石尊稜・赤岳主稜登攀報告   (報告/ちびサンボ)


■日 程 : 2012年2月10日(金)夜発〜13日(月)

■山 域 : 八ヶ岳西面

■参加者 :

ちびサンボ

K田部(山歩渓)
■行 動 :

10日 19時大阪発

11日(晴れ) 0:30美濃戸口着、6:30美濃戸口出発、9:50赤岳鉱泉テント場着、11:20出発、13:40石尊稜登攀開始、17:50頂上着、20:00赤岳鉱泉テント場着

12日(曇りのち晴れ) 5:00起床、6:30出発、8:30赤岳主稜取り付き着、9:00登攀開始、12:00頂上着、13:40赤岳鉱泉テント場着、14:20ジョーゴ沢へ出発、15:00ジョーゴ沢F1着、F2、16:30終了、17:00テント場着

13日(晴れ) 5:00起床、6:30赤岳鉱泉出発、8:10美濃戸口着、13:00大阪着



石尊稜・赤岳主稜は昨年トライしたが、天候不良で敗退した。今年は八ヶ岳と相性がいいのか天気に恵まれている。K田部さんはどちらも今年登っているが、八ヶ岳は好きだからまた登ってもいいと言ってくれた。こんなチャンスは無いのでこの山行を計画した。


10日、19時に大阪集合。お互いに車を持っていないのでレンタカーを借りて出発。晩御飯の買い出しをして、大阪を抜けるのに時間がかかった。いつもの21時や22時発なら渋滞もないが、帰宅ラッシュと重なってしまいイライラしながらの出発となった。途中のPAで簡単に晩御飯を済ませ、翌0時半に美濃戸口へ到着。明日の準備をしてからビールやウイスキーで晩酌、2時頃車中で就寝した。



