初級雪山教室 立山修了山行報告  (報告/Ryuchan)


■日 程 : 2013年5月2日(木)〜5日(日)

■山 域 : 北アルプス 立山

■目 的 : 初級雪山教室の修了山行

■参加者 :
テント1班

Ryuchan
(リーダー)


けい
(食料)


mariko
(医療)
テント2班

ZONO
(食料)


ジプシー
(装備・渉外)


○玉
(装備・渉外)
■行動日程

5/2(木) 先発隊(○玉、mariko、ジプシー)10:00 JR西宮駅より○玉車で出発、後発隊(Ryuchan、ZONO、けい)20:20 JR東淀川駅よりRyuchan車で出発→立山駅前駐車場にて車内拍

5/3(金) 6:10立山駅ケーブル発、バスを乗り継いで室堂へ→7:55室堂より行動開始→9:10〜9:25雷鳥沢で休憩(アイゼン装着)→10:45〜11:05別山乗越で休憩→11:35剱沢テント場着→13:30テント設営完了→18:50就寝

5/4(土) 3:30起床→6:50出発→7:35〜7:50別山乗越(トイレ休憩)→8:20別山→9:30真砂岳→10:50大汝山休憩所→11:35〜11:50雄山→15:05別山→16:20剱沢BC→19:10〜20:05反省会→20:30就寝

5/5(日) 4:00起床→6:45出発→9:50室堂→10:00〜11:00バス・ケーブルで立山駅へ→11:40〜13:20温泉と食事→21:30〜22:30尼崎・西宮・神戸着



はじめに

今年度の初級雪山教室の修了山行参加者はジプシー、けいの二人になってしまった。他に対象者でぶーちゃん、いろり、JIKA-TABIがいたがぶーちゃん、JIKA-TABIは個人的用事で不参加、いろりは修了山行参加資格が未到達。ぶーちゃんは去年に立山の縦走を経験しているが、いろり、JIKA-TABIには是非、来年度に挑戦してもらいたい。

メラピークKOBEで行っている初級雪山修了山行の立山縦走は剱沢でテント設営をするようになっていて、そこまで別山乗越を登り越えるボッカ力が必要になる。縦走中には急斜面の雪面の登り、下り、そしてトラバースで確実なピッケル、アイゼンワークが必要になってくる。他にテント設営、生活を含めて初級レベルの総合的な技術を要する。これらをクリヤーして次の雪山山行につなげてほしい。

ジプシーは教室にはトレーニング、県連山行を含め全ての山行に参加し技術の向上に努めてきた。けいは仕事の都合で皆と一緒に参加がなかなか出来なかったが、他の日に補講山行を行い同じく頑張ってきた。二人とも元々体力が我々スタッフよりあるので、この修了山行で心配することは無い。僕自身も今期最後の9回目の雪山山行を楽しみたかった。経験数ではまだまだリーダー資格の有無を問われるが○玉、marikoに助けていただき、何とか無事に修了山行を終える事が出来た。楽しくかつ新たな経験も出来て有意義な山行になったと思う。○玉さん、marikoさん、ありがとうございました。



行動報告
5/2

先発隊と後発に分かれて車で出発する。○玉、mariko、ジプシーは午前中に出ているので向こうでゆっくりできるであろう。こちら後発隊もけいが早めに仕事を片付けてくれたみたいで予定より早めの20時過ぎに出発が出来た。出発前にジプシーからメールがくる。「テントのポールを忘れた。」と装備表通り保管者がRyuchan、装備者がZONOなっていたので、まだポールは大阪にある。先発運搬の受け渡しを忘れていた。おかげで○玉ら3人は車で寝ることになり、翌日は○玉の腰が痛くなった。しかしその日は雨が降っていて、いずれにせよテント泊は厳しかったみたい。僕らの後発隊は翌2時過ぎに到着が出来て、5時起床まで3時間弱寝る事が出来た。


