北岳バットレス登攀報告  (報告/Ryuchan)


■日 程 : 2013年7月26日(金)〜28日(日)

■山 域 : 南アルプス北岳バットレス

■目 的 : マルチピッチクライミング

■参加者 :

Ryuchan

K部(山歩渓)
■行動日程

7/26 21:00大阪発(Ryuchan、車で)→翌2:30芦安駐車場着、車内で仮眠

7/27 7:00芦安駐車場で合流→7:35芦安駐車場発(乗合タクシー)→8:30広河原発→10:40白根御池小屋着、テント設営→11:15取付きの偵察に出発→大樺沢二俣→バットレス沢出合→c沢出合→13:40取付き付近着→15:40テント場着 夕食→19:00 就寝

7/28 2:00起床→3:00テント場発→大樺沢二俣→バットレス沢出合→c沢出合→5:00dガリー大滝右手前取付き着→5:25登攀開始→第5尾根(2P、コンテ含む)→Dガリー上部トラバース→コンテ→ブッシュを登る(間違い)→第4尾根までの正規ルートに戻る(2P)→8:55第4尾根1ピッチ目着→フェース→白い岩のクラック→リッジ、垂壁→リッジ→10:50マッチ箱(懸垂下降)→リッジ上のフェース→同左の凹角→枯れ木テラス→ナイフリッジトラバース→城塞ハング〜リッジ→13:00登攀終了→13:15北岳ピーク→14:40白根御池小屋着(テント撤収)→15:10白根御池小屋発→16:45 広河原着(タクシー待ち)→18:35 芦安駐車場着



7/26、東京在住のK部さんと現地集合なので運転は一人。睡魔と闘いながら歌を歌ったりして現地まで車をかっとばし、途中休憩は2回で韮崎インターを出た。南アルプスに行くのは生まれて初めてだが、ナビを頼りに芦安の駐車場に到着できた。缶ビールを1本グイっと飲み3:00前から6:00頃まで3時間強、熟睡できた。

7/27、待合せの7時前になりK部さんに電話をして芦安第4駐車場で合流。共同装備等の支度をしてタクシー乗り場まで歩いて行くが、いきなりちょっとした坂で汗をかく。途中、乗合タクシーが何回か通り過ぎるのでおかしいなと思っていたら第4駐車場まで迎えに来ていたのだ。いらん汗をかいてしまった。7時半の乗合タクシーに乗ることが出来、出発する。途中、車道が狭い所があり、窓越しに見ると高度感が半端なくゾクっとする。無意識に身体を山側の方に倒してしまう。運転手さんが車を止めて白峰三山を指さし説明してくれた。片側通行のトンネルのすれ違いで何度も停車するので広河原まで1時間弱かかった。

▲白根御池小屋

広河原の吊橋の手前に甲斐駒、仙丈、北岳の概念図があったのでK部さんがそれぞれを説明してくれた。一度、それらの縦走もしてみたい。吊橋を越え樹林帯に入ると早速、急登が始まる。1時間ちょっと登りっぱなしでバテテきた。K部さんに離され、足が上がらないのが情けなくなった。5月の連休以来まともに歩いてなかったので完全にトレーニング不足で反省した。途中、第1ベンチ、第2ベンチと2回休憩をとってもらった。K部さんには連れて行ってもらっているのに待たせて申し訳なく思った。白根御池小屋に到着し一息ついてテントを設営する。小屋はすごくきれいな印象でした。泊らないけど。まだ昼前なので当然、取付きまで偵察に出る。アタックザックに明日の荷物を詰めて歩くことにした。それでもだいぶ軽い。すぐ大樺沢二俣に出る。沢には雪渓がまだたくさんあるが、ほとんど左岸の登山道を歩くことが出来る。途中、沢を渡るのに雪渓を歩くがカチカチでアプローチシューズではエッジが効かず慎重に歩いた。c沢を詰めたかったのだが、行き過ぎてしまってd沢をc沢と思って上がっていった。おかげで取付き手前ではガレガレをトラバースすることになる。取付手前は大きく雪渓が残っている。雪渓とガレガレのトラバースや登りを繰り返してcガリー十字クラックの基部バンドに着いた。シュルンドはバンドから3m程度離れていた。明日はここを登るのは難しそうなので、予定通りdガリーから登ることにして偵察を終了した。ちなみにbガリーへのトラバースはもっと悪そうだったので選択外にした。

▲C沢出合
今、登ってきたガレガレの所を降りるのは怖いなぁとK部さんに伝えたら、落ちてあるのか?置いてあるのか?10m程のロープがあり、きれいでしっかりとしていたので残地ハーケンに結んでフィックスを張り難所を降りることが出来た。後で思ったことだが、堅い雪渓ではアプローチシューズと軽アイゼンの組合せは全く役に立たない。帰りはc沢右岸の尾根通しにしっかりと踏み跡がありc沢の出合に簡単に下りることが出来た。下見をしていて良かったと思った。明日はここから登ろう。足早に下って、帰ってビールで乾杯!夕食はガーリックトマトチーズ鍋をごちそうになり明日のために英気を養う。最後のリゾットがこれまた格別だった。明日は2時起き、寝不足もあってすぐに眠れた。

