八ヶ岳 旭岳東稜  (報告/ちびサンボ)


■日 程 : 2013年2月22日(金)夜発〜24日(日)

■山 域 : 八ヶ岳

■参加者 :

ちびサンボ

K部(山歩渓)
リーダー

S間(無所属)
■行動日程

22日(金) : 大阪22時発甲府行き夜行バス乗車

23日(土) 曇りのち晴れ : 6:15韮崎駅にてK部、S間と合流→美しの森駐車場で準備し7:45出発10:55出合小屋着→15:30約2400mの稜線上で幕営→19:45就寝

24日(日) 雪時々晴れ : 3:30起床→6:00出発→8時過ぎ取り付き着→9:45左の灌木帯ルートより登攀開始→15:15旭岳頂上着→16:15ツルネの頭着→18:30出合小屋着→20:30美しの森駐車場着→22:10甲府行き夜行バス乗車→翌7:00大阪着→出勤




旭岳東稜は2年前に県連の練成山行でトライしたが大雪で敗退。その時私は参加していなかったが、K部リーダーは参加していたので途中までのルートは経験済み。ポイントはラッセル。力あるメンバーが必要で色々声を掛けたが4人しか集まらず、それでも決行する事に。しかし、1週間前に1人減り3人でチャレンジする事になった。



23日6:15頃韮崎駅に夜行バスが到着。東京から車で来る2人は4時に集合し5:30に着いていたそうだ。待たせてごめんなさい。美しの森駐車場は車1台ぐらいしか停まっていない。かなり冷えてるので寒い。装備分担して7:45出発。出合小屋までは面白くない歩きだが、鹿の大群に遭遇!向こうの方が恐れているが、向こうが本気で向かってきたらと思うと怖い。途中から雪道に足がハマりだす。途中でK部さんのスパッツが左右逆なのに気が付く。「何で?」と聞くと、「寒くて訳が分からんようになった」と、意味不明?途中からワカンを着ける事にするが、K部さんが「よー分からん」とモタモタして着けられない。「今更何でやねん!」と言いながら着け方を指導する。それを見ていたS間さんは「漫才みたいですね」と言うが、私達はいたって本気でやっている。無事ワカンを着けて歩くがトレースを外すと膝まで潜る。ウンザリしながら出合小屋へ到着。ここから以前はアイゼンに変えたらしいが、とてもワカンなしでは歩けない。アイゼンワカンに履き替え出発。傾斜が強くなってくるとさすがにワカンが邪魔になるので稜線に上がった所でワカンを外す。そこからトップをS間さん、ちびサンボで交代しながら登る。

▲旭岳東稜の稜線歩き
途中からかなりやせ細った稜線になる。3メートルほどのクライムダウン。その後の岩稜はアイスバイル2本を頼りに下降するがなかなか手ごわい。足元が見えず、雪稜に足が決まらず、岩に足が届かず死にそうだ。「2年前は懸垂で降りた」とK部さんが言う。そりゃその方が安全だ!標高2200m付近から幕営地を探しながら登る。この傾斜は凄いぞ!見た目80度だが、実際は60度ぐらいなのだろうか?ここを登って良い幕営地が無かったら降りてこないといけない。でもこの辺の横の斜面は雪崩そうで危ないので登る事にした。

▲旭岳東稜 核心部尾根全容
急斜面の雪稜は足が決まらず落ちそうになるが、中間部から上部は凍った草付きと木にアイスバイルを引っ掛けながら慎重に登る。何とか滑らず登って稜線を先に進むと、テントを張れそうなスペースを見つける。一応、S間さんにその先を見に行ってもらうがやはりここがベストなようだ。深雪を均して(全く均せなかったが)幕営する。2年前はこの手前の急斜面が登れず時間切れで敗退したそうだ。晩御飯はK部シェフのキリタンポ鍋、決め手は野菜のセリとゴボウを入れる事。ゴボウの下ごしらえに拘りがあり、非常に美味しかった!私とK部さんは一緒に山へ登る機会があるが、S間さんと私は初対面での山行。S間さんが一番年下だから何かと気を使ってくれていたので、緊張を解そうと色々声を掛けたが余計に怖かったかも。だって、妻に「怖いちびサンボさんと一緒に登るの?」と言われて来たそうだから…皆で話をしている内にそれなりに打ち解け、それぞれ持ち寄った酒やつまみを楽しんで就寝した。

24日3:30起床。0時頃起きた時に空を確認したが、月も星も出て無くて少し雪が降っていた。今朝は深々と雪が降っている。これは大変なラッセルになる事が予測された。ラーメンと雑炊で腹ごしらえをして出発準備。いつもテントの中で全ての装備を着けるが、今回は狭いのでなかなか大変。S間さんは靴だけ履いて早々に外へ出て身支度をしてくれた。狭い稜線の上なので油断すると落ちそうになるから危険だ。暗い中での狭い稜線歩きは危険なので少し明るくなる6時をめどに出発した。うっすら残っているトレースを探して登るがかなり大変。30分程登った所で私の背の高さ以上のラッセルになる。雪を掻いても掻いても、膝で固めようとしても全く固まらない雪に辟易。K部さんが交代してくれるが同じく無理。少しトラバース気味に登ってチャレンジ、少し登れたが岩壁で敗退。S間さんに交代するが登れない、すると「ラッセルありがとうございます!」と後続から元気な男性3人パーティーが現れる。出合小屋を5時頃出発して来たそうだ。空荷にしても早い!これは救世主が現れたとばかりにラッセルを交代してもらう。


