兵庫県連練成山行 宮崎比叡山・雌鉾岳クライミング  (報告/ちびサンボ)


■日 程 : 2012年11月1日(木)夜発〜4日(日)

■山 域 : 宮崎比叡山・雌鉾岳

■参加者 :

ちびサンボ

他、県連メンバー
A班:I佐―K谷、M禮−G番、N岡−K尻、(須磨労山)Y谷−O田
B班:F上−K日、M本−Y田、K寺−ちびサンボ

■行動日程:

1日夜:21時JR三宮駅南側ロータリー集合、愛媛県・八幡浜港(2:50)〜臼杵行きのフェリーへ乗船

2日(晴れ):5:20臼杵港着、宮崎県鹿川へ。比叡山駐車場着、A班は比叡山へB班は雌鉾岳へ

雌鉾岳駐車場(9:10)、雌鉾岳取り付き着(9:45)、登攀開始(10:10)、雌鉾岳頂上着(13:35)、頂上から1ピッチ懸垂後、坊主の下より下山開始(15:40)、宿泊先着(17:00)

3日(晴れ):5時起床、7時出発、A班は雌鉾岳へ、B班は比叡山へ
比叡山駐車場発(8:00)、ニードルの取り付き着(8:45)、登攀開始(9:10)、ニードル頂上(11:15)、下降開始(12:00)、比叡山第一スラブ1ピッチのみ登攀、懸垂で駐車場へ(15:00)、晩餐開始(18:30)

4日(曇り):5時起床、7時出発、往路を戻り、20時頃帰宅




2日、本州から淡路島、四国を渡り九州へ。直接比叡山の麓の駐車場へ集合し、パーティー毎に分かれる事に。ここで雌鉾岳へ向かうパーティーが車1台に乗り合わせて出発するが、この時、手荷物用に分けていたエコバックを車に積み忘れた。カメラ・飲み物・レーション・トポ図などを入れていたのに、途中で思い出したがかなり走って来ていたので戻る事も出来ず、飲み物や食べ物は皆に分けてもらってカメラは諦める事にした。9:45雌鉾岳の取り付きへ到着。以前とは違い、壁が乾いていて快適そうだ。K寺君は初めての岩場なのでメジャーな大長征ルート(美しいトラバースルートから中央バンドを右端までトラバース、上部は大滝左ルートを登りピークに抜ける合成ルート)を登ろうと決めていた。下部は先行のF上パーティーも同じルートを登るので、下部だけ少しルートを変えて登る事にした。トポ図を忘れてきたのではっきりとは分からないが、何となく覚えているルートの説明をして、ピンが少ないのでカムを使えそうな所は使うように説明して登ってもらう。基本的につるべで登ろうと決めていた。

▲雌鉾岳 美しいトラバースルート下部スラブ
1ピッチ目K寺君リード、1ピン目のペツルは見えたがその後は全く見えない。かなりランナウトして登った。2ピッチ目、ここもピンが全くない。フレークにカムを掛けようとするがフレアー状になっておりカムが掛からない。壁の傾斜は緩いので滑らなければ大丈夫だろう、諦めてノーピンで次の支点まで登った。3ピッチ目、次の支点はペツル3本光っているのが見える。その上に大木があるが、そこまではギリギリロープが届かない気がする。ペツルまで登ってロープの長さを確認して、上まで行けそうなら行きますというのでその方法で登ってもらう。ペツルの所でロープ半分位。私は数メートル足りないと思ったが、足りなかったら手前のクラックでカムを掛けると言うのでそのまま登ってもらう。大木まで後3mぐらいの所でロープいっぱいになった。やっぱり足りない。先行していたF上さんが私のビレーを外して少し上がってもらえと言うので、ビレーを外して少し上がった。3mほど上がったピンの所が安定しているのでそこで待機。K寺君にビレー体制を取ってもらって登り直した。後からトポを確認すると、やはりここは4ピッチで登っていた。4ピッチ目、右上しながらトラバースルートへ入る。

▲美しい中央バンドのトラバース
5ピッチ目、バンドのトラバース。フレークは剥がれそうなので、遠い間隔で打ってあるペツルだけで支点を取ってトラバースする。5ピッチ目、ここからが美しい中央バンドのトラバースへ。少し右へ上がりまた下がってトラバースするが、ここのトラバースはホールドもスタンスも細かくて怖い。ちょっと緊張した。6ピッチ目、足元は安定しているトラバース。7ピッチ目、大滝左ルート上部への取り付きまで約15mトラバース。