5/3

例年通り、ケーブルとバスを乗り継いで室堂まで上がる。渉外担当のジプシーが早起きをしてくれてキップを購入。昨日の雨天がうって変わって晴天だ。予報では3、4日は上空に寒気が下がってきているみたいで、少し不安定な天気が予想され、5、6日は落ち着いた晴れになるとの事。室堂に着くとここ2、3日の降雪で春山にしては山の斜面が純白に染まっていた。奥大日方向を眺めると雪庇が張り出している。まず、きれいな景色が堪能出来て満足する。

▲室堂より さあ出発!!
室堂のターミナルを出た所で各自装備を装着する。ジプシー、けいの順で8時前に出発する。絶景を楽しみながら歩きだすが、普通にしているとペースが早いので、ジプシー、けいにはとにかくゆっくり歩くようにお願いする。1回目の休憩を雷鳥沢を登りだして少しの所ですることにした。休憩ついでにアイゼンを装着する。○玉は腰が痛そうで何回も上半身をかがめていた。ZONOも久しぶりの重装備の本チャンでバテ気味だ。再び急こう配の雷鳥沢をゆっくりと登りだし、別山乗越に着くと一安心。トイレもして少し長めの休憩をする。剱沢のテント場まで下りると既に10張り程あり、兵庫労山の神戸労山、武庫労山の方々と同じテント場になった。ちょうど2つ並んで張れるスペースがあったので、そこで整地を行った。スノーソー、スコップでブロックを切り出し風除けを積む。これをしっかりやらないと風で雪が吹き溜まって後で大変になる。1班、2班に分かれてテントを張って荷物を入れ、中でお茶を沸かして一休みとする。

当初は夕方まで雪上トレーニングをする予定だったが雪面が溶けて柔らかくなっていて雪上のトレーニングにならないと言う事で中止にする。明日、朝少し早起きをして固い面ですることにした。16時に天気図の作成まで時間があり、お茶を再度沸かしたりした。やっと16時になり天気図を書く。高気圧が近づいており明日は好天が予想されていた。早めに食事を済ませ、寝不足なので就寝に着く。夜中に強風と地吹雪でテントがたたきつけられる音で目が覚めた。まだ12時前だったが、そこから起床の3時半まで音がやかましくてほとんど眠れなかった。


5/4

立山雄山までのアタックの日、3時半起床、まだ暗い。朝から地吹雪がハンパでない。降雪は無いようだが雲がかかっていて星は見えない。横のテントの○玉が何かこっちに言っているが風の音で聞こえない。吹雪が収まるのを見込んでしばらく様子を見る事を○玉に伝えたかったので外に出た。2班のテントが吹き溜まりで半分ぐらい埋まっていた。入口が完全に閉ざされて出れない様になっていた。西側のブロックの積み方が甘かったのだろうか?風の通り道が出来てしまった。僕も少し話をするつもりで軽装で出てしまったので、めっちゃ寒い中、とりあえず入口付近の雪だけどけて、「これで出れますよね。」と早々に自分のテントに引き返した。予定では5時半出発となっていたが、風が収まるのを期待して6時頃まで様子を見る事にする。メンバーに6時半頃に出れる様に準備をお願いしておく。2班は朝食を早々に済ませテント周りの吹き溜まった雪をかきだしている。6時が過ぎたがさほど風の変化は無い。雪が降っての猛吹雪になれば行動中止の判断になるのだが、このぐらいが難しい。予報では天気は良くなりそう。初級の修了山行なので慎重に考えないといけないが、ジプシー、けいの力量を考慮して出発する決断をした。

6時50分出発、歩きだすと晴れ間が見えてきた。風は収まっていない。出発時間が遅くなったので朝一番の雪上トレをパスした。ジプシー、けいのアイゼンワークは問題ない。剱御前小屋でトイレ休憩をして、別山へ。別山への登りでは氷が張っている所が出てきた。アイゼンを効かせて慎重に登る。

▲別山ピーク
別山からの下りでは石ころ道と雪面のミックスになっていた。トレースがはっきりとしているので問題なく下りる。真砂岳への稜線は雪庇に近づかない様に岩稜帯と雪面の境を歩く。