7/28、2時に起床し早々に朝食を済ませる。天気は良さそうで気分高揚しギアを装着する。3時に出発をして取付まで2時間、下見のかいがあって順調に歩いた。取付き手前から3パーティー程のヘンドランプの光が見え、既に取付いているのが分かった。もっと早い人達がいるんだと感心してしまう。1組はdガリー付近、あと2組は第5尾根だろうか?こっちはdガリー大滝手前の残置支点より取付くことにした。

▲バットレス基部
さっきランプの光が見えた3人パーティーが先に準備をしている。話をするとdガリーは出だしがかぶっていて厳しいので第5尾根から巻いて行くようだ。こっちも同じ様に後を追うことにする。5:25登攀開始、1ピッチ目はK部さんリードで第5尾根の稜線まで登る。ルートは易しい。フォローで稜線に出て左に顔をやると富士山がドカーンとあった。2ピッチ目は自分がリードで易しいリッジを登る。ハイマツで支点をとった。平坦な場所に出てロープいっぱいになり立木でビレイをとった。コンテで先のルンゼまで移動して3ピッチ目は易しいルンゼを自分がリード。トラバース手前にビレイ点があったが、ここでもロープいっぱいになった。4ピッチ目はdガリー上部を第4尾根方向にトラバースでK部さんがリード。途中ガレガレの狭いバンドを通過するのが怖かった印象。ホールドもはがれ落ちそうなのでそっと持ったのを覚えている。危ない所を渡り切った所でピッチを切る。ここからはロープのいらない所を踏み跡たどって少しコンテをする。ここで尾根上に枯れ木のある所を登らないといけないのだが行き過ぎてしまった。cガリーまで出てしまい右岸のブッシュ帯を5ピッチ目として自分がリードで強引に登る。登りきるとb、cガリーからトラバースルートの踏み跡に出た。cガリーをトラバースしてこっち方向に歩いて来る2人パーティーがいた。ゴロゴロと石を転げ落としながら歩いていた。やはり、そうとう悪そうだ。こっちは行き過ぎているので左方向に15m程コンテで戻る。正規のルートに戻るが、先のパーティーがまだビレイをしていて詰まり気味になっていた。ここも易しいリッジで6ピッチ目をK部さんリード、7ピッチ目のほとんど歩くだけの易しい所を自分がリードする。やっと第4尾根ルート取付きに出た。詰まっていて待ち時間が15分程あったので物を口に入れる。皆が各場所で取付いて、ほとんどがこの第4尾根に集まるのだから結構詰まるのも分かる。


▲第4尾根1ピッチ目
8ピッチ目(第4尾根1ピッチ目)はK部さんがリードで登る。出だしが結構立っていて、クラックの左右の面がよく滑って登りづらかった。クラックに足を入れてクリアーした。2ピッチ目のビレイ点は数か所あり、前の3人パーティーに先に行くようにと譲ってもらった。2ピッチ目は易しいフェースを自分がリードした。K部さんに易しいルートを探すように言われたが、どこでも登れそうに見える。ルートファインディング能力が劣っている。残置支点もなく支点が作れそうな所も少なかったのでランアウトしてしまう。易しいルートだがちょっと気持ち悪かった。9ピッチ目はK部さんがリードで「白い岩」のクラックを登る。(実際はほとんどスラブ状)10ピッチ目は自分がリードで先のリッジを登る。20m先にV級の垂壁があるから、そこの手前でピッチを切るように打ち合わせをしていた。ちょっと登ってすぐに高さ3m弱の垂壁らしきものが出てきてロープ残を大声で確認したらまだまだあるという。「これじゃないやろう」と思って登り始めた。「あれっ!難しいな」となりA0をしてしまった。垂壁を越えるときれいなビレイ点が出てきて「ここでいいのかな」と思いながらビレイ支点を構築する。垂壁で時間がかかったりして、下からK部さんの声が「大丈夫か?」と言っている。「ビレイ点に着きました」と返したが、その先に垂壁らしきものはない。「あれっ、さっきのがV級垂壁?」全くルートを見る目がない。おかげで今度は自分が渋滞を作ってしまった。K部さんにもルートファインディングが出来てないとお叱りを受けた。11ピッチ目、リッジ突端の「マッチ箱」までK部さんがリードする。