▲大滝左ルート 上部スラブ

8ピッチ目、ここからスラブの核心で壁が立ってくる。ここは順番でいくとK寺君のリードだが、ちびサンボがリードする事にした。先行のK日さんがリードで登っているが、怖くて3ピン目まで登れないと言っている。諦めて降りてF上さんがリードで登った。以前はここで雨が降ってきてものすごく怖い思いをして登った所だ。今回は恐怖感はあまりなく快適に登りだしたが、核心の3ピン目を取る前に先行を待って止まると、スタンスを見失って足が止まってしまった。スラブは止まってはいけない。右足が滑る前に左足を出す、左足が滑る前に右足を出す、トカゲのように登らないといけないのに止まったので怖くなった。だんだん足が滑りそうな気がしてきたので、思い切って左足を上げたら右足が少し滑った。躊躇せずすぐに右足を上げて何とか登りだす事が出来てホッとした。9ピッチ目、F上さんのルート取りを良く見て、支点を確認して登るようにK寺君に伝えて登ってもらった。ここはスラブを登って上部へ抜けるので声が届きにくくなる。何とか声を張り上げてビレー解除まで出来たが、右のロープが全く上がらない。しまった、右のフレークにロープが引っ掛かっている。ここのフレークに引っ掛かるとロープが引けなくなるから、上に上がったらロープを回すか、引っ掛からないようにカムを掛けないといけないと聞いていた。その話をF上さんとしていたが、いざK寺君が登る時にその事を伝えるのを忘れた。何度も声を張り上げるが伝わらない。ロープを引けば引くほどフレークにロープが食い込み、ますます抜けなくなる。時間ばかりが掛かるしどうしようも無い。落ちなければいいんだ!意を決して左のロープ一本で登る事にした。右のロープを垂らして登り始めたらペツルに引っ掛かったので少し下がってロープを肩に掛けながら登った。ここのスタートは猫の乳首のようなホールドとスタンスを使って登らないといけないのでかなり緊張する。「落ちない、滑らない、大丈夫」と自分に言い聞かせながら、足元が少し安定するところまで登った。そこでもう一度ロープアップしてもらってK寺君のところへ到着。ああ怖かった。10ピッチ目、ここは前回奥まで抜けて全く声が届かなくなったので2ピッチに切る事にした。少し上がって約20mの所でピッチを切った。11ピッチ目、坊主の下部をトラバースする感じで最終ピッチ下の終了点までいく。やはり岩を巻くので声が届かない。滝の音で声がかき消されてしまう。K寺君と決めていた合図でビレー解除して登りだした。12ピッチ目、クラックの登り。ここも以前は疲れ切っていたのと、濡れたクラックを上手く登れず講師に引き上げ気味にしてもらって登った所だ。今回は頑張ってリードで登った。カムを一つ掛けて右側のクラックから登った。岩が乾いていたからか案外すんなり登れた。約3時間半で頂上へ着いた。頂上で少しゆっくりしたが、寒いので坊主の下に下がってM本パーティーを待つ事にした。ダブルロープで1回の懸垂で坊主の下の下降路に着いた。M本パーティー到着後、皆で宿へ移動した。

▲雌鉾岳ピーク 二の坊主の頭

3日5時起床、ご飯とみそ汁の朝食後、7時に出発。比叡山はニードルを登って、時間があれば第1スラブのノーマルでも登ろうと考えていた。千畳敷から約15分のところに取り付きがあるとトポに書いている。一般道から回るが、どんどんニードルから遠ざかるばかりで近づかない。これはおかしい。ニードル北面から登る予定にしていたM本パーティーも一緒に取り付きを探す。壁の下を目指すが、私は位置的にもっと戻らないといけないと思った。千畳敷から直ぐにニードル正面へ入るルートがあったのを見落としたんじゃないかと思ったので、一般道をかなり戻って正面へ回り込めそうな踏み後を見つけて行った。正解!フィックスが張ってあり、回り込むと綺麗なプレートが付いていた。見ると取り付き前には千畳敷から来る明瞭な踏み後があった。左ルートはVI級のスラブ。これは無理。右もダブルフレークの難しい方と、簡単なIV級ルートがあった。ダブルフレークは離陸が出来ないと思うし、腕力でカムを駆使しながら登らないといけない感じ。とても無理なのでIV級ルートを選んだ。