▲左の稜線が石尊稜、右は中山尾根


▲石尊稜下部岩壁取り付き


▲上部の雪稜


▲中山尾根登攀中のパーティー


▲石尊稜頂上

11日5:30起床、赤岳鉱泉のブログで歩道が凍っているからアイゼン必要となっていたので、アイゼンを装着して6:30出発。お互いによく食べて飲むから食材と酒が多い。ベースでなかったら控えるが、そうでないからついついあれもこれもとなって、K田部さんは30キロ近いザックを背負って登ることになった。私は酒以外はテントと装備だけなので下山も重さは変わらないが、多分25キロ程度だと思う。とにかくしんどいので汗をかかないようにゆっくり上り、9:50赤岳鉱泉のテント場へ着いた。テント場はガラガラ、車も少なかった事から、この週末は冷えるから敬遠して登山者が少ないのかもしれない。本日は石尊稜へ登るので、早々にテントを設営して出発準備。そうこうしていると、西宮労山、中級同期のH石さんパーティーが登ってきた。ジョーゴ沢でアイスをするそうだ。軽く腹ごしらえをして11:20出発。朝から登ってきてそのまま登るのはやはりしんどい。そして天気がメチャクチャいいから暑くてたまらない。衣類調節しながらゆっくり上る。K田部さんは今季3回目の石尊稜だからルートファインディングはばっちり。しかし、雪の量が多いからちょっとしたラッセル状態で登ることになった。あの竹の見えるところが下部岩壁取り付きへのルートというが、そこが、なんとツボ足で大変なことに・・・。途中「助けて!」とK田部さんに言われるが、助ける余裕はないから頑張って登ってきてもらった。竹の取り付き場所は安定してなかったので右へトラバースすることに。これもあまり良くなくて緊張するトラバースだった。少し安定したところでロープ確保。K田部さんはビレーなくても大丈夫とのことであるが、私は怖いのでアンザイレンして登る。「あれ、取り付きあれかなあ〜登りすぎたかも・・・」とK田部さん。私の記憶ではもう少し上だった気がするから「まだ上じゃない」と答えるが、岩に雪がかぶっていてよく分からない。「1ピッチ目の核心の上に出たんかなぁ・・・」と言われ、ちょっとホッとする私。次のピッチを私が登ってビレーしていると、登ってきたK田部さんが「あれが取り付きや!」とホントの取り付きを発見。確かに支点が二つある。ああ、やはりまだであったか・・・私の記憶は正しかったんだ。雪が多いと分かりにくいものです。13:30取り付き到着。「核心は全部ちびサンボさんにリードで登ってもらうから。」と言われていたので私の出番。「ええ、怖い。」雪で岩なのか草付なのかよく分からないから、どこにアックスをかけて立ち込めばいいのか分からない。「落ちても雪の上やし、確保するから大丈夫」と言ってくれるが、アックスが跳ね返ってくるし、スタンスは安定しないしまったく自信がなかった。K田部さんが「やっぱりここは俺が行こか」と言ってくれたので素直に応じた。しかし、2〜3段登っている私はクライムダウンするのも怖い。ヒーヒー言いながら降りて交代した。K田部さんは岩の弱点を捉えながら難なく登る。中級同期のK田部さんはいつの間にかこんなに成長して、大したもんだと感心した。2ピッチ目からは雪稜なのでひたすら登るしかない。しかも、つるべは結局2ピッチ分一気に登らないといけないから結構しんどい。景色を楽しみながら、休みながらひたすら登る。ここ数日の雪量でトレースも消えかかっていて、稜線をどう行くのか分からない所があったりした。不安なところはピッチを短く切ってK田部さんに行ってもらった。K田部さんの記憶もいい加減なもので、結局核心しか覚えてないから時間配分を間違えた。途中からスピードアップ。と言ってもスピードは大して上がらない。上部岩壁取り付きに着いたのが16:50頃だった。向こうには中山尾根を登っているパーティーも見えたが、他のパーティーは全く見えなかった。核心は私がリード。トポには凹角から階段状の素直な岩となっているが、これまた雪がかぶっていてまったく分からない。右へ出たらいいといわれるが、右は足場がなく切れ落ちているようにしか見えなかった。やや被った岩壁を直上するとバランスを取るのが難しく落ちるんじゃないかと恐怖との戦い。降りたいけど降りられないし、半泣きになりながら自分の足とアックスを信じて登った。ちょっと大きめの岩にスリングを掛けて支点を取ってようやくホッとした。後はひたすら登るのみ。この上部岩壁あたりから吹きっさらしになって凄く寒い。終了の稜線に出たのが17:50になった。そこからはスピード勝負。ロープを片付けヘッドランプを装着してとバタバタするが、とにかく寒くてスピーディーに行動できない。この場から退散しようとK田部さんに訴え、東面に行って風が少しマシなところで再度片づけをすることにした。そこからは暗い中、ヘッドランプを頼りに下山。K田部さんは三回目だから問題ないと思っていたがちょっと間違えた。慎重に歩いて20時赤岳鉱泉のテント場へ下山した。朝からの行動を考えると12時間半にも及ぶ行程で疲労困憊。でも、明日があるのでさっさと夕食準備をして23時には就寝した。晩御飯は鳥鍋だが、睡眠不足と今日の疲れでいつものようには飲めなかった。


