いよいよ前鬼川へ行く日がやってきた!前鬼の水はとても綺麗だと聞いていたので、ずっとずっと楽しみにしていた。そして、やっぱり前鬼は期待通りの沢だった!
駐車場から黒谷に入り少し下降。前鬼の本流に合流すると直ぐに10mのナメに出会う。上流はまだ先なのに、水は鮮やかなコバルトブルー。気が付くと、自然にニヤニヤしている自分がいる。
▲入渓したばかりなのに、すでに綺麗なコバルトブルー
▲助け合いの渡渉
しばらくナメの上などを各自思い思いに進んでいく。ゆっくり右岸を進んでいくと、2段10mの滝が見えた。すごい水しぶき! ADと釜にドボン。冷たいけど、気持ちいいー!しばらく滝の下で泳いだ後、滝の左岸を巻いた。滝に近いところを登っていたら、こっち側を歩いた方が良いよ、と木の根っこが張り巡らされた崖を松○が教えてくれる。落ちたら危ない箇所は無理は禁物。
滝の頭に辿りついたら、右岸へ渡渉。この部分の川幅は小さいが、流れがある上に床の岩がよく滑る。滑った先は2段10mの滝だ。まずベテランの中○が行く。流石、慎重に確実に進んでいく。そして中○とチャゲのロープに助けられながら一人ひとりゆっくり進んだ。皆が無事に渡れてホッとする。
滝の上は川幅いっぱいの120mのナメだった。赤茶けた床の岩。流水がまさに筆の流れのよう。綺麗だなぁ。ここは、この谷の一番の見せ場と言われるほど。幸せな気持ちでその上を歩く。幸せすぎて、先に進んでいくのが勿体ないくらいだった。
▲120mのナメを歩く
▲大丈夫だったよね?
▲箱状の廊下
この川に来てたくさんの出会いがあった。それは、オタマジャクシ。流れの少ない岩の上や影で沢山泳いでいる。その数、数百億!?岩の上に彼らが集団でじっとしているのを見ると、そこに足を置くのがためらわれる。潰した感覚はないし、私たちが足を置く瞬間に逃げていることを信じたいけど……オタマジャクシさん、大丈夫だったよね?
綺麗な水が好きだ。美しい水がある場所には美しい動植物が育つ。そして、美しい水が湧き出る場所には美しい山がある。山が水を作る。そうやって調和した自然を大事にしたい。山で楽しませてもらっていると、そんなことを思ったりする。
大きな岩がゴロゴロしていて、登れない時があった。困っていると、先に行ったメンバーが岩の上からお助け紐を出してくれた。それを掴んで足をしっかり踏み込み、グググッと引いてもらう。お陰で上がれた。途中で、一歩足を出すとその流れに押されて身体ごと持って行かれそうな早瀬もあった。そういう時もメンバーにお助け紐を出してもらった。無事に渡れたら、今度は自分も次に来る人に同じようにお助け紐を出す。何度かそうやって皆で前に進むことができた。沢登りも思いやりの共同作業だ。
ナメを楽しみながら進んでいくと、箱状の廊下が見えた。綺麗……。どう表現したら良いのか分からないくらい。その後ふと見ると、幾つもの滝が流れ込むポイントが待っていた。まさに沢の合唱。しずくの滝。その中でも何とも言えない佇まいをしている滝があった。美しすぎて言葉を失う。皆、じっとその滝を眺めていた。幻想的だった。あぁ、ここにも神様がいるなぁ。そう、ここは、もののけの世界だ。
▲幻想的な滝
滝の水(湧き水)を一口飲んだ。清らか。お水を飲んで「有難い」という気持ちになったのは久しぶりだった。後で記録を見ると、どうやら15分は皆でそこに佇んでいたようだ。神様の前では時間が止まるらしい。
その後もナメ滝や大きな岩々を横切り越えつつ上へと進んでいく。 落ちたら確実にアウトなへつりもあった。Tankuro、じっくり確実にへつっている。流石である。そして皆が無事に進んでいるか、チャゲが見守っている。ベテランの存在は本当に心強い。
しばらくすると、垢離取場に着いた。ここは行者が三重滝の裏行場へ行く前に水垢離(みずごり:身を清める)する場所だ。ここにも綺麗なコバルトブルーの淵がある。美しすぎて、また勝手に顔がニヤニヤしてしまう。
さて、ここでランチタイム。素麺を茹でるためにお湯を沸かしていたら、急に大粒の雨が降ってきた。そして雷。一気に岩が濡れてしまった。途中で青空が見えていた時もあったのに。天気予報通りの不安定な空だった。ま、どうせもう濡れてるけどね。 食べていたら、また晴れ間が見えてきた。今日は本当に面白い天気だ。よし、お陽様も照っていることだし、コバルトブルーの淵で泳ごう。ドボン大会の開催だ!
▲垢離取場の淵でドボン大会
ひゃー、冷たい!冷た過ぎて心臓の調子がおかしい。呼吸がしづらい。やばいかも知れない。でも水中眼鏡を持参してきていたので気合いで潜ってみる。 わ〜お、水の中も綺麗だな〜。それにしても深いな〜。3m前後(もっと?)はあったと思う。足は底に着かなかった。水が冷たくて身体が一気に冷えてしまい、淵から上がったら歯がガチガチと音を立てた。
▲垢離取場にて
予定では垢離取場をピストンするはずだったが、雨で岩が濡れていて危ないというリーダーの判断。パラパラした雨の中を前鬼宿坊(小仲坊ロッジ)まで登山道を、その後は車道を歩いた。宿坊ではトイレをお借りした。ありがとうございました。
駐車場に着いたら、沢靴とスパッツを脱ぎながら蛭チェック。あちこちで「ギャー!付いとる!」「わしも付いとる!」「助けて〜」という声がする。チャゲがピンセットで蛭を摘んで塩入りの瓶に入れ、「蛭の塩漬け、今晩のおかずにどうや?」などと言っている。こんな風にして地道に蛭退治する人たちがいるそうだが……気の遠くなるような作業だ。Mahoも塩持参で振りかけていたが、何と自分の左の足を吸われていた。私は今回はぎりぎりセーフ。素足に短い靴を履いていたカノンも何故かセーフ。帰りは温泉に入り汗を流した。温かく滑らかなお湯が疲れを癒してくれた。その後、無事に帰路についた。
前鬼は一度行ったら誰もがまた訪れたくなる沢だと思う。年中夏だったら良いのに。そんなことを思ってしまうほどに美しく素晴らしい沢登りでした。 前鬼川、そして一緒に歩いてくださった皆さん、ありがとうございました!
(今回の蛭収穫13匹。被害者1名。)