▲比叡山 右端がニードル


▲ニードル左岩稜ルートとピーク
ホールドもスタンスもあるが、微妙に手や足が届かず緊張した。上部のフレークは持つと軽い音がする。覗くと落ちてきた薄い岩が岩の間に刺さっているだけだった。「怖い」さっさと登った。2ピッチ目、この縦のハンドクラックからバンドへ上がるのがメインなようで、カムやナッツの残置がある。K寺君が頑張って登る。バンドは左手のフィンガーホールドを保持し、そこから右の広い岩をピンチで持って乗り込まないといけないがスタンスも良くない。行きつ戻りつしながらスタンスを確認し、何とか乗り込んだ。凄いと思った。K寺君が私のリーチを考えて、長いスリングを二か所に垂らしてくれた。縦のハンドクラックからバンドへは何とかスタンスを見つけて行けたが、右のワイドピンチが全く保持できない。両手を広げていっぱいいっぱいの状況でホールドの保持が出来ず、右足にスメアで乗り込む事が出来なかった。K寺君が垂らしてくれていたスリングにも少し届かず泣きそうだ。恐る恐る右足に乗り込み、スリングを掴まえて乗り移った。その後も上部に登る岩がグラグラだ。でもそれを持たないと登れない。足も細かいので怖い。K寺君はこんなところをよくリードで登ったなぁと感心する。勇気を振り絞り何とか抜けた。3ピッチ目、リッジからカンテ登り。途中で支点のようなものを見つける。さっきのピッチはここで切らないといけなかったんじゃないかと思いながら登る。カンテやクラックを使いながら登るがどうもまだまだ先がありそうだ。ロープは後10m、少し登って確かめると20mはありそう。やはり、2ピッチ目の切る所が違っていたんだ。終了点になりそうな支点も無い。仕方無いのでクラックにカムを掛け、岩にスリングを掛けて支点を作って登ってもらった。4ピッチ目、K寺君にリードで登ってもらいピークに着いた。時間は11時過ぎ。降りて第1スラブを登り直すほどの時間は無い。そのまま正面からAピークを目指そうかとルートを見るが「んん?V級となってるけど、このクラックから上のスラブはフリーでは登れない。アブミがいる」トポを見ながら、何度もルートを確かめるがこれしかない。どう考えてもフリーではVI級以上はある。どうしようか散々悩んだが、遅くなるといけないので、渕上さん達が1ピッチのフリーの岩場を登ると言っていたのでそこへ行く事にした。懸垂して狭い岩場を下りるが、そこから下も悪そうだ。ロープ1本で降りたが2本につなぎ直し、ニードルの後ろへ降りていたロープを右へ回して下まで降りた。ロープが引っ掛かって回収できない可能性があったので、後続のM本パーティーにロープを回すのを手伝ってもらった。そこから一般道へ戻って降りるが、正しい取り付きまでのルートを確認しようと思い、もう一度ニードル左岩稜の取り着き地点へ戻った。そこから踏み後をたどって千畳敷へ戻ると、千畳敷から直ぐ右のルートに出た。こんなところ見落とすよ!何も表示が無いのに・・・と思ったら、岩に「ニードル左岩稜」というプレートが付いていた。ただ、プレートが真っ黒になって岩と一体化して、字も消えかかっていたので分からなかった。そこから駐車場に戻って渕上さん達のいる岩場を目指すが分からない。ここだと思う岩場には居ない。道路を行ったり来たりしたが見つからないので諦めた。第1スラブの1ピッチだけ登って懸垂で降りて遊んで待つ事にした。待ち合わせの15時頃F上さん達が戻ってきた。やはり岩場は思っていた場所だが、それよりもっと奥の奥にある岩場へ行っていたそうだ。それじゃあ、分からないはずだ。結局ニードル1本しか登れなかったが、それなりに楽しめた。早々に宿へ帰り風呂に入って雌鉾岳パーティーを待つ。夜は九州のクライマー達も集まり、皆で鍋を囲んだ。最大30人近くが集まっただろうか。何を食べて何を飲んでるのかも分からない位の大宴会状態だった。眠くなった者から順に寝床へ着いた。

4日、5時起床。あまった食材のうどんと野菜をほり込んだ鍋で朝食を取り、7時に出発。高速を使ったので9時半には臼杵港に着いた。地元の食材や土産を見たり、釣りをしている人を見たりして時間をつぶした。11時半のフェリーに乗り、往路を戻り、20時頃自宅へ着いた。

今回は、雌鉾岳では荷物を置き忘れてトポ無しで登ったり、比叡山のニードルでは取り付きを見つけられずに時間が掛かったり、何かとあったがこれはこれで楽しかった。一番の不安は同期のK寺君と初めてパーティーを組む事だった。結構、突っ込んでいく所があるので、ロープの長さを気にしながら登るように話していた。特に、大きなスラブ壁では距離感覚が分かりにくいので注意するように話していたが、やはり足りないという事があった。良かった事は、最初にコールが聞こえない時の合図を決めていた事だ。上部へ上がると滝の音と風で声が流されて全くコールが届かずに苦労した事があったので、ロープを3回強く引いて合図すると決めていた。今回はそれが役に立った。また、比叡山ニードルの2ピッチ目では、手足の短い私を気遣い、長いスリングを垂らしてくれてた事が嬉しかった。

宮崎の岩場はホントに雄大で素晴らしい。たくさんルートがあるので色々登りたいが、そう頻繁には来られない。1年に1度でいいから、毎年登れたらいいなぁと思う。県連の皆さん、ありがとうございました。そして、K寺君ありがとうございました。また、よろしくお願いします。


▲千畳敷より、ニードルとAピーク

メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

「八ヶ岳・大同心雲稜ルート」 
1本のルートで繋がる!
木曽駒ヶ岳から桂小場への縦走

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