真砂岳へは他のパーティーは夏道のトラバースを行くが、我々は稜線を行く。なんか風が強くなってきた感じで天気は良くなりそうではない。休憩をして口に物を入れたかったが風のせいで中々、休憩できる所がない。真砂岳ピーク付近で○玉がここで休憩しようと岩陰を見つける。気持ち風をしのげて水とレーションを口にする。

富士ノ折立は雪が多めについていた。岩稜が見えている所は滑らない様に慎重に登った。時々、急な雪斜面をキックステップで登ったがアイゼンがしっかりと効いて、雪質には恵まれていた。
ジプシー、けいも問題なくアイゼン、ピッケルワークをこなしている。やっぱり二人は全然大丈夫。意外とこの天候でも歩いているパーティーは多くて、常に人の列が見えていて、行きに関してはルートファインディングを必死にすることは無かった。それでも出来るだけ易しい所を歩くように努めた。折立のピークを過ぎてそのまままっすぐ行くと雪庇に向かうので少し角度を右にむけて出来るだけ岩稜に近い所を歩く。大汝休憩所の屋根があらわになっていた。風裏を探して休憩にする。屋根の下の窓から人が出てきた。休憩や避難が出来る様になっている。普段、窓が釘で止められているが抜いて開けられるようにバールが置かれている。○玉が窓から出てきた人に開け方を教わり、試してみる。

雄山へまでは渋滞になってきた。marikoが「こんなの初めてだ」と言う。冬道を皆が並んで歩いている。一昨年に僕が歩いた時は○玉先頭にもっと下部をトラバースしていた様な記憶があり、全然違うコースを歩いているようだ。どこかのパーティーかガイドさんが張ったのか連続してフィックスロープが張られている。最後の神社前では人がつっかえて時間がかかった。我が隊11:35雄山到着、祠前で写真を撮って早々に下山をする。

▲雄山ピーク

下り口も登りの人と下りる人が交代に譲るので時間がかかる。登る時に見たフィックスロープの末端がシュリングに掛けられていた。そのシュリングは岩に引っ掛けていたが岩へのかかりが甘い。ロープの繋ぎ目も結びが甘そうだったので、あまり信用できそうにない。しかし歩いている人はそれがそこにあるから皆、掴んでいる。

相変わらず風は収まらない。下りでは西からのブリザードで顔面左が痛い。目出帽の顔があらわになっている所を左手で終始隠して歩いた。下山後に分かったがZONOは左頬の一部が軽度の凍傷になってしまった。富士ノ折立での下りは慎重に一歩一歩アイゼンを効かしながら下る。時々急な所はバックステップで下りたりもした。僕は角度がつくと正面を向いて下りるよりバックステップになった方が楽で早く下りれるので、そうする。ジプシー、けいもアイゼン、ピッケルを効かしながら慎重に下りる。二人はこれまでの雪山山行の成果が出ているに違いない。楽勝で歩いている。僕は出来るだけ歩きやすい所を探そうとするが、時々後ろの○玉からこっちの方がいいと指示が出る。やはり下りのルート取りは少し難しい。視界も悪くなってきた。

真砂岳手前で行きはピークを通ったが、帰りは夏道トラバースを通ろうと頭にあった。しかし道間違いをしてしまった。手前の大走りの方を左に入ってしまった。それでもトラバースでまた稜線に帰るように地図ではなっていたが、ちょっと下りすぎた。「トラバース道でこんなに下ることは無い。」行きで言えばこんなに登ることもない。おかしいと思って止まった。そうこうしているうちに視界が無くなりホワイトアウトになってしまった。なんか雪面も良く分からなくなり、地面と空間の境も分からなくなってきた。ここまでは初体験である。そもそも来た所を帰るだけなので磁石を合わせていなかった。怠慢である。それほど下っていないので現在地は想像つくが、marikoにGPSを出してもらって確認する。現在地が把握できたので登り返す。来た道を登り返すか迷ったが磁石を合わせてショートカットを選んだ。そこそこの斜面をトラバース気味に登っていく。この斜面の角度は雪崩が起きるかもしれない角度だ。雪質は良く締まっていて、アイゼンも良く効く。大丈夫だと思い登り返す。30分ほど時間と労力を無駄にしたが、稜線に出れた。

