大スラブに感動!涙の宮崎クライミング   (ちびサンボ)


ちびサンボ

その他、大勢

■日 程 : 2011年5月19日(木)夜発〜5月22日(日)

■目 的 : 宮崎クライミングをとおして、2010年度中級登山学校修了生の力量を高める

■場 所 : 宮崎・比叡山、雌鉾岳

■参加者及び登攀パーティー : I佐(須磨)−N勢(山歩渓)、Y谷(須磨)−O部(山歩渓)、O石(神戸)−S訪(山歩渓) K脇(山歩渓)−H石(西宮)、F上(甲山)−ちびサンボ(メラ)

■行動予定 :

19日 20:30、JR三宮南口ロータリー集合。Y谷さん、I佐さんの車に分かれて出発。

20日 高速を乗り継ぎ、八幡浜港(2:50)発〜臼杵港(5:15)→鹿川7:30頃着、「庵・鹿川」へ荷物を置き、比叡山下の駐車場9:00頃着→登攀準備を整え、比叡山第一スラブと第二スラブに分かれて9:30登攀開始→12:30頂上着→14:00頃頂上に全員集合、下山後、「庵・鹿川」にて晩餐→各自就寝

21日 6:00起床 8:25庵の秋ルート、取り付き開始→12:25二の坊主頂上着→14:00全パーティー集合→15:00下山→庵・鹿川にて晩餐→各自就寝

22日 6:00起床→8:00出発→臼杵港(11:35)〜八幡浜港(13:55)→高速を乗り継ぎ→20:30帰宅




昨年、中級登山学校の修了山行で雪彦山へ登った。それ以来、本ちゃんの岩場でのクライミングをした事が無かった。修了はしたが、ステップアップはどうやってすればいいのだろうと思い悩んでいる時に、今回のクライミングの話が出てきた。毎年4月5月は仕事が忙しくなかなか休みが取れない。今回も無理だろうなぁ〜と半ば諦めていたが、頼み込んで何とか休みをゲットした。会では夏山に向けてのトレーニングもあるのに、自分のわがままでこちらの山行に参加させてもらった。あれもこれも強引に進めた計画だった。

19日20時半、JR三宮駅に集合し、I佐さん、Y谷さんの車に分かれて10人で出発した。高速を乗り継ぎ、早ければ1時台のフェリーに乗れるかと思っていたが、何と徳島道の土成から川之江東までが工事で通行止めになっている。思わぬアクシデントで2時のフェリーも危ういかと思われたが、何とか八幡浜港2時50分のフェリーに乗る事が出来た。少し仮眠して5時15分臼杵港着。再び車を走らせて鹿川へ急ぐ。天気予報は晴れだったが何となく雲行きが怪しい。明日は昼から天気が崩れる予報なので、最初の予定を変更して、20日に雌鉾岳を登り21日に比叡山にしようと話していた。しかし、鹿川に着いて雌鉾岳を見ると頂上付近は雲に覆われていた。スラブは濡れてると登れないからと、やはり予定通りに本日は比叡山を登ることにした。明日は、登れないのかも知れないな〜。駄目なら高千穂峡に行ってみたいとN勢さんと話していた。「庵・鹿川」に荷物を置いて比叡山へ向かう。比叡山1峰南面の道路沿いに駐車スペースがあり、そこから直ぐのところに取り付きがあった。身支度を整え、集合写真を撮って出発。

