▲長次郎雪渓右・登り
▲チンネの頭
2週連続の剣岳。今回は山歩渓の山行に参加させてもらって、昨年ガイドに登らせてもらったチンネ左稜線をリードで登ることを目標にした。源次郎縦走も計画に入れていたが、せっかくなら源次郎I峰のフェースを登った方がいいと、須磨のY谷さんにアドバイスをいただいた。私たち二人で行くには厳しいので、Y谷パーティーについていく形で中谷ルートを登ることを計画した。
先週は剱沢をベースにしていたが、今回は長次郎雪渓を重いザックを背負って登らないといけなく大変だった。熊の岩目前でガイドのH谷さんにお会いした。熊の岩はもう一杯だから厳しいけど左奥なら空いてるかも・・・と助言をいただいた。もし空いてなかったら雪の上で幕営?真砂へ降りる?などの不安な気持ちで熊の岩着。助言通り左奥がちょうど空いていてホッとする。
13日長次郎雪渓の右股を登っていくが、上部はところどころで切れていてザレ場の通過や急峻な雪渓登りに神経を使った。三の窓雪渓は雪がしっかり残っていたので、アイゼン・ピッケルを使ってトラバース。チンネ左稜線取りつきで3パーティー待ちとなった。7時10分ちびサンボリードで登攀開始、昨年の記憶を頼りに登るが案外忘れている。少々戸惑いながらもつるべで登った。T5では3パーティーほど待っていてビレー点も確保出来ない状態だった。T5はザックが重いと登りにくい。後続にも4パーティーほど待っていたので、登りにこだわらず核心手前からA0しながら登った。「やった!」という気持ちだった。13時半頂上着。昨年も撮ったが、今年もチンネの頭に登って写真撮影!4人で集合写真を撮って下山した
▲チンネの頂上
14日、前日にY谷パーティーと無線で連絡がつかず、集合時間の打ち合わせが出来なかった。しかし、山行前にパンプでK寺、K部が6時集合と話していたとの事だったので、5時半頃源次郎の取りつきへ行けるように出発した。長次郎雪渓を多くのクライマーが登ってくる。皆、朝早くから下降している私達はどこ行くのだろうと不思議がる。平蔵谷の登り口に着いたところで、すでに源次郎I峰の壁を物色している二人組発見。平蔵谷雪渓シュルンドへの下降点を慎重に下り、中谷ルート取りつきでY谷‐K寺パーティーと合流した。本来の1ピッチ目は雪渓の下なので、本来の2ピッチ目からのスタートになった。
▲中谷ルート取り付き ▲4ピッチ目トラバースルート
6時15分、K寺‐Y谷パーティー登攀開始。K寺君がフリーにこだわり登りに時間がかかる。待っている方は谷なので段々寒くなってきた。Y谷さんに人工でいいから早く登るように指導を受け、アブミを使って登っていく。7時15分、K部さん登攀開始。
1ピッチ目(20m・A1)、K部さんがヌンチャクが足りないからと外したところがチビの私には遠く苦労した。
2ピッチ目(20mIV)、凹角をトラバースして左上するが、トラバースが怖かった。
3ピッチ目(20mIV+)、草付からスラブを登る。
4ピッチ目(25mIV、A0)スラブのトラバース。少し上に上がってから下がるトラバースは心臓に悪い。一部A0で行く。
5ピッチ目(30m・IV)草付きの凹角を登るが、岩が脆くて信用ならなかった。
▲6ピッチ目核心
6ピッチ目(40m・A1、IV)大岩溝の直上。ホールドはどこも浮いていてジェンガゲームの様。先行のY谷パーティーはハーケンを打つ。時々「落!」の声。ガラガラと岩が落ちてくる。K部さんはヘルメットの上にもろに落石を受けたようだ。フェイス下部、1ヶ所アブミを使って登った。
▲次の目標、成城大ルートをバックに!
▲ビバーク地点
7ピッチ目(30m・III)チョックストーンを左上すると明るいカンテ沿いに抜ける。ようやく陽に当たる事が出来た!
8ピッチ目(40m・III+)スラブを右上し、ブッシュのリッジへ抜ける。ここで、いままでリードしていたK部さんが最後にリードするかと聞いてくれたが、とてもする気がしなくてお願いした。簡単に見えたスラブはとても細かくてK部さんは苦労した。最後のハイ松からの藪こぎはちびサンボがリードで登って行くが、ホンマかいなと思うぐらい登りにくかった。まだまだハイ松を抜けていかないといけないので、安定したところでギアを外してY谷パーティーが待っているところまで登って行った。
合流した時点で14時半になってしまった。ここからII峰を抜けて熊の岩まで降りるのは時間的に無理なので、Y谷パーティーとI峰の縦走路を下降して、長次郎雪渓を登って帰る事を選択した。しかし、4人とも縦走路への道を知らなかった。まぁ、ベテランのY谷さんに着いていけば大丈夫だろうという安心感と、翌日に行けたら行こうと話していた成城大ルートの取り付き(左方向)に目を向けていたら、右方向にある縦走路への分岐点を見落としてしまった。そのまま上を目指して登ると少し開けるが、そこから下降するルートが見つからなかった。ちょっと違う気がすると思いながらも2回ほど懸垂すると、前方に八つ峰のIV峰あたりが見えた。完全に間違ってるが、懸垂で下まで行けるならこっちでも・・・と思ったが、全くルートが無かった。結局、100m登り返して開けた分岐点へ戻った。この時点で18時。中谷ルート方向へ戻るしかないが、真っ暗な中下降する事になるのでここでビバークしようという事になった。私たちはビバークに備えて、ツエルト、雨具、防寒用の薄手のダウン、テルモス、非常食等を持っていたが、Y谷パーティーは持っていなかった。ロープをお尻の下に敷いて背中にザックを置き、座って寝られるような場所を確保したがスペースは3人分ぐらい。そこに無理やり4人が座り、2人用(3人限度)のツエルトを4人で引っ張り合いながらのビバークとなった。狭いスペースだから外に出ると自分の場所が無くなっている。そこへ無理やりお尻をねじ込み再びスペース確保、そんなこんなを繰り返し、15日4時半起床した。
▲源次郎I峰下部、よう登ったなぁ・・・
下山は中谷ルート方面へ戻り、分岐を見つければ降りられると分かっていた。思った通りで、直ぐに分岐は見つかった。3回ほど懸垂しながら下降、源次郎尾根縦走路の取り付きで、須磨のI佐さん、Hさん、山歩渓のK脇さん、N勢さんが心配そうに待っていた。下へ降りてK脇さんの顏を見ると安心して涙が出た。心配をかけて申し訳ない事をしたと思った。そのまま、須磨のベースの真砂のテント場へ下った。そこで、朝食とアルコールを頂きちょっと仮眠した。11時、熊の岩のベースに向けて出発した。もう、VI峰フェースを登る元気も無かったので、大人しく休養することにした。
16日、K脇パーティーは北方稜線へ出発。私たちはゆっくり下山することにした。前日に行動していないので体はさほど疲れていなかった。長次郎の下降時、谷口けいさんにお会いした。声をかけると快く返事をして下さって、長次郎雪渓のクレバスの注意点などを教えてくれた。雑誌で見たまんまのとても素敵な方だった。そして、またまたH谷ガイドに会った。ビバークした事を話すと、剣沢小屋からヘッドランプの明かりが見えていたと。動きで大丈夫そうだと判断していたと聞いた。小屋の人たちは登山者にいつも注意を払ってるんだと思った。迷惑はかけたが貴重な体験をした山行となった。