剱岳・源次郎尾根登攀報告  (報告/ちびサンボ)


■日 程 : 2012年4月28日(土)昼発〜5月1日(火)

■山 域 : 剱岳

■参加者 :

ちびサンボ

K部(山歩渓)
■行 動 :

28日 10時神戸発、立山駐車場泊

29日(晴れ) 4時起床、ケーブル待ちの列に並ぶ、6:00発ケーブル乗車、7:00室堂着、11:10剱沢テント場着、12:20源次郎尾根取り付き下見へ出発、14:00偵察終了、16:00剱沢テント場着、20:00就寝

30日(曇り時々雪、一時雷) 3:00起床、4:20出発、5:30源次郎尾根ルンゼルート取り付き、7:10ルンゼ上部着、9:00一峰頂上着、10:00二峰頂上着、12:10剱岳頂上着、15:30剣山荘着、16:15剱沢テント場着、20:00就寝

5月1日(曇り) 3:00起床、4:30剱沢テント場出発、7:30室堂着、9:15立山着、帰神




剱岳は同じ時期に2年連続チャレンジしたが、いずれも天候不良で取り付く事も出来なかった。今回は最初2連休しか休みがないため白馬主稜で計画したが、3連休取得出来たので剱岳登頂に計画変更した。最初は前剱から頂上のピストンを考えていたが、せっかくだから源次郎尾根からトライしようという事になった。夏に源次郎を登った事はあったが残雪期は無かったので、取り付きを見つけることが核心だと思っていた。後は、天気を祈るばかりだ。

28日、私が夜勤明けで直ぐ出発できるように、K部さんは職場まで迎えに来てくれた。連休の前半は天気が持ちそうだ。高速を下りて立山駅へ向かう時、素晴らしい山並みが見えた。「あれは立山?あれは剱岳?」昼間に走る事が無かったので分からなかったが、ガソリンスタンドでもらった立山のマップを見ると一目瞭然だった。「凄い!この町の人は毎日こんな景色が見られるんだ。羨ましい!」と感動していた。16時立山駅着。駐車場は運よくいつもの場所が空いていたので駐車して、とりあえず日帰り温泉で仕事の疲れを流した。本日は私の○○回目の誕生日!酒屋が21時まで開いていたので、ワインや日本酒、ビールの買い出しをして宴会した。次の日は剱沢までだからと少し飲み過ぎてしまった。

29日、立山のケーブル待ちでは2年連続苦労した経験がある。さっさと荷物を片づけて取りあえず列に並びに行った。4:40頃に行ったらすでに20人近くが並んでいた。電車で着いてからじゃあ3時間待ちになるのも無理は無いと思った。今日は天気が良く、気温も室堂で4.7度になっていた。メラの皆はご機嫌で登ってるんだろうなぁ〜と想像しながら、ゆっくり剱沢へ向かった。今年の雪はちょっと悪い。トレースを外すと足がズボズボはまってしまう。休憩しながら何とか11時過ぎに剱沢へ着いた。テン場はラッキーな事にブロックを積んで撤収した後が空いていた。ヤドカリ方式で遠慮なく使わせてもらった。本日の目標は源次郎尾根の取り付きを確認する事。さっさとテントを設営。「何を持って行くの?」と聞かれたので、「本チャンと同じ準備で行きましょう!」と、K部さんにはシングルロープまで持たせて出発した。剣沢小屋まで来たが、実はここからは私も初めて。どっから降りればいいんだろうと悩んだ。「夏はどこから降りるの?」と聞かれて降りる方向を見つけた。積雪期はどこからでも降りられるからかえって悩んでしまった。帰りに剱沢小屋でビールを買って帰ろうと思っていたのに、剱沢小屋はまだ開いていなかった。残念。剱沢を下り始めて座ってる5人パーティーを見つけた。何か見た事あると思ったら、会のメンバーだった。剱岳登頂して平蔵谷を降りてきたそうだ。皆、真っ黒に焼けてぐったりしていた。今日は晴天だから余計に疲れただろう。歩きにくい雪渓に時々足を取られながら平蔵谷まで下降した。 ここで、K部さんが平蔵谷の方から偵察に入ろうとしていた。私は本来の尾根はもっと下に伸びているから、ルンゼルートはもっと剱沢を下降しないといけないと思い下がっていた。なのに、「このルンゼやと思う。ここが尾根ルートでこっちがルンゼルートやと思う」と言い、私に確認させようと呼び戻した。確かに、雪がついていたらここからでも登れない事はないが、雪が少なくて割れている。ネットでよく平蔵谷から間違って登ったとの記録を見たが、そのルートだろうと私は思った。「違うと思う、私はもっと下やと思う」と答えた。K部さんはイライラしていたみたいで「リーダーが取り付きを見つけられんかったら明日は登られへんからな」と強い口調で言った。私は「何でよ、一緒に取り付きを見つけたらええんちゃうの」と答えた。腹が立って、腸が煮えくりかえった。分からないくせに偉そうに、意地でも私が見つけてやると思った。取り付きから離れて山姿をもう一度見直した。やはり、尾根ルートはもっと下だと判断し、これだろうと思うところを見つけ、そこから右方向にトラバースした。そこで、トレースを見つけた。そのトレースをたどるとルンゼに出た。