▲五段の宮手前のラッセル
このルートは経験有で、東京と横浜の山岳同人仲間だそうだ。これで5段の宮は彼らに先を譲る事になるが仕方無い。3人なら間違いなくここで敗退を余儀なくされただろう。経験が有り、力のある彼らに先を言ってもらう事にして登るがそう簡単では無かった。男性なら胸までだが私は自分の背の高さまであるラッセル。余計時間が掛かると思って一度遠慮して下がったが、やはり皆たいして進めない。6人で交代してラッセルした。5段の宮取り付きに着くが、どこが岩の弱点なのか分からない。


▲五段の宮 全容
最初、先行パーティーも左から巻くと言っていたが、準備している間に闘志が湧いたのか5段の宮にトライする事に。しかしそう簡単では無く、1段目は左に巻いて2段目から岩稜を登り3段目の手前でピッチを切った。そこはいい支点が無く、後続で私達が登るのは時間も掛かるし困難と判断したので、左の灌木帯の雪壁を登る事にした。

▲五段の宮 左の灌木帯ルート
しかし、ここもかなり傾斜が強く、凍った草付きと岩のミックスで緊張を強いられる登りだった。一部外傾しており、先週の氷柱アイスクライミングより難しいと感じたが、その経験を生かしてダブルアックスと足を使って登った。途中、手が冷たく、腕はパンプして死にそうに辛かった。「よくリードで登ったね!」とS間さんに言うと、「途中、諦めようかと思いました」と、やはりリードは相当難しかった事だろう。そこからも岩稜のすぐ左の雪壁を詰めるがどこも決してやさしくは無かった。5段の宮の4段目までを左のルートから3ピッチで登った。最後の5段目は先行パーティーの後ろについて痩せた雪稜を行くが、深雪は不安定で少しでもトレースから外れると落ちそうになり怖かった。

▲時々、こんな晴れ間も!


▲きのこ雪のついたナイフリッジ
その後もきのこ雪に注意しながら細い雪稜を3ピッチで登る。最後の三角ピークは一見直登した方が登りやすそうに見えたが、かなり状態が悪い。先行パーティーが左にトラバースするルートの雪を払いながら登っていく。ルートが明瞭になるとさほど難しくは見えなかったが、支点が無いのでリードは緊張する。

▲旭岳頂上手前の稜線
15時過ぎ旭岳頂上へ。稜線に出た途端西風が強く飛ばされそうになる。早々にロープを片づけ下山へ向かうが、ツルネの頭までは稜線歩き。何度か耐風姿勢を取るため立ち止まりながら、ツルネ東稜の分岐を見つけ稜線の下降へ。風が少しマシになった所で少し休憩。「飛ばされるかと思ったね」と話しながら下山を急ぐ。途中、権現沢への分岐と間違いそうになるが、ちょうど下山していた先行パーティーが「左が正解ですよ」と教えてくれたのでそのまま左の稜線を下山する。暗くなる前にヘッドランプを着けひたすら降るが、時々膝下まで雪に潜りしんどい長い下降だった。18時半出合小屋着。ここで先行パーティーと、天狗尾根を下山してきたパーティーは片づけをする。私達はアイゼンを外し少し水分補給して再び下山。20時半に美しの森駐車場へ着いた。ここで私は関西へ帰る方法を考えないといけない。どうあがいても今日中には帰られないので、明日朝一番早く帰られる甲府からの夜行バスに乗るため車を走らせてもらった。何とか甲府駅発の夜行バスに間に合い、翌朝関西へ帰り、そのまま仕事へ行く事が出来た。



今回、私達3人ならラッセルで取り付き前に敗退していたかもしれないが、経験有の力あるパーティーが登場したので、取り付きで少々時間が押していたが突っ込んでしまったのが下山遅れに繋がってしまった。先行していた経験者の話によると、5段の宮は雪が少ない方が難しいとの事であった。今回はたっぷり雪が付いていたので良かったのかも知れないが、雪払いしながら、手掛かり足掛かりを探しながらの登攀はかなり時間が掛かった。また、どこもかしこも深雪に足が取られ大変であった。重荷での登攀は困難なので、天候や力量によっては出合小屋で荷物をデポして登攀する方がいいように思う。また、左の雪稜は支点が無いので、灌木とイボイノシシを使ってランナーを取る技術が必要である。私はがっちり決まったイボイノシシの回収が出来なかったのでK部さんにお願いしてしまった。色んな事があったが、結果として、旭岳東稜は冬季アルパインの総合力が必要とされるルートであり、無事完登して下山出来た事は良かったと思っている。しんどく辛い山行ではあったが、充実感があり楽しかった。5段の宮は登攀出来ていないのでチャレンジしたいし、もう少し良い条件の時に登ってみたい。反省点は山ほどあるが、今回の山行を教訓に次に生かしていきたい。オールリードで登攀し、ラッセルも積極的にして下さったS間さんが居なかったら登れなかったかも知れません。S間さん、本当にありがとうございました。リーダーのK部さん、ありがとうございました。

メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)


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