山行では晴天にも関わらず奥穂を登頂できなかったリベンジとメラ&山歩渓の若手の山行リーダーという二つの要素があった。計画段階でのトレーニングと入念な下調べ、及び天候調査によって、ほぼ完ぺきな登攀となった。


<感想 山歩渓山岳会 M崎>

2011年の雪山教室の受講から雪山を始め2年足らずで厳冬期の北アルプス、日本で3番目に高い奥穂高岳に登頂できた感激を噛みしめており、ちびサンボCL、ベタコSLの的確な判断・ご指導と皆さんのご協力があってこそ実現できたと思います。課題は多くありますが非常に充実した良い経験となりました。

メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

小同心クラック 西穂高岳から間ノ岳山行報告

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