▲比叡山登攀前


▲2ピッチ目スタート


▲V級スラブ


▲第一スラブスーパー頂上


▲シュミレーション中


▲雌鉾岳取り付


▲庵の秋ルート3ピッチ目


▲中央バンドのトラバース


▲大滝左ルート上部


▲頂上手前で涙のピース


▲雌鉾岳・二の坊主頂上にて

「ちびサンボちゃん、行くで」とF上さんに急かされ一番に登攀開始となる。比叡山第1スラブスーパールートを登る。9時半スタート。1ピッチ目(IV)50mF上さんリード。トップを行くかと聞かれたが、体が起きてない感じなのでお願いした。樹林帯を抜けたところが2ピッチ目の支点だが、ロープが引っ掛かるので樹林帯手前の木で1ピッチ目を切る。ちびサンボ、フォローで登るが朝一は何となく調子が出ない。下からY谷さんのアドバイスを受けながら登る。そこから樹林帯をちびサンボが先に登り2ピッチ目の支点で確保を取る。結構足元が悪く、木は枯れていて少し怖かった。2ピッチ目(IV+)50mちびサンボリード。見えている範囲はホールドがありそうなのでリードを頑張ると言った。しかし、見えてなかった左にトラバースすると、傾斜が強くのっぺりしたスラブの直上。支点も遠くて怖かったが細かいホールドをつかまえて何とかリードした。3ピッチ目(IV−)45mF上さんリード。それなりにホールドがあり、カムを使えそうなクラック状のところがあった。ここを登ったところがテラスになっていたので休憩を取る。4ピッチ目(IV+)35mちびサンボリード。「亀の甲羅」と呼ばれているスラブを登る。ホールドの細かいところがあり、クラックにカムを入れて慎重に登った。5ピッチ目(IV+)25mで普通は切るが、そのまま(IV)25mをつなげてF上さんリード。ホールドはあったが、上部25mは支点が一つしかなかった。6ピッチ目(V)40mちびサンボリード。V級はリードをした事が無い。「自信なかったらやるよ、どっちでもええよ。あかんかったら替わったらええし。」とF上さんが言ってくれた。迷ったが、あかんかったら替わろうと思ってトライした。ホントは真っすぐ登るんだろうけど、支点まで届かないので少し右のクラックを使って登った。それでも支点が遠かったので、ナッツやカムを使えるだけ使って登った。後15cmぐらいのところが届かない。フォローなら「えいやっ」で乗り込めそうなスラブだがリードは怖い。ナッツキーを引っ掛けて登ってもいいとアドバイスを受けたが、それでも後数センチ届かない。どんどん疲労してきて滑りそうになる。小鹿の足になるし泣きそうだ。やっぱり止めると言いたいが降りるのも怖い。何分かかったのか分からないが粘って粘って何とか登った。最初の核心は越えたが、とにかく支点が微妙に遠い。落ちたく無いので4ピン目はAOしたら、後5p程伸びたところにホールドがあった。フラフラになってたどり着いた。F上さんはスイスイ登ってくる。私は何をあんなに苦労したんだろうとガックリするくらいF上さんの登りは早い。最終ピッチは簡単だからとリードを進められた。7ピッチ目(IV−)35mちびサンボリード。高度感があり気持ちよかった。木に残置があるところが終了点。F上さんとがっつり握手した。そこからコンテで頂上へ12時半到着。頂上の景色を楽しみながら他のパーティーを待っていると霧雨が降ってきた。何度か降ったりやんだり変な天気だ。14時頃全パーティーが集合した。この時間から他のルートは登れないだろう。展望台へ下山して集合写真を撮り、そのまま下山した。


「庵・鹿川」が今回の宿。クライマーのための宿だが、囲炉裏があり、テラスがあり、台所に食器まで揃っている設備の整った宿だ。今では珍しい五右衛門風呂があり、F上さんが薪割をして火を焚いてくれた。「薪割、飯炊き、小屋掃除・・・」と歌いながら、一生懸命に火の調節をする姿からいつの間にか「カマジイ」と呼ばれていた。今晩は焼き肉&日本酒で大盛り上がり。地元の有名なクライマーK藤氏、K山氏も一緒に晩餐。K山氏は明日のために雌鉾岳スラブ登りのシュミレーションまでしてくれた。まるでダンスを踊っているような動きだった。眠たくなった者から順に就寝した。