▲赤岳主稜取り付きのチョックストーン


▲頂上手前より、阿弥陀岳への稜線


▲赤岳頂上

▲文三郎道から見る赤岳主稜取り付き


▲ジョーゴ沢F2

12日5時起床、K田部さんは4:40頃から起きだしごそごそし始める。朝ご飯をしっかり食べて6:30出発。行者小屋で最終トイレと登りに備え衣類調整を済ませて7:30出発。本日は曇り、稜線を出る手前でダウンを着込んでぬくぬく状態にする。取り付きへのトラバース手前で3人パーティーと5人パーティーに遭遇。皆さん取り付きを見過ごして上から降りてきていた。残念、ここより先に着いてたら待ち時間はなかったのに・・・。3人パーティーはそのままトラバースへ入るが、5人パーティーは視界の悪さに躊躇している様子。すかさず、追い抜いて私達もトラバースへ入る。約70mのトラバースは昨年同様に視界が悪く、取り付きは見えなかった。トレースはあったので何とかトラバース出来たが、所々アイス状態で怖かった。取り付きには先ほどの3人パーティーが準備中。時間が掛かりそうなので生姜湯を飲んだり、チョコレートを食べたりして体を温めていた。そうこうしていると後ろからソロの登攀者がやってきた。昨日、赤岳鉱泉の前で少ししゃべった青年だった。彼も他のパーティー同様に取り付きを間違えて上まで行ってしまったらしい。私たちが準備している間に「先に行っていいですか」と言ったので、譲って行ってもらった。イレブンを登れるらしいのでフリーソロで楽々と登って行った。ようやく私の出番。このチョックストーンが核心。先行の女性クライマーも「しんどい!」と言いながら登っていた。雪がかぶって無ければチョックストーンをアンダーで取ったら簡単とK田部さんは言うが、私にはアンダーでは上部に手が届かない。やや右方向にアックスをかけて、足を丁寧に上げていくと案外すんなり登れた。「あら、簡単」。しかし、その後の登りの方が私には難しかった。これまた雪がかぶっていて岩か草か分からないし、ホールドもスタンスも見えなかった。しんどい思いをして登ったら、後からK田部さんに「あそこは右にアンダーのガバホールドがあるねん。雪がかぶってて見えんかったけど、俺は雪の少ない時に登ってるから知ってるねん」と言っていた。なーんだ。2ピッチ目の取り付きには支点が二つもあるのに、3人パーティーが二つとも占領していたから登れなかった。後ろから来てるんだから考えろよ!と、ちょっと腹が立った。ソロの青年も手前でアックスと両足の四点支持で待機していた。3人パーティーは正面の垂直の岩を苦労しながら登っていた。ソロの青年も「これの方が核心じゃないですか?!」と言いながら登って行った。K田部さんは「ここは左から登るんが正解。階段状でガバがあるねんけど、雪でガバがガバじゃないなぁ〜」と言いながら、オーバーグローブを外して登って行った。私はフォローだからどっちから登ろうか悩んだが、正規のルートをとることにした。しかし、ガバホールドはK田部さんより20p低い私の身長ではちょっと遠い。左寄りから登ると階段状にスタンスがあって登りやすかった。3ピッチ目のところでソロの青年は先に行かせてもらっていた。3人パーティーのトップが登っていたが、雪稜なので左から巻きながら私も登った。支点は岩で取るしかないので岩で自己ビレーを取って、K田部さんには肩がらみで登ってもらった。3人パーティーが先を譲ってくれたので、K田部さんがそのまま4ピッチ目をリードで登った。雪で支点が見えないのかもしれないが、全く支点は無かったので、ほとんど岩か肩がらみでのビレーとなった。上部核心はうまい具合に私のリードとなった。最初数段乗り込むところが難しかった。やや右方向にルートを取ると全くホールドもスタンスも無く、ちょっと滑りそうになり怖い登攀だった。少し下がって左方向のホールド・・・が無いのでアックスをきかせた。スタンスは「不動のアイゼントレ、前爪2本立ちを思い出して!」の言葉で「そうや、前爪だけで登れるんや」と思い出すと楽になった。岩のステップらしきところを登り右へトラバース、凹角を登って稜上に出るが、この凹角が狭くてザックが引っ掛かりバランスを取るのが難しかった。その後は稜線の登りだが、この頃からK田部さんは「しんどい」と連呼していた。私は体が慣れたのか登りも楽しくて、どんどん元気になっていった。なので、ここからはすべて私がリードで登ることになった。周囲の景色を楽しみながら快適に登り、12時に頂上へ着いた。下山してからジョーゴ沢でアイスクライミングをする予定なので、記念撮影だけしてさっさと下山。下山後軽く腹ごしらえをしてジョーゴ沢へ出発。日曜日の午後だからかジョーゴ沢は誰もいなかった。F1でスクリューの打ち込みを練習してF2へ。K田部さんは初めてだから楽しそうにリードしている。フォローで登る私もスクリューの打ち込みや抜き方の練習をしながら登るが、ここで大失敗。スクリューを抜いてカラビナにかけた時オーバーミトンがカラビナに挟まった。それを取ろうとした時スクリューも一緒に外れてしまいスクリューが落下。「ポチャン」と沢に落ちた音がした。信じられない。こんな狭い場所にうまい具合に落ちるなんて・・・。オニューのスクリューが手の届かないところへ行ってしまった。悲しかったが命を落とした訳ではないのでいい経験をしたと思う事にした。夜はトマト鍋を食べながら、充実した山行を振り返り飲んで寝た。13日はジョーゴ沢でアイスをする予定だったが、K田部さんに仕事が入ったので早々に下山した。


雪山登攀リード経験のない私にはかなり緊張する山行だった。初見で登ることの難しさを感じたが、登っているうちに自分でルートを見極めて登るのが楽しかった。自信にもなった。リードって楽しいって思った。初日より翌日の方が快適に登れるって事は経験だろうか。という事は、やはりトレーニングをしっかりしないといけないって事なんだ。石尊稜に関しては、次回は1ピッチ目をちゃんとリードで登りたいと思う。来年は中山尾根を目指そうか・・・。K田部さん、本当にありがとうございました。

メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

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