少し歩くとやっとここが真砂岳。結局ピークを通ることになった。一人の登山者が立っていた。よく見ればずっと後ろを付いて歩いてきた人だ。知らぬ間に僕らとはぐれたみたいだ。僕らが道を間違ったのだから当たり前だが。一人じゃ不安だったのか再会できてホッとしている様子。剱御前小屋まで一緒に帰る。別山への登り出しの入口が良く分からなかった。2度程、岩稜を登ろうとしたが、○玉に「まだ左や」と指示を受ける。稜線通りに登りだしてしまいそうになるが、そっちに行けば厳しくなったであろう。○玉の指示通りに行けば看板が出てきた。左が巻き道で冬は危険、右は別山とあった。行きも見たはずなのに忘れていた。「看板が出てきたら右を登る事」を忘れない。ZONOは疲れていそうで別山への登りでペースダウン。久しぶりの縦走をよく頑張った。腹が減って辛抱たまらんので別山ピークでレーションを口にする。

別山からの下りを慎重に下りる。相変わらず視界が悪い。5m先が見えなくなってきた。磁石を合しているが歩幅を細かく歩く。斜面が急になってきたら切れている所かもしれないので立ち止まる。よく見たらトレースが見えるのでゆっくりとトレースを確認しながら下りる。道中に何回も雷鳥と出会った。けいはすかさず写真をとる。視界が悪いのでよく出てきた。磁石は剱御前小屋に合わせているが、道は少し左方向にある。小屋手前で大きく右に下る。その時には小屋の屋根が見えてきた。同行してきた一人の登山者とここで分かれる。ご丁寧に礼を言っていただいた。小屋前でトイレ休憩をする。○玉は「先にボチボチ下りる」と歩きだす。休憩後、視界が無い中、旗を頼りに最後の下りを歩きだす。旗に近づいてやっと次の旗が見えると言った感じで、旗の感覚は視界のギリギリだった。途中、ピンクの旗が無くなっていて竹棒のみになっているものあった。少し経ってから○玉らしき声が聞こえて返事を返すがそこから応答がない。また声がする。○玉の様だ。全員で再度声をかける。○玉は旗を見失ってだいぶ右の方を歩いていた様だ。○玉は我々の声の元に帰ってくる。合流すると今度はZONOがいない。少し待っているとZONOの姿が見えてきた。ZONOも旗を見失って我々の声の方に歩いて来れたらしい。16:20無事にテント場に着きお疲れ様。早々に夕食をとり、その後反省会とミニ宴会をして就寝に着く


5/5

昨日の反省会・ミーテーィングで大日縦走をどうするかとなった。ZONOの疲労が激しく一人室堂への下山を希望していた。話し合いの中、全員で室堂への下山となった。その晩、風は収まってきたが今日と同じような天気になると心配なんでそう決断した。あのきれいな奥大日の稜線は歩いてみたいので、また機会を作りたいと思う。
4時に起きてみると剱岳がきれいに見えていた。天気はよさそうだ。けいがここぞと写真を撮りに行く。テントを片付けて下山する者や、まだこれからアタックをする者などいろいろなパーティーがいた。こちらは食事をすませテントを片付ける。ジプシー、けいにキップの購入を頼み彼ら二人は早々と歩きだす。僕も着いて行こうと思うが帰るとなったら急に疲れが出てきた。結局、晴天無風でめちゃくちゃ暑い。少し離されるがなんとか付いて行った。○玉、mariko、ZONOはゆっくりと歩いている。雷鳥沢の下りは雪がまだ固かったので少し疲れた。腐っていたら滑らしながら楽に下りれるのに。登り返しは汗が噴き出て、昨日と全然違う感じ。室堂に着くと小さい子供があちこちでキャッキャとはしゃいでいる。初級雪山教室の修了と今シーズンの雪山の終わりを告げられた。バスとケーブルを乗り継ぎ立山駅駐車場へと下りる。温泉に入って帰路に就く。

▲剱岳をバックに

メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

塩見岳春山トレ 雲の中の剣岳別山尾根

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