21日、6時起床。雨天中止の可能性もあったが、雨は降っていなかったので雌鉾岳登攀の準備にかかる。起きた者から順にパンとコーヒーで朝食を取り出発。キャンプ場まで車で移動、そこから約40分歩きの道。天気はあまり良くないが何とか持ちそうな気配。7時40分雌鉾岳スラブの取り付きへ到着。「大きい!濡れてる!!」壁が全然乾いてなくてえらい濡れてるし、苔まで生えてる。「晴れて風が吹いたら直ぐ乾くから」とK山氏は言うが、ちょっとやそっとでは乾きそうにない。ホンマかいな!!と思いながら準備をする。案内をしてくれたK山氏はO部さん・Y谷さんパーティに入って一緒に登る事になった。皆は「美しいトラバースルート」を登るが、私たちはルートが重ならないように右へトラバースする「庵の秋ルート」を選んだ。3パーティー目で8時35分スタート。1ピッチ目(IV)50mちびサンボリード。支点が無いのでちょっとしたクラックにカムを掛ける。松の木のある草付きテラスへ右上していくが、いいところには苔が生えてるし壁はまだ濡れてるし、ピンは一つしか無いし、緊張と闘いながらのスラブのトラバースだった。そこから約10m右へトラバースしたところが次の支点。ここから壁が立ってくる。まだ壁は濡れているし自信がないのでリードはお願いした。2ピッチ目(VI−)45mF上さんリード。「久々に北山ボルダー(六甲山)を思いだして登ろか」と言ってスイスイ登っていく。核心が濡れているし壁は立ってるし、ものすごく怖かった。しかし、F上さんが置いたスタンスを見ていたので何とか登れた。3ピッチ目(VI−)45mちびサンボリード。ホールドらしき物があまり無く、
自分の指の感覚と足を信じるしか無いが、ところどころ濡れてる壁と苔が恐怖心をあおる。何度もシューズの裏を拭いて乾かしながら登った。めちゃくちゃ怖くて半泣き状態。O部さんパーティーに入っていたK山氏が遠くから私にアドバイスを送る。心の中では「もう嫌だ。ロープ上から垂らして・・・」と叫びながら登る。何とか支点にたどり着いたら、皆から「よう頑張った。そこが核心やで。そこは10aはあるんや。」などの称賛。泣きたいほど嬉しいような、怖すぎて悲しいような気持だった。フォローのF上さんはまたしてもサルが駆け上がるかのようにスタスタと登ってきた。クタクタなのにロープ捌きが追いつかない。4ピッチ目F上さんリード。ここから直上はせず中央バンドから大長征ルートへ流れる。5ピッチ目(IV+)35mちびサンボリード。よく見るとホールドやスタンスはあるが、微妙に上がったり下がったりしながらトラバースするのが怖い。6ピッチ目(V−)35mF上さんリード。10mほど右上すると中央バンドに出るので、そこからトラバース。7ピッチ目中央バンドのトラバースをちびサンボリード。大長征ルートの写真でよく見るところだ。乾いていたら快適なトラバースだが、濡れてるから気持ち悪かった。8ピッチ目、大滝左ルート上部取り付きまでのトラバースをF上さんリード。この中央バンドのトラバースは60mロープなら一気に行けそうだが、50mではちょっと足りないので途中で切って2ピッチにした。9ピッチ目(V)30m大滝左ルート上部の核心をちびサンボリード。次のパーティーが到着したし、天気も悪くなって霧雨が降りだしたから早く登らなきゃいけない。だから止めとこうと思ったが、S訪さんが「快適ですよ。ちびサンボさんもリードして下さいよ。」と上から声をかける。「絶対に嘘だ、足が止まって動けなくなってたじゃん」と思ったが、仲間がリードするので仕方なく勇気を振り絞ってリードした。直ぐに「ああ、止めときゃよかった」と後悔した。待ってる時に雨が降ってきた。霧雨から急にざっと降りだした。これは下山だ・・・。下で待っていたO部さんパーティーは下山の準備にかかろうとしている。上に登ってる途中のO石さん・S訪さんは登ってしまうしかない。私たちはここから懸垂で降りるしかない。そんな感じでバタバタし始めたが、さっと止んで晴れ間が出てきた。
「登れるんちゃう。行こか。」とゴーサインが出て登る事になる。トップを登ってたO石さんは相当怖かったと思う。10ピッチ目(V+)45mF上さんリード。緊張続きで登っていたのでフォローで登るのもしんどくなってきた。ものすごく細かい。これが噂の猫の乳首か!と思うが、もう嫌になるくらい緊張する。疲労困憊だ。11ピッチ目ちびサンボリード。一の坊主をトラバースするが、左左へと言われたので、違うルートの終了点からまだ左に行くのかと思ってトラバースしようとしたがとても無理。素直に真っすぐ進めば良かったのだ。ここまで来ると声が全く届かない。何度叫んでも聞こえないし、風に声が消されてしまう。仕方ないのでぐいぐい引っ張って合図した。12ピッチ目F上さんリード。クラックだが私は大の苦手。濡れた岩に足が引っ掛からず何度も滑るし、手には力が入らず半泣きになった。F上さんに引っ張り気味にビレーしてもらって登った。頂上でビレーしているF上さんと、先に登ったO石さん、S訪さんの姿が見えた瞬間に緊張の糸が切れたのか、疲れなのか、喜びなのか分からない涙が出てきた。12時25分頂上着。長い長いスラブの登りを堪能した。疲れ過ぎて直ぐに食べ物を口にする気にならなかった。新緑が美しく素晴らしい景色をボーっと見ていた。三番手はO部さん・Y谷さん・K山氏が到着。O部さんは3人パーティーで全部リードをしてフラフラだ。「何でこんなにしんどいねん。全部リードでこんなに頑張ってるのに誰も褒めてくれへん。おかしい。」と嘆いている。確かにその通りだ。登り始めた時よりえらく老けた気がして、可哀相になってきてまた涙が出てきた。次はH石さん・K脇さんパーティーが登ってきた。H石さんも頂上に着いてからクタクタの放心状態になっていた。最後のN勢さん・I佐さんパーティーが登ってきて14時終了。N勢さんは笑顔で登ってきた。まだまだ元気そうだ。周囲の景色は見えなくなっていたが集合写真を撮って下山へ。3回ほど懸垂下降して後はフィックスロープを握りしめながらひたすら下る。15時前に下山した。