▲マッチ箱ピーク
マッチ箱ピークからdガリー側に10m程懸垂下降をする。12ピッチ目、枯れ木のテラスまでのスラブをK部さんがリードする。ロープが足りないので途中、ピッチを切って13ピッチ目を自分がリードした。ここでも左の凹角を行かなければならないのに難しい尾根通しを行こうとしてしまった。支点に流されたが、すぐに難しいことに気が付き、少しダウンして正規を登る。また時間ロスをしてしまった!枯れ木のテラスからは崩壊後の新ルートになる。崩壊前の形は知らないが、ものすごく激しく崩壊したことは想像がつく。せん断崩壊され残っている鋭いナイフリッジを城塞ハングの下部まで15m程トラバースをする。14ピッチ目としてK部さんがリードで進む。岩の上部先端は力を入れると折れそうでフォローでも足がすくんだ。途中2か所残置ハーケンがあったが思いっきり引っ張ったら岩ごと剥がれそうであった。城塞ハングのビレイ点は残置ハーケンが4,5本かたまってありシュリングが数本巻きつけている物であった。ビレイ時にあんまり体重をかけたくなかったのだが足元が不安定で体重を預けた方が楽になる。15ピッチ目、K部さんがかぶり気味のチムニーをリードで難なく登る。フォローで登ったがリードでも行けそうだった。最終16ピッチ目は自分がリードで階段状の簡単なリッジをロープを外しても良さそうなところまで登る。平坦な場所でロープを外しアプローチシューズに履き替える。雲が出てきて小雨がパラついてきたので休憩をそこそこにして歩く。北岳頂上へは踏み跡をたどって15分程で着く。

▲北岳頂上


13時過ぎに北岳頂上へ着いたがK部さんによく話を聞くと最終のバス、タクシーの時間が微妙らしい。予定では11時に北岳頂上になっていたが途中渋滞や自分ののろまを含めて2時間遅れていた。バスの最終時刻は16:50、3時間半で広河原に着かないといけない。途中テントも片付けなければならない。「バスに乗られへんかったら山に閉じ込めですか?」「そう。」「え〜っ!やばいじゃないですか。」地図の時間を単純に足し算すると4時間20分!これは言うてる場合じゃない。登攀終了の安堵感も放り投げて、気合いを入れなおし足早に下る。肩ノ小屋でジュースを飲みたかったがそれもパス。小太郎尾根の分岐を過ぎ、下りが急斜面になってきて疲れが出てきた。足が痛い。またK部さんに離されて、5分遅れでテント場に到着。時計を見ると地図で2時間半かかるところを1時間20分で下りてきた。「もう大丈夫」とテントを片付けたあと、腹が減っているのでパンを食べ、ジュースを買い、トイレを済ませて再び下山にかかる。あと1時間半、同じペースなら大丈夫そう。しかし、フル装備のザックは疲労困憊の身体に響き、ペースダウン、前に捻挫した足首も痛い。前日の登りと同じく第2、第1ベンチで小休止をとってもらう。沢の音が大きくなり下が近くなってきた。今日の朝、第5尾根で前にいた3人パーティーが自分を追い抜いていく。彼らも16:50の最終を目指して必死に下りて行った。ずっと小走りできたが最後の方は歩くのもゆっくりになってきた。K部さんにまた離されるが、今度はついていかないといけない。でも足が出ない。そうこうしていたら、吊橋が見えてきた。あと5分ぐらい?「今40分、大丈夫や!」

バス停が見えてきた。先に着いているK部さんがこっちに向いて両腕でバツをする。「なんで?」16:50と思っていたのだが16:40が最終で5分前にバスが行ってしまったらしい。ホームページに載っている時間が間違っていたみたい。ガーンとなったが、まずK部さんに申し訳ない。もうちょっと急いでいたら乗れていたのに。自分は明日、休暇を取っていたので別に構わない。K部さんは帰らないといけないので、1台だけ停まっていた予約タクシーの乗客に交渉すると言う。広河原は携帯が入らないのでインフォメーションセンターの衛星電話で留守本部にとりあえず下山報告をすることにする。小銭を集めて電話をかけようとしていたらセンターの方が近寄ってきて、「最終に乗れなかったのですか?」そうなんですと説明をすると、最終のバスが夜叉神峠を過ぎると道路のゲートが閉まるらしいが時間的にまだ過ぎていないので、「今タクシーを呼べば来てくれるかも。」と言ってくれたので配車を頼む。ラッキーなことにジャンボタクシーが1台空いているらしい。一緒に途方に暮れていた3人パーティーも乗れることになり、ありがたがれた。出発寸前にもう4人が下りてきて、またありがたがれた。9人乗車、一人¥1,000で帰れた。無事に駐車場に着き帰れることにほっとした。駐車場横の温泉に入って解散。それぞれの帰路に就く。

K部さん、大変お世話になり、有難うございました。体力、トレーニング不足は反省しています。後は本チャンの経験をどんどん積んでルートファインディング力を身につけたいと思います。またお願いいたします。


メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

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