混雑した弥山西稜
今回の大山登攀は当初は6人以上が参加予定であったが最終的に3人になった。少しさびしくはあるが久しぶりの雪稜なので勇躍出発した。ちびRの車は大きなワンボックスで3人が横になって寝られる。南光河原駐車場で快適に仮眠して目覚めると、外は予想通りに曇が低くわれわれを圧迫しているかのようだった。出発して大山寺を通過して元谷小屋までは雪が踏み固められていて歩きやすい。元谷小屋に入ると誰もいなかった。床にマットを敷いて準備して出発した。
▲弥山取付き付近
北壁下部は視界があるものの中腹以上は雲の中である。それでも雲の切れ間に弥山西稜を登る人影が見える。そして取りつきに二人パーティがいた。その二人を視認してからわれわれが着くまで30分近くあったのだが、かれらが登り始めたのはわれわれがそこに着いた頃であった。結局、上部で追い越すまでこのパーティの登攀速度の遅さに悩まされた。かれらはつるべで登っているのに3人パーティのわれわれよりも遅いので待ち時間が長い。それはさておき1ピッチ目は末端のブッシュから登ることになった。ここを省略して横の斜面から登りたかったが先行パーティに割り込むことになるのでやめた。この登攀は終始ココノールがリード、セカンドちびR、サードカノンで登った。雪が堅かったのでスノーバーとピッケルを刺して確保支点として支点ビレーを行なった。スタンディングアックスは使用しなかった。ロープ確保して登ったのは8ピッチであったが7ピッチ目のみ灌木の支点で確保した。このルートにはナイフリッジはなく比較的広い斜面が多い。雪は適度に堅いので登りやすい。カノンとちびRも順調にフォローしてきて上部の傾斜がゆるくなったところでロープをほどいてザックにしまった。登攀中は時々雲が切れて下部の視界があった。別山も少し垣間見えたが全体として視界が悪い。そのためうっかり弥山頂上で反対方向に行きかけたがGPSで確認して下山した。6合目小屋から少し下ったところから元谷小屋に帰った。
小屋にもどると西宮労山のルミちゃんがいた。今日は弥山東稜を登り、明日は別山バットレスを登るそうだ。パートナーは長野労山の人でバルンツェ遠征のときにいっしょだったとのこと。共通の知人もいることがわかりヒマラヤ談義を楽しんだ。
▲弥山からの別山バットレス
堅雪の別山バトレス中央稜
翌朝、小屋の西の沢をたどり始めた。幸いにも晴れていて夏道の尾根が朝日に染まっている。この天気は続かず昼には崩れることはわかっているので早めに登攀を終えたかった。沢のトレースはデブリで消えていた。そこから上には今朝先に出たルミちゃんパーティが歩いていくのが見えた。このあたりから傾斜が強まり足は逆ハの字に開いて登る。そして中央稜の末端はブッシュがあるので省略して東側に回り込んだ。ここから中央稜の稜線までは急な雪壁になっている。それに前爪を効かせて登って行く。休まずに登ったのでふくらはぎが少し疲れた。稜線に出るとやはり雪は適度に堅くてアイゼンの爪がよく効く。このやせた稜線もどんどん登って行き岩に確保支点のあるところに着いた。ルミちゃんパーティはここから先もロープをつけずに登って行ったが、われわれはここで確保態勢に入った。岩に古いリングボルトとハーケンの残置がある。今回もカノンにビレイをしてもらう。岩の左側に回り込んで登り始めた。すぐに残置ハーケンがあるが弱そうなので灌木にランニングビレイをとって岩雪ミックスを登って行く。すぐに古いリングボルトの残置支点にたどりつく。ロープはまだ10mあまり残っていたがここでピッチを切ることにした。下を見ると後続パーティが続々と登ってくるのが見えた。この頃から南からの雲が多くなってきて曇り始めた。次のピッチは核心部のようで硬い雪壁に岩が混じるミックス帯である。前回登ったときよりも雪が多くて堅いので難度は少し上だったかもしれない。次は50mロープをいっぱいに延ばして確保支点をとった。残置はなく岩にスリングを巻いて作った。テストで岩を触ったが大丈夫そうだったのでそうした。ところが登ってきたカノンが触ると動いた。その上の岩に支点を移して確保してもらった。そこから登って行くと別山に出た。ここでスノーバーとピッケルを支点として後続を確保した。別山に着くと南からの風と雪が吹き付けてきた。ふたりが登ってきたときには視界が悪くなってきた。ここからナイフリッジをたどりコルへの下り口に残置があったのでピッチを切った。一人ずつ来てもらい、そのままコルに下りてもらった。3人がコルに着いたときは夏道への視界は10m程度になった。ここでロープをしまった。夏道の最後の雪庇を越えて握手した。
▲別山バットレス下部