本日も「庵・鹿川」で宿泊。K山氏がヤマメを釣ってくると言って川へ行った。私たちはビールを飲みながら順に風呂へ入り、O部シェフの美味しい手料理を食べながら団欒した。次から次へと「庵・鹿川」のクライマー仲間が集まってきた。皆、片手に日本酒の一升瓶を持ってくる。飲んでも飲んでも酒が減らない。そうこうしているとK山氏が戻ってきた。ヤマメは一匹しか釣れなかったから手づかみで7匹取ってきたと。それはそれで凄すぎる。ヤマメは焼いて食べた。本日のメインディッシュはO部シェフこだわりのネパール料理(カレー)だ。どれもこれも美味しかった。「庵・鹿川」のオーナーM好氏の有難い話を聞きながら、福岡や熊本からやってきたクライマー達と話しながら宴は遅くまで続いた。しかし私は、日頃の寝不足と緊張緩和からか早々に眠くなって寝てしまった。夜中2時頃目が覚めた時は最後の呑み助達が寝る準備をしているところだった。かなり楽しい事があったようで、まだはしゃいでいた。やはり、早く寝ると損すると思った。

22日6時起床。昨晩の残りのカレーとみそ汁で朝食。カレーは早い者勝ちでゲットした。荷物をまとめて8時出発。出発の時には皆さん集まって見送って下さった。臼杵港11時35分発〜八幡浜港13時55分着のフェリーに乗り少し仮眠した。高速を乗り継いで20時半帰宅した。

今回、このクライミングに参加するまで不安でいっぱいだった。こんな大きい岩場でのリードは初めてだし、F上さんとパーティーを組むのも初めてだし、メンバーの中で私が一番下手っピーだから迷惑をかけるんじゃないかと不安でいっぱいだった。F上さんはクライミングの技術はもちろんの事、緊張を緩和させるのが上手だ。「景色も楽しんで登ってよ〜。新緑が綺麗で!慌てんでええからゆっくり登ってよ〜」「よう頑張ったなぁ〜。怖かったなぁ」などと、常に声を掛けてくれた。他の仲間も、ガチガチに緊張している私を励まし、アドバイスをくれてすごく有難かった。皆のおかげで登れたと思う。本当に感謝している。仲間は温かいと感じた。会の○玉に「あんたはスラブが得意やから大丈夫や」と言われてきたけど、得意なんて言えないと思った。根本的に技術不足を感じた山行でした。

この機会を作って下さった県連登攀教育部の皆さまには感謝します。リーダーのI佐さんを始め、K脇さん、Y谷さん、O石さん、F上さん本当にありがとうございました。同期のO部さん、N勢さん、S訪さん、H石さんありがとうございました。また、よろしくお願いします。

雌鉾岳のスラブはとても雄大で綺麗だ。比叡岳も登り応えがあって楽しかった。ちょっと遠いのが残念だが、機会があれば何度でもチャレンジしたい岩場だ。また行きたいよ〜

メラピークKOBE(兵庫県労山に所属する神戸の山岳会)

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