▲離れて見ると良く分かる右のルンゼルート。真下に来ると分からなくなった
ここだと思った。ルンゼを行けるところまで行って確認しようとしたが、結構歩きにくくてしんどかった。とりあえず、明日は何とかなりそうだ。かなり急なルンゼを中間あたりまで登ったので、シリセードで降った。降ってきたら、ルンゼの入口がはっきりと分かった。「なんだ、やっぱりもっと下に下がればすぐ分かったのに・・・」明日はここから登ろうと決めた。テント場に戻ると、会の立山チームはまだ戻って無かった。食事の準備をしながら会の皆の帰るのを待った。夕食はバラバラだったので、寝る前に会ってなかった会の皆に挨拶をして、明日頑張ってくると報告して就寝した。

30日、3:00起床。あまり寒くもなく、予報通り曇りな雰囲気だった。隣の若者パーティーも起きてごそごそしているが、まだ出発する気配はない。どこへ行くのだろうかと思いながら、我々は4:20に出発した。夜はあまり冷えなかったので雪の状態も昨日と変わらず、時々足がはまりながらの歩行となった。5:00過ぎ取り付き着。身支度を整えていると、剱沢を登ってくる2人パーティーがいた。同じく源次郎を目指す感じだ。若そうな男子2人だったので追いつかれたら大変だと思い、さっさと登り始めた。

▲急峻で長いルンゼの登り
このルンゼルートはかなり長い。そして、時々足が取られて体力を消耗する。汗をかかないように休み休み登った。ルンゼの分岐は見えるのになかなか到着しない。途中、デブリでトレースが消えていたので上部をどう行くか悩んだ。ルート通りだと素直に右方向へ行けばいいのだが、左にも行けそうな感じがあった。もう少し登って判断しようと思って、ちょっと中間よりを登った。やはり左方向は危険と判断し、右方向に登りつめた。登ってみると、左は切れ落ちていてとても登れなかった。ルンゼを登って岩場で少し休憩した。そこからは急な雪稜とハイ松をちょっと使ったりしながら登った。ここは記憶に新しい。昨年夏、中谷ルート登攀後ビバークした場所ではないか!何となく懐かしい思いがした。ここから岩場を抜けて雪稜に入るが、ハイ松と岩場のミックスの通過がちょっと怖かった。何とか岩場を抜けると今度はグサグサの雪稜。何度足を掛けても登れない。ルートを変えてハイ松を頼りに登る事にした。気がつけば結構な雪の斜面で高度もある。「これ滑ったら終わりやな。」と思いながら慎重に雪稜を歩いた。一峰頂上は台地状になっていたので座って休憩した。スキーヤーが平蔵谷を登っている姿や、剱岳の頂上を往復する人たちも見られた。そこからは今回一番怖いと思ったナイフエッジの下降。

▲今回一番怖かった一峰の下降
ここまでずっとトップで歩いていたが、下降し始めてトップを行くのが不安になった。「K部さんは怖くないの?」と聞いたら「全然」と答えたのでトップを変わってもらった。途中からK部さんもさすがにバックステップに切り替えた。私はK部さんの指示に従い、バックステップに切り替え慎重に下降した。かなり気を遣う下降だった。その後の二峰への登りは特に問題なかったが、ナイフエッジのところは風がきつかったり前が見えなかったら怖いだろうなぁ〜と思う稜線だった。二峰頂上からは懸垂下降地点。3年前の夏に登ったときはハイ松にやたらと古いスリングがついていた記憶があるが、今回はかなりしっかりした鉄の鎖がついていた。シングル60mを終了点にセットしてロープを垂らすと、予想通りにたっぷりとロープがあまった。雪が少ないと聞いていたし、中間支点がかなり悪いと聞いていたので念のためと思ったが、やはりシングルの60mは必要なかった。K部さん、重たい思いをさせてごめんなさいって感じだ。懸垂は問題なく終わったが、その頃より天気が崩れ始めて雪が降り出し、どこかで雪崩れているような音がした。 頂上まではまだ少しかかりそうだが、後は雪稜歩きだから何とかなるだろうと思い歩いていた。すると、前方をバックステップで降りてくるスキーヤーに遭遇した。「何かトラブルですか?」と聞くと、「頂上手前で雷がした。ビリビリときたから降りてきた」と話す。ええ、全然感じなかった。雲もはれて空も明るくなってきてるんだけど、どうしようか・・・と少し考えた。平蔵谷か長次郎谷を下降するしかないが、デブリがあったから嫌だなぁ〜と思ったのと、空を見ると天気は回復傾向だったので頂上を目指した。長い急な雪稜を上り詰めてようやく頂上に着いた。

▲剱岳頂上 祠の横
昼頃ではあったが、誰もいなかった。360度パノラマの景色を堪能し、写真だけ撮って早々に下山した。下山路はもちろん前剱からのルートを選んだ。一つは平蔵谷のデブリの後を歩きたくなかったのと、もう一つは剣山荘でビールを購入したかったからだ。カニの横ばいはK部さんは初体験。「どーやって降りるの?足が無い」と言ってたので、我が会の北村氏が教えてくれた、通称『北村ステップ』を教えてあげた。「何や、簡単や」と絶賛。アイゼンでもノープロブレムだった。頂上からの下降は雪質が悪く、源治郎以上に歩きにくかった。ステップがあるので大丈夫かと思ったが、時々滑り落ちそうになり滑落停止をしないといけなかったので、悪い所は最初からバックステップで下降した。もちろん、前劔の長い下りも延々とバックステップで降りた。それでもステップが崩れたり、高さが合わなかったりして結構疲れた。シリセードも考えたが、ピッケルが刺さらない雪質だったのでスピードが出たら危ないと思って止めた。登りよりも下りがしんどかった。剣山荘でビールと日本酒を購入し、テント場へ帰りついたのは出発から約12時間後であった。長い行程ではあったが十分に楽しめた。明日、下山しないといけないのが寂しくて、何度も何度も剱岳の稜線を振り返り見ていた。

1日、3時起床。雪質が悪いので気温が上がる前に帰る事にした。剱御前小屋までの道はちょっとしんどくて休憩しながら登った。後ろから、隣のテントに居た若者たち3人がドンドン追いついてきた。途中で追い越され、剱御前小屋で一緒に休憩する形になった。どこへ行ったのか聞くと、私達と同じ日に源次郎尾根へ行ったが、取り付きが分からず間違って平蔵谷側から登ろうとして登れず敗退したそうだ。若くて力があるのに残念な事だ。やはり、取り付きを確認しておく事は重要だと思った。どこまでいってもハマる雪にうんざりしながら室堂へ下山した。これで今シーズンの雪山は最後だと思うと寂しかった。


▲源次郎尾根の稜線
3年目にしてやっと残雪期の剱岳に登る事が出来た。しかも、今回の雪の状態で源次郎尾根から登れた事は自信になった。まだまだ登る元気があったから、休みさえあればもっと登れる。次は八峰縦走にしようか、剱尾根にチャレンジしようかと夢が膨らんでいく。毎年、いい誕生日が迎えられるように頑張りたい。

▲剱沢のテント場で記念撮影


メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

立山の展望は最高!
初級雪山教室修了山行 立山縦走
山スキー
楽しかった 岩木山・